2018年8月21日
日本電信電話株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:澤田 純、以下 NTT)が運営する「NTT技術史料館」所蔵の「磁石式手動交換機」が、8月21日に国立科学博物館の「重要科学技術史資料(愛称:未来技術遺産)*1」に登録されました。『日本における最古の交換機形式を残した磁石式電話交換機』として日本の科学技術の発展を示す貴重な技術史資料であること、現在においても製造時とほぼ同様の実働状態を保ち可動であることが評価されています。
1890年(明治23年)、日本で初めて電話が開通した際に用いられたのが「磁石式手動交換機」であり、電話交換手が行う手動操作により電話同士を接続する方法でした。電話創業初期の電話交換業務において大きな役割を果たした磁石式手動交換機は、電話をかける「発呼」・電話と電話をつなぐ「交換」・話し終えて電話を切る「終話」という一連の流れを実現した初期の交換機として貴重です。
その後、日本の経済発展とともに電話の需要が増え、1920年代には自動交換機の導入が始まり、1950年代には戦後復興に伴いさらに高まる電話の需要や要望に応えるため、自動交換機の研究開発・導入が進みました。しかし、自動交換機が普及した後も、手動交換機は小規模な交換局で長く使用され、農村や離島などの通信を長く支えました。
NTT技術史料館では、OB運営サポーター*2が中心となり、実際に交換業務に使われていた「磁石式手動交換機」を整備し、発呼から終話まで手動交換の流れを体験できる動態展示を行っています。初期の電話交換機の構造・方式や原理を伝承するとともに、電話交換手の動作や頭の働きを実体験できる貴重な機会を提供しています。
登録証および記念盾授与式は2018年8月28日に国立科学博物館にて開催されます。
*1重要科学技術史資料(愛称:未来技術遺産)
平成20年より、独立行政法人国立科学博物館が、「科学技術の発達史上重要な成果を示し、次世代に継承していく上で重要な意義を持つ科学技術史資料」および「国民生活、経済、社会、文化の在り方に顕著な影響を与えた科学技術史資料」の保存と活用を図るために重要科学技術史資料(愛称:未来技術遺産)とする登録制度。
1854年、ペリー来航とともに日本に電信技術がもたらされてから、1870年には国内で電報の取り扱いが始まりました。また、1876年にアレキサンダー・グラハム・ベルにより電話機が発明されたのち、電話機および交換機の技術が日本にも伝わり、工部省・逓信省での導入検討・商用試験などを経て、1890年には東京・横浜で手動交換機を用いた電話交換業務が開始されました。
日本での電話創業当初は、「磁石式手動交換機」(単式交換機*3)が採用されました。電話の需要増に伴い、最もシンプルな単式交換機から、交換手の操作をさらに簡素化し、交換機の大容量化や接続時間の短縮を可能にする複式交換機*4へと進化し、また、磁石式から共電式*5と改良されていきました。1926年には、交換手の操作を自動化した自動交換機の導入が始まり、需要の増加に応えていきました。その後も、電話の需要・電話への要望が高まるなか、1952年に発足した日本電信電話公社(現NTT)において、さらなる回線数の増加や全国自動即時化などの課題に対応すべく、自動交換機の研究開発・導入が進みました。
しかしながら、磁石式手動交換機は自動交換機が普及した後も小規模な交換局で長く利用され、電話の全国完全自動化に至る1979年まで、農村や離島などの通信を長く支えました。
磁石式手動交換機(NTT技術史料館所蔵)
手動交換機とは、電話をかける人(発呼者)が電話機から交換機へ発呼を知らせ、交換手が発呼者と電話を受ける人(被呼者)の電話機を交換機の接続紐を操作することにより交換接続するというしくみの交換機を指します。また、発呼者が磁石式電話機のハンドルを回すことにより発電し、交換機へ発呼を知らせるしくみを持つものが「磁石式手動交換機」と呼ばれています。
日本での電話創業時には「磁石式手動交換機」が用いられていましたが、上記のような発呼・接続・終話という一連の流れを初めて実現した交換方式・交換機形式を伝えるものとして貴重です。
NTT技術史料館では、電気通信に関する研究・技術開発の歴史を紹介・伝承する活動の一環として、「磁石式手動交換機」を展示しています。交換手の動作・頭の働きを実体験できる動態展示を作るという目的のもと、OB運営サポーターが中心となり、実際に使用されていた交換機を整備して通話体験・交換手体験が可能な状態に復元しました。また、電話機には磁石式手動交換機と同時期に使われていた「デルビル磁石式電話機」が使用できるため、電話をかける・交換手として電話をつなぐ・電話を受けるという一連の動作が体験できます。
加えて、同館では、手動交換機の次世代交換機としての自動交換機(A形自動交換機)についても、交換機のしくみを見ることができる動態デモを展示しており、磁石式手動交換機の動きと比較することにより、電話交換機能の進化の様子についても理解を深めることができます。
このような史料展示および体験展示を通して、技術伝承のみならず、広い世代に科学への関心を喚起させるという役割を担っています。
NTT技術史料館は、日本の通信事業のルーツから日本電信電話公社発足以降の半世紀を中心に、NTTグループの電気通信に関する研究・技術開発の歴史的資産を集大成した施設です。1,500点以上の技術史料を「歴史をたどる」と「技術をさぐる」の2部構成で紹介しており、所蔵・展示史料には、今回登録された「磁石式手動交換機」のほか、これまでに以下の技術史料が「未来技術遺産」に登録されています。
NTT技術史料館では、自由にご来館いただける一般公開を行っております。詳細はNTT技術史料館ホームページ(
http://www.hct.ecl.ntt.co.jp/)をご確認ください。
2010年度登録(第00060号) | (1)内航船舶無線電話装置 NS-1号 JAA-333 (2)ワイヤレステレホン(大阪万博の携帯電話) (3)自動車電話 TZ803A |
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2011年度登録(第00084号) | (1)マイクロ波4GHz帯用進行波管 4W75A |
2011年度登録(第00087号) | (1)ポケットベル B型 RC11 2点 |
2012年度登録(第00105号) | (1)D10形自動交換機 |
2014年度登録(第00142号) | (1)ポケットベル送信装置 (TC-11形送信装置、TC-15形送信装置、CE-15形A符号化装置) |
2016年度登録(第00224号) | (1)D60形ディジタル交換機 |
2017年度登録(第00232号) | (1)C400形クロスバ交換機 |
*2OB運営サポーター
2009年より開始したボランティアの運営サポーター制度。NTT OBの豊富な知識・ノウハウを生かし展示解説ガイドや史料整理など幅広く活動。
*3単式交換機
電話機を1つの交換機に接続し、それぞれの交換機を中継線で相互接続する交換機。交換機をまたがって接続が必要な場合には、交換手の操作が2段階必要。
*4複式交換機
電話機を1つの交換機に接続し、さらに複式ジャックを用いて電話局内の複数の交換機に並列接続するという方式で使用する交換機。局内の電話接続であれば交換手は1回の操作で接続可能。
*5共電式
磁石式とは異なり、発呼時に電話機側は発電せず、電話局側の電源を各電話機が共同に使用するという方式。
本件に関するお問い合わせ先
NTT情報ネットワーク総合研究所
企画部 広報担当
TEL:0422-59-3663
Email:inlg-pr-pb-ml@hco.ntt.co.jp
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