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2023年12月14日

受賞・表彰

計算社会科学分野における難関国際会議 ICWSM 2023 にNTT人間情報研究所から論文が採択され、Best Paper Awardを受賞

2023年6月5日~6月8日にキプロス リマソールにて開催された国際会議「ICWSM 2023(The 17th International AAAI Conference on Web and Social Media)」にて、NTT研究所から投稿した以下の論文が採択され、Best Paper Award(Outstanding User Modeling Paper)を受賞しました。

Personal History Affects Reference Points: A Case Study of Codeforces
倉島 健 特別研究員・グループリーダ(人間研)、岩田 具治 上席特別研究員(CS研)、冨永 登夢 研究員(人間研)、山本 修平 研究主任(人間研)、戸田 浩之(人間研*)、竹村 和久(早稲田大学)

*現在、横浜市立大学教授

ICWSMは計算社会科学分野の国際会議であり、論文採択率は約19%の難関国際会議として知られており、Best Paper Awardは、84件の採択論文のうち上位5件(上位6%)の優れた論文に授与されました。

行動経済学のプロスペクト理論で指摘されている「参照点」を中心とした人間の意思決定バイアスについて、その発生原理までは不明でした。そういった意思決定研究分野のビッグクエスチョンに対し、「苦労」や「馴れ」といった個人の「過去の経験」に起因してバイアスが発生する可能性をこの論文は指摘しています。例えば、多くの野球選手にとって打率3割は参照点として捉えられています。打率としてはわずかの差であっても、打率3割に到達しているか否かは大きな違いである、というわけです。シーズン終盤で打率3割に到達している野球選手は、「3割バッター」という称号を失うことを恐れて打席に入ることを回避するケースがありますが、これは参照点を中心とした人間の価値観の歪みによって説明でき、行動経済学において「損失回避傾向」と呼ばれる現象の一つです。この論文では、打率3割に至る過程によって損失回避傾向の強弱が決まる可能性を指摘していることになります。打率2割から始まり、苦労して3割に到達した野球選手ほど、失うことを恐れ、損失回避傾向が高まる、というわけです。実際にこの論文では、野球ではなく、競技プログラミングサイトのユーザ行動データを分析していますが、実行動データによって裏付けられた本発見が高く評価され、受賞につながりました。

NTT人間情報研究所は、人を中心とし、人の能力を最大限に活かすICTの研究開発を通して、新たな価値を創造し豊かな社会の実現を目指してまいります。

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