2024年11月12日
NTTコミュニケーション科学基礎研究所と、岩手医科大学は、2024年1月より締結した「NICU環境の新生児と親のつながりを支援するデジタル身体性技術に関する研究」の取組の一環として、11月12日(火)から、岩手医科大学附属病院総合周産期母子医療センター新生児集中治療室(Neonatal Intensive Care Unit; NICU)に入院する新生児の家族が、遠隔でも我が子の鼓動に触れているような体験ができる新しいオンライン面会システム(身体性オンライン面会)を使った実験を開始します。
早産や低出生体重などを理由に、新生児が長期的にNICUに入院すると、親子の身体的コミュニケーションが不足しがちになり、親のメンタルヘルスや親子の愛着形成に影響が生じることがあります。現在、多くのNICUでは、カンガルーケア※1をはじめとする直接触れあう身体的コミュニケーションの機会を積極的に行い、入院中から親子関係の構築を促進する取り組みに力を入れています。このような身体的コミュニケーションは、産後うつの減少や愛着形成の促進に繋がるため、世界保健機関(World Health Organization: WHO)からも強く推奨されています[1]。しかし、新型コロナウイルスなどのハイリスクな新興感染症への対策や、家族の時間的制約や地理的条件などのために面会機会が限られることがあり、対面での身体的コミュニケーションが十分に交わせない事例がありました。
NTTコミュニケーション科学基礎研究所で研究開発された、遠くに離れていても相手の感触(振動等)が伝えられる「身体性コミュニケーション技術」[2] をNICUで利用できる形に応用し、岩手医科大学付属病院NICUで活用します。具体的には、遠隔でも、カンガルーケアのように、我が子を見ながら、我が子の身体に触れているかのような体験ができる身体性オンライン面会システム(図1)を開発し、そのシステムの利用が家族のメンタルヘルスや親子の愛着形成に与える効果を検証していく予定です。
図1 身体性オンライン面会システムで使用する身体情報を伝送するデバイスのプロトタイプ
ウェブカメラで撮影した新生児の様子を中央のディスプレイに映し、新生児の心拍のリズムに合わせて、心臓の鼓動を模した振動を呈示します。このデバイスを手や胸に抱くと、遠隔でも、我が子に触れて心臓の鼓動を感じている時を思い起こさせるような体験ができます[3]。
※1カンガルーケア: リラックスした体勢で、親子が直接肌を触れ合わせるように、親の胸に新生児を抱くケアの方法です。低出生体重児などを対象に、カンガルーケアの機会を増やすことで、親子の絆が深まり、親のストレスが軽減されるほか、新生児の呼吸や心拍数が安定するなどの効果が期待されています[1]。
[1]World Health Organization Department of Reproductive Health and Research. Kangaroo mother care: a practical guide. World Health Organization, 2003.
[2]駒﨑掲; 渡邊淳司. 遠隔地をつなぐ振動伝送体験デザイン原理の構築に向けて. 電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン, 2023, 17.1: 32-41.
[3]村田藍子; 鳥谷由貴子; 駒﨑掲; 松本 敦; 外舘玄一朗; 渡邊淳司; 赤坂真奈美. NICU環境の新生児と親のつながりを支援する身体性オンライン面会システムの検討. 第29回日本バーチャルリアリティ学会大会論文集, 2024, 2A1-12.
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