NTT ATHLETE

世界をめざせ!NTTアスリート

Our Athlete

ブラインドマラソンを、そして障がい者スポーツを。
2020から、身近なものにしていきたい

堀越 信司&青木 洋子

パラ陸上競技(ブラインドマラソン)

ブラインドマラソンで2020への内定を決めている堀越 信司選手と、3時間09分55秒という女子ブラインドマラソン歴代2位の記録を持ち、2020への出場をめざす青木 洋子選手。
ブラインドマラソンとの出会い、競技者としての矜持、そして、2020に対する想い。一流アスリートとしての、競技にかける想いを聞きました。

自分の意志で新しいことにチャレンジしたかった(堀越)
友達に誘われて、なんとなく楽しそうだなって(青木)

お二人の競技との出会いを教えてください。
堀越:親の勧めで物心がついた時からずっと水泳をやってきました。そのまま競技選手として水泳を続けることもできたのですが、自分の意志で何かに挑戦したかった。進学先の中学校では、水泳、サウンドテーブルテニス、陸上部と、3つのクラブがありました。そこで陸上部に入ったことが、走ることとの出会いでした。
画像:競技との出会いを語る堀越選手
青木:10年くらい前に、会社の同僚から、代々木公園で視覚障がい者でも伴走者と一緒に走るクラブがあると教えてもらったんです。
「一人では運動ができなくなったし、やってみようかな」と思って、そこに行き始めたのが私とブラインドマラソンとの出会いです。
画像:競技との出会いを語る青木選手
ブラインドマラソンをはじめて、どんな印象を持ちましたか?
堀越:陸上部に入った当時、モーリスグリーンとか、マラソンだと有森 裕子さんだとか。陸上種目で活躍している様子は見ていて、走るってかっこいいなぁというイメージはありました。でも当時は、上をめざすとかそういうことは考えてもいませんでした。
青木:最初の頃は週に一回。毎週土曜日に代々木公園で走っていました。はじめて出た10キロの大会では、「もうしんどい、いつまで続くのかしら」と思ったこともあります。でも、同じ視覚障がいの人や伴走してくれる人、たくさんの人とつながることができる。そこから走るのって楽しいな、続けていきたいなと思うようになりました。
競技者として本格的にチャレンジしていこうと思ったのはいつ頃からでしょうか?
青木:競技としては今年で4年目になります。趣味で始めたマラソンが、色々な大会に出るようになると、記録も伸びていくんです。そうすると伴走者から「もっといけるよ」と言われ、褒められると「私もっといけるかも」と思ってしまうほど単純なんです。そこから練習なども増やして、2016年に強化指定選手になることができました。
堀越:中学から始めて、もう19年間も走っています。人生の半分以上、陸上競技をしています。大学2年の時に北京での大会に出場した時、はじめて世界との差を実感しました。すごく悔しかった。でもその時に、「メダル争いできる自分になりたい」と思った。そして大学4年の時。大学院に行こうと決めていたのですが、願書を出す直前に、今のチームに誘っていただきました。実業団に入って戦っていく。この時に、競技者としてメシを食っていくという決心をしました。
画像:トレーニング中の堀越選手

失敗だらけの競技人生が、2020へと導いた(堀越)

堀越選手の長い競技人生の中で、挫折の経験はありましたか?
堀越:自分の場合は、むしろ失敗することの方が多い。マラソンは、一回走るのに、3か月くらい準備するわけです。それなのに失敗する。「何やってんだろ、自分」って思う。
でも、2020があるからこそ、多くの失敗や挫折をしても頑張れた。もし2020年が東京じゃなかったら、僕は辞めていました。
青木選手は、強化指定選手として記録を伸ばし続けています。2020年の目標を教えてください。
青木:ブラインドマラソン女子が正式種目となったのは、2016年のリオデジャネイロからです。そのころから「本気で目指したい!2020年は東京で走りたい!」とすごく思いました。
ブラインドマラソンの競技者人口は少ない現状があります。この2020をきっかけに、私が走って、もっとみんなに伝えたい。拡げたいという目標もあります。
画像:トレーニング中の青木選手

まずは2月の大会に向けて
調子は2020年の東京を見据えていきたい(青木)

