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社長メッセージ

代表取締役社長 島田明の顔写真です。

変化の時代を好機ととらえて

NTTグループは、自らダイナミックに変革を行い、ビジネスを変化させながら、社会課題を解決し続けてきました。NTTが民営化された約40年前は電話事業でほとんどの収益を上げていましたが、現在、音声関連サービス収入の営業収益に占める割合は15%に過ぎません。電話、ポケベル、パソコン、モバイル、スマホといった技術・デバイスの進化と、世の中の変化をしっかり見据えながら、自らの持っているリソースを組み替え、新たなリソースを加えるといった手を迅速に打ってきました。しかしこれから先、2040年や2050年という時代は、きっと今とは全く違う世界に変わっていることでしょう。NTTはこのような世界の変化を機会と捉え、さらに自らを変革し続けていきたい、そのためには、我々のビジネスのポートフォリオを転換し続けていく必要があります。ただ、突然我々が今までと全く違う分野の事業をやろうといってもそう簡単ではありません。NTTグループの持っているテクノロジーやノウハウを多くの分野に応用し、人材を結集し、様々な分野のパートナーの皆さまと協力し、社会的課題を解決していくという不断の営みが必要です。社会のサステナビリティを支え、選ばれ続ける会社となるために、投資家をはじめとするすべてのステークホルダーの皆さまとの対話を重視しながら、皆さまのご期待に応えていきたいと考えています。

Connect(つなぐ)、Trust(信頼)、Integrity(誠実)

NTTの強みは、誠実であること、信頼を得ること、その1つ1つの取組みを積み重ね続けているところにあります。信用されるプロダクトを提供することが次の信頼を生むわけで、その循環の根底には一貫した誠実さが必要です。従業員に共通する価値基盤「Shared Values」では、私たちのDNAであるConnect(つなぐ)、Trust(信頼)、Integrity(誠実)を定義しています。これは、グローバルベースで議論を重ねて誕生したワードです。そういった価値観は、これからも維持していかなくてはなりません。NTTの生い立ちは通信会社ですので、Connect(つなぐ)には人とのつながりという重要な意味も含まれています。人とのつながりはTrust(信頼)がなければ成立しない。Trust(信頼)を成立させるには、Integrity(誠実)が必要です。この3つのワードがあってこそ、お客さまもNTTと長くお付き合いができる。このDNAは持続可能な社会の実現に貢献することにつながっていきます。例えば、2012年にスタートしたNTTデータの救急医療サービスは、患者を救急車に乗せ、すぐにタブレットに必要なデータを入力して受入先病院に送るというもので、高松市に提供したソリューションでした。10年経って、香川県全域、そして他県にも導入されています。10年前に始めたバチカン図書館の、昔からある古書のアーカイブデジタル化プロジェクトは、世界中から集めた寄付を原資にしてデジタルアーカイブを作っていくもので、今では、国内でも高野山、それこそ、弘法大師の時代の書物をデジタルアーカイブするプロジェクト等につながっています。さらには私たち人類が後世の人たちにレガシーを残していくことを目的に2021年に立ち上げた株式会社NTTアートテクノロジーは、例えば北斎の絵をデジタル化して後世の人たちにどうやって見せるか、海外の絵画も含め繊細なものをどうやって見せるかを考え展示するビジネスを創出しています。このように、NTTグループのDNAを活かしつつ、サステナビリティの取組みと事業の成長を同時に実現し、お客さまのビジネスやライフスタイルをよりよいものにするためのサービスを提供し続けたいと思います。

直近の業績と人的資本に関する取組み

2022年6月に私が社長に就任してからは、お客さまに新たな体験と新たな感動をお届けするNTTグループとなるという大きなテーマを掲げて、この1年間取り組んでまいりました。提供しているプロダクトやサービスが、本当にお客さまに満足していただけているのかをより貪欲に考える。競争が厳しい今、少しでも停滞している領域があれば、結局は全体にも影響が及んでしまいます。努力を続けて、お客さまに満足していただかなければなりません。そういう危機感を持ち、改革を進めてきた結果、直近の2022年度NTTグループ連結業績は、営業収益、営業利益、当期利益のいずれもが増収増益となり、過去最高を更新しました。これはグループの体制見直しが徐々に効果を上げ始めていることもありますし、各社の最前線においてお客さまのデジタル化等のニーズをしっかり取り込んできたことや、たゆまぬコスト効率化の営みを続けてきたことの成果でもあります。
 緊迫化する世界情勢や、電気代高騰、金利上昇、物価高、半導体不足等、様々なリスクは引き続き多方面に及んでいますが、2023年度の業績予想についても営業利益、当期利益で過去最高を更新する計画としています。NTTグループの34万人の人材の総力を結集していくことで、この先行きが不透明な環境を乗り切り、計画を達成できると考えています。
 そのためには、多様な人材に存分に能力を発揮してもらうための環境整備も重要です。日本のNTTグループでは2021年10月に全管理者へジョブ型人事制度を導入したほか、2023年4月には一般社員を対象に専門性を軸とした人事制度への見直しを実施しました。社員の自律的なキャリア形成を支援し、成長できる仕組みを通して、社員の活躍度を高め、一人ひとりが成長実感と働きがい・ワクワク感を得られる会社への変革をめざしていきます。
 また、私が社長就任当初から持ち続けている思いは「常に現場に意識を向け、社員一人ひとりに寄り添いたい」というものです。これを実践するため、国内外で社員との対話会を開催しています。地域面では国内はもちろん、北米、南米、アジア、ヨーロッパで開催してきたほか、日本国内でもソリューション、街づくり、スマート農業、XR、電子コミック等、幅広い現場の最前線で日々努力を積み重ねている社員に寄り添い、思いを汲み取り、経営に反映させることで、NTTグループの更なる企業価値向上が果たせるものと考えています。

