2018年1月31日
日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:鵜浦 博夫、以下 NTT)は、NTTグループのAI関連技術corevo®の研究開発の一環として、雑談を通してユーザに対話への興味を持たせつつ、その興味に応じて知識を伝達する、新感覚の対話AIを開発しました。NTTがこれまで培ってきた「複数ロボット連携による雑談制御技術」を応用し、2台のロボットの連携を通して対話の話題を適切にコントロールすることで、雑談と質問応答を違和感なく行き来できる対話を世界で初めて実現しています。
なお、本技術の実証実験を、2月1日~28日の日程で京都市動物園にて実施する予定です。
従来の対話AIを搭載したガイドロボットでは、ユーザからの質問に回答する質問応答機能など、ユーザからの要求に基づいて知識を伝えるための技術が開発の中心となっていました。一方、ガイドする物事自体や対話そのものに興味を持ってもらうためには、雑談を通してユーザと打ち解ける機能も重要です。従来の対話AIでは、質問応答などの知識を伝える対話を行う機能と、雑談を行う機能とが別々に作られてきたため、質問応答と雑談を自由に行き来し、興味を持たせつつ知識を伝えるような対話は実現できていませんでした。
NTTはこれまで培ってきた複数ロボット連携による雑談制御技術を応用し、雑談と質問応答を連続的に行き来できるように対話の話題を自然に制御することで、ユーザに興味を持ってもらいながら知識を伝える、新感覚の対話AIを世界で初めて実現しました。雑談と質問応答を違和感なく行き来できることで、雑談でユーザに興味を持たせながら、知識を伝達する対話が可能となりました(図1、図2)。
図1:雑談と質問応答を自由に行き来する対話
図2:複数ロボットとの対話イメージ
NTTではこれまで、単純な命令や質問応答に答えるタスク対話とは異なり、対話を通してユーザの満足度を高めたり興味や思考を引き出したりすることを目的とする、雑談対話AIの実現に取り組んでおります。その一環として、対話AIの性能そのものを高める営み以外にも、人の感じ方を利用することで対話の満足度を向上させる、複数ロボット連携による雑談制御技術の開発を進めています。現在の雑談対話AIでは、幅広い話題にわたった雑談を実現するため浅く広い対話知識をもとにしています。このため個別の話題に対応した知識が十分ではないため、しばしば不自然な発話をしてしまい、対話が破綻し継続が困難になるという問題があります。しかし複数のロボットが連携して対話を進めることで、人に与える不自然さを軽減しつつ、破綻しにくいよう話題を制御できることがわかっています。
今回、複数ロボット連携による雑談に、ユーザからの質問に答える質問応答を組み合わせることで、雑談と質問応答との間を違和感なく行き来できる対話を実現しました。複数ロボット連携による話題制御を活用して話題を限定することで、限定された話題に対応した詳細な対話知識の構築が可能となりました。この詳細な対話知識をもとに雑談対話AIと質問応答AIを動作させることで、両者の間を双方向にかつ連続的に行き来し、雑談でユーザに興味を持たせながら、知識を伝達する対話を世界で初めて実現しています。
課題 | : | ユーザが自由に発話する雑談対話では、ユーザ発話を制約できず話題が発散するため、質問応答の知識範囲を逸脱してしまう。また知識不足により、ずれた応答を発話する場合がある。 | |
本技術 | : | 複数のロボット間での対話や話者切替により、ユーザに自由な発話を許容しつつ、話題を質問応答可能な範囲に自然に限定。ロボット応答が少しずれた場合でも自然に話題を遷移し印象悪化を回避(図3)。 (NTTの雑談対話技術の1つである、複数ロボット連携による雑談対話の破綻回避技術を応用) |
図3:複数ロボット連携による話題の自然な制御
課題 | : | 従来の雑談対話の知識は浅く広く作られているため、システム応答がユーザ発話とややずれた内容になる。また、詳細に作られた質問応答と行き来する際に、話題の細かさが不連続に切り替わる。 | |
本技術 | : | (1)の話題制御を活かして雑談の話題の範囲を限定し、かつ利用頻度の高い知識を集中的に構築(図4)することで、質問応答と同程度の知識の細かさを持つ雑談知識を実現(図5)。 (NTTの雑談対話技術1つである、ユーザの経験や嗜好に関する知識(PersonDB)の構築技術および議論対話技術を応用) |
図4:詳細な対話知識による雑談対話の実現方法
図5:詳細な対話知識による雑談と質問応答の自然な行き来
ユーザの発話をより深く精緻に理解し対話する、自然なパートナーとしての対話ロボットの実現を目指します。合わせて、導入・運用コストの低減も考慮し、様々な場所で普及しやすい対話ロボットの開発を進めてまいります。
また、本技術の実証実験を京都市動物園にて実施する予定です。動物園での対話を対象とし、対話AIに求められる知識の幅を動物に関する事柄に自然に限定することで、より違和感のない対話を実現しています。本実証実験では、動物園来場者との対話を通して本対話AIの有用性を検証するとともに、将来の対話AIの研究開発に寄与するデータの収集を行います。実験期間は2018年2月1日から2018年2月28日までを予定しております。
協力 | : | 京都市動物園、西日本電信電話株式会社 |
※ | 「corevo」は日本電信電話株式会社の商標です。 |
本件に関するお問い合わせ先
日本電信電話株式会社
先端技術総合研究所 広報担当
a-info@lab.ntt.co.jp
Tel:046-240-5157
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