お二人は今、2020年へ向けてどのようなことを重点においてトレーニングをしていますか?
青木:そうですね。去年くらいから、走る量や練習内容もよりキツイものに変わってきています。その分、ケガをするリスクが増えています。そこをどう改善するか、どう防いでいくのかに重点を置いて練習しています。
まずは、来年2月の別府大分毎日マラソン大会に向け、調子を合わせていきたい。
でも本当に調子を合わせていくのは2020です。練習とか日々の生活の中でも、ちょっとずつ改善とか工夫はしていきたいと思っています。
堀越:青木さんが言うように、ケガには注意したい。もともとケガとは無縁だったのですが、30歳手前からケガをしたり、ケガのリスクも多くなってきました。ついつい、若いころのイメージで自分を追い込んだり、無理をしてしまう。
1つひとつはできるかもしれないが、一回限界突破してしまうと、身体が受けるダメージが半端ない。
今は、4月のロンドンで内定をいただいてから、ケガもあり当初の予定がずれている。でも、ケガをした危機感は持っているが、慌てたりとかしていない。国際大会の経験を通して、ストレス耐性がついてきたと思います。
青木:そうそう。3年前くらいに私が堀越さんにインタビューしているんですが、その時と今では「なんか違う」。今、私にとって堀越さんは、すごく頼もしい存在なんです。強化合宿の時なども話かけてくれるし、それこそ、今年のロンドンで私がケガをしてしまった時など、終わった後に声かけてくれて、とてもやさしいんですよ、堀越くん。
同じチームとして、気にかけている?
青木:同じチームなのと、過去の大会にも出ているし。大きな舞台を戦ってきた経験者としても尊敬しています。話をすると嬉しいし、チカラになる!
画像:堀越選手とストレッチを行う青木選手
堀越:同じチームとして、選手として、共に頑張れたらなという思いがあります。2020年、東京という舞台で、NTTの一員としても、競技者としても、ここでやらずしていつやるんだという気持ちをそれぞれ持っているのではと思います。
画像:青木選手とストレッチを行う堀越選手
青木さんは、堀越さんの影響を受けながらも伴走者と共に戦略を話したりするんですか?
青木:もちろん、伴走者とのコミュニケーションは、とても重要です。前半・後半で、伴走者は変わるんですが、前半の人から後半の人への短い情報共有が必要になる。
そのあと後半になってから私の様子を見て、どこでどうしていくのかを考えて、前半も後半も、常に自分の状況なども伝え、二人で走り抜く。私が「勝ちたい!」という強い気持ちがあるから、伴走の人たちも本気になってくれる。だから信じられる。この信頼関係を作ることこそが、勝つための戦略だと思います。
大舞台が迫っている中、とくにケアしていること、こだわっていることなどありますか?
堀越:食事の見直しに取り組んでいます。食事のバランスは気を付けていたし、栄養士さんにも見てもらっていたので特段問題はなかったのですが自分的に、もう少し改善の余地があるのではないかと。今やトレーニングだけでは差がつきません。身体のチカラとなる食材の1つひとつで差が出るかもしれない。僕は、こだわれるところはとことんこだわっていきたいんです。
堀越選手の手作りメニュー 一例

雑穀ご飯
味噌汁
はるさめときゅうりの和物
ひじきと菊菜のサラダ、

豚肉の味噌にんにく焼き
(付け合わせ焼き物:ナス・エリンギ)

画像:堀越選手の手作りメニュー 一例
青木:普段の立ち振る舞いなどでしょうか。立ち方から意識しないと、身体は変わっていかない。
歩き方や姿勢を意識することを心掛けています。何でケガするのかと言ったら、ちゃんとしたフォームで走れていないからなんです。地味かもしれませんが日々のストレッチだったり、姿勢のチェックだったり。日頃から何気ないことを、意識していくことが重要だと思っています。
それぞれのアスリートとして、強みを教えてください。
堀越:多くの修羅場をくぐってきていることですかね。あとは、練習を嫌だとも思わないこと。アスリートとして楽しむことができる。多くの経験をさせてもらって、レースを冷静に走れるようになったことでしょうか。
青木:私は、人の話を素直に聞ける方だと思うんです。伴走者の話もそうだし監督の話もそうだし、周りの人の話もそう。そこから自分なりに処理して地道にやっていくこと。それがあってはじめて、しっかりと走れるんだと思います。
お互いへのエールをお願いします。
夢が叶う「確率」
堀越:頑張ったら頑張っただけ、夢が叶う「確率」は上がると思うんです。青木さんには、恐れずに、「東京に出てやるぞ」という気持ちをもって、これからを頑張ってもらいたい。立場が違うけれど、めっちゃ応援しています。
絶対にできる!
青木:堀越くんはほんとうに尊敬できる競技者です。2020年、東京ではメダルを獲ってほしい。今の堀越くんなら絶対にできる!とても努力してきたし、その結果として、いち早く内定を獲った。心の底から応援しています。
画像:笑顔でインタビューを受ける堀越選手、青木選手
最後に、皆様にメッセージをお願いします。
堀越:ブラインドマラソンを通じて、障がい者に対するマイナスなイメージを、プラスに変えるチャンスだと思っています。百聞は一見に如かず。ぜひ、本物を見てもらって、障がい者スポーツ、ブラインドマラソンに対する良いイメージを持ってもらいたいですね。
青木:ブラインドマラソンは、まず見てもらうことが一番。それでこういう人たちがいるんだということを知ってもらいたいですね。
東京で終わるのでなく、東京からはじまるものにしていきたい。とくに子どもたちにはぜひ見てもらいたい。子どもたちが大人になるころには障がい者スポーツが当たり前になる、それを実現するのが、2020年の東京だと思うんです。
画像:堀越信司選手プロフィール写真
堀越 信司 パラ陸上競技
(ブラインドマラソン)
1988生まれ。
小学校時代は水泳に取り組み、中学進学を機に陸上競技を始める。トラック長距離種目で2008年北京・2012年ロンドンパラリンピックに出場、その後マラソンに転向。
画像:青木洋子選手プロフィール写真
青木 洋子 パラ陸上競技
(ブラインドマラソン)
1976生まれ。
10年前からマラソンをはじめる。競技歴は4年。2016年から強化指定選手に。女子ブラインドマラソン歴代2位の記録を持つ。大切にしていることは「自分を磨くこと。」