新たな価値の創造とグローバルサステナブル社会を支えるNTTへ

2023年5月には、新中期経営戦略「New value creation & Sustainability 2027powered by IOWN」を発表しました。ここでの基本的な考え方として「NTTは挑戦し続けます。新たな価値創造と地球のサステナビリティのために~Innovating a Sustainable Future for People and Planet~」を掲げています。
 この考え方のもと、具体的に取り組んでいく項目としては大きく3つの柱を掲げています。1つ目の柱は「新たな価値創造とグローバルサステナブル社会を支えるNTTへ」です。サステナビリティとビジネスは相反するものではありません。どちらかを選ぶのではなく、両方を実現していくのが我々のめざす持続可能な社会です。社会の様々な課題を解決して、地球が、人類がサステナブルに生活していける、リソースを使い尽くすのではなく、循環していくような世の中を作っていきたい、そういうメッセージを中期戦略の中に込めています。2つ目と3つ目の柱は、1つ目の柱を支えるための仕組みであり、2つ目の柱が「お客さま体験(CX)の高度化」、3つ目の柱が「従業員体験(EX)の高度化」となります。新しいものはすべて人から生まれます。この実現のためには、社員が生き生きと働き甲斐を持って、チャレンジしていく必要があります。社員一人ひとりのワクワク感の創造、すなわちEXがNTTのダイナミックループの小さな環となり、大きな環であるお客さまの満足度向上につながるCXを創造していきます。従業員が感動する気持ちや喜びを持つことで、はじめてお客さまを感動させることができます。そしてお客さまからの『ありがとう』が、われわれのモチベーションを高めてくれます。このCXとEXの好循環が世の中に対して価値あるものを生み出し、サステナブル社会を作っていく原動力になっていくものと考えています。
 そのために成長分野への投資を拡大し、今後5年間で成長分野へ従来の50%増となる8兆円の投資を行います。既存分野も合わせるとトータルで12兆円の投資となります。さらに未来のためにキャッシュ創出力を拡大します。企業が本業でどれだけキャッシュフローを創出したのかを示す指標であるEBITDA(利払い前、税引前、償却前利益)はこれまで横ばいでしたが、成長分野への投資拡大を通じて、2027年度に20%増のEBITDA4兆円をめざしていきたいと考えています。成長投資によって新しいキャッシュを創造し、さらに次の成長投資につなげていきます。グローバル社会における潮流と変化を常に的確に捉え、自分たちの強みを活かすことができる地域・分野に対し、お客さまのニーズを捉えた「マーケットイン志向」を徹底することで、自らの事業ポートフォリオを変革し続けていくNTTグループをめざします。

株主還元/投資家層拡大に向けた取組み

事業を通じてサステナブル社会の創造に貢献していき、その結果として得られた果実を株主の皆さまに受け取っていただくことも重要な経営課題の1つで、新中期経営戦略においても継続的な増配や自己株式取得の機動的な実施といった考え方は変わっていません。2023年度の配当は13期連続の増配を予定しており、20年前と比較すると1株当たり配当額は10倍となる予定です。また、2023年度の自己株式取得については、8月に2,000億円を上限とした取得を決議したところです。また、7月には1:25の株式分割によって投資単位を大幅に引き下げました。2024年に始まる新NISA制度を見据えて、よりNTT株式に投資しやすい環境を整え、NTTグループの持続的な成長に共感していただける投資家層を幅広い世代において拡大したいと考えています。多くのステークホルダーの皆さまのご期待に応えるためにも、サステナビリティを経営の中核に据え、よりよい社会の実現に貢献し続けていくことが我々の使命です。今後も、新たな価値創造により、グローバルサステナブル社会を支えるNTTとなれるよう、挑戦を続けていきます。皆さまには一層のご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願いいたします。

代表取締役社長

社長執行役員

島田明