2022年5月17日
日本電信電話株式会社
日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:澤田 純、以下「NTT」)は、光・無線伝搬を統合した無線空間再現技術の実証実験を世界で初めて開始しました。※1今後も無線通信デバイスや利用シナリオの多様化がより一層進むことが予想されており、新しい無線通信システムの実現にはより多くの検証時間が必要となります。本技術の適用によって、利用シナリオに対応した無線空間を検証環境に高精度に再現し、無線技術の効率的な検証に貢献します。
これまでのスマートフォンに加えて、IoT※2デバイスを代表とする多種多様な無線通信デバイスの普及が進んでいます。さらに、無線通信システムに要求される品質(大容量、低遅延、高信頼など)や利用シナリオもこれまで以上に多様化することが予想されています。今後の無線通信システムの実現では、多様な要件に対応していくため、無線通信デバイスや利用シナリオに応じた膨大な検証データの取得が鍵となります。このため、検証時間の削減が重要なファクターとなります。既存の検証方法の一つに、特定の無線空間における無線通信デバイスの性能検証を目的としたOTA試験※3があります。しかしながら、OTA試験ではデバイス自体の物理的な動きに対する無線空間の変化の再現や、多様な利用シナリオの再現に課題がありました。
上記課題に対して、NTT研究所では、屋外・屋内といった現在の無線通信の利用環境や、空・宇宙といった未踏領域の環境における到来方向・利得・フェージングの無線特性を把握し、その無線空間を時間変動も含めて検証環境に再現する無線空間再現技術を新たに提案しています。無線空間再現技術は以下の3つの要素技術で構成されます(図1)。
2022年5月現在、横須賀R&Dセンタ内に本技術を適用した次世代無線検証設備の基盤構築が完了しており、本技術の有効性の検証を開始しています(図2)。
今後は、屋内環境の無線空間再現を最初の利用シナリオとして位置づけ、本技術の実証実験を進めます。さらに、無線特性可変装置や制御の高度化により、複数無線システムの同時利用等、複雑な検証が求められる利用シナリオの再現に取り組んでいきます。
本技術の内容は、2022年5月18日(水)~19日(木)に開催予定の「つくばフォーラム2022」※8にて展示予定です。
図1 無線空間再現技術の概要
図2 次世代無線検証設備
※1NTT調べ。(2022年5月17日現在)
※2IoT(Internet of Things)とは、モノがインターネット経由で通信することです。
※3OTA(Over The Air)試験とは、無線通信デバイスのアンテナを経由して接続し、性能評価を行う検証方法です。
※4https://www.ieice.org/cs/ap/event/compe/compe_prop3/#result
※5メタサーフェス反射板(RIS: Reconfigurable Intelligent Surface)は、波長に対して小さい構造体を周期配置して任意の誘電率・透磁率を実現する人工媒質(メタマテリアル)の一種です。
※6スマートリピータは、無線通信における中継器であり、受信した無線信号に任意の信号処理を行い、再送信する装置です。
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