2015年1月28日
日本電信電話株式会社(以下NTT、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:鵜浦博夫)は、観客の歓声に埋もれているスポーツの競技音(例:サッカーのシュート音)をクリアに抽出する音声処理ソフトウェア技術「ターゲットマイク技術」を開発いたしました。
今回、NTTは、日本放送協会(以下NHK)と共同で、2014年7月以降、実際のスポーツ大会などの実フィールドにおいて、ターゲットマイク技術を用いた競技音抽出実験を実施しました。具体的には、「サッカーのシュート音」、「相撲の力士がぶつかり合う音、行司の声」、「ゴルフのショット音、落下音」、「野球の打撃音」を抽出し、競技音を10~30dB(10~1000倍)強調し、より臨場感のあるダイナミックな音の出力が可能になることを実証いたしました。
現在、スポーツ中継では、「映像」はカメラのズームによって狙った場所を高精細に撮影することが可能です。一方で、「音声」においては、スポーツの競技音はガンマイク等で集音していますが、観客の歓声に埋もれて、視聴者が聞きたい臨場感あふれる競技音を届けることが困難でした。しかし、今回NTTが開発したターゲットマイク技術により、これまで以上にスポーツのダイナミックな競技音を視聴者に届けることが可能になります。
NTTでは、NTTのグループ会社を通じて、1年以内の実用化を目指します。さらに、NTTでは、2020年までには、様々なパートナーとのコラボレーションを通じ、スポーツ観戦において、より臨場感ある競技音の体験を世界中の人々に提供できるよう取り組んでまいります。
NTTでは、今後も、目的音の抽出性能やの音質のさらなる向上を目指した技術改良を図ってまいります。また、他のスポーツも含めた実証実験をNHKと共同で実施し、技術の性能検証を進めてまいります。
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従来のスポーツ中継では、ガンマイクが使われていましたが、周囲の雑音(歓声や応援)を十分に抑圧できず、狙った競技音が埋もれてしまうという課題がありました。
今回の技術は、一般的に用いられる複数のマイクロホンで観測した音声信号に、ソフトウェア技術である「ターゲットマイク技術」を適用することで、競技音をクリアに集音できるようになりました。ターゲットマイク技術は、音源の到来方向(空間情報)に加えて、各種競技音の特性(例:シュート音の特徴は"立ち上がりの鋭さ")を利用し、競技音をクリア抽出するソフトウェア技術です。
集音範囲は、例えば、マイクをゴール裏に設置した場合、ペナルティエリア内をカバーします。
これまで、遠くの音をピンポイントで抽出する技術として、2014年4月にNTTが報道発表をした「ズームアップマイク技術」※1があります。ズームアップマイク技術では、複数のパラボラ反射板と約100個のマイクロホンで構成された受音系を用いることで、非常に鋭い指向性(約3度)を達成し、狙った音をピンポイントで集音できることを確認いたしました。しかし、装置サイズが大きく、スタジアムなどの施設へ常設するのが前提の技術でした。
また、2014年9月にNTTが報道発表した高騒音下対応マイク技術※2は、複数のマイクロホンを用いて観測した信号を用いて、周囲雑音を抑圧する信号処理技術です。数本のマイクロホンであれば、装置サイズが従来の放送集音とほぼ変わらないため、実フィールドでの利用を見込めます。本技術では主に空間情報を用いて目的音や雑音の周波数スペクトルを推定しているため、角度幅60度にある目的音とその他雑音を区別して集音することは可能です。しかし例えば、サッカースタジアムにおける集音では、全周囲から歓声や応援が到来するので、この時点の処理技術を単に適用しただけでは、シュート音等をクリアに抽出することができませんでした。
そこで、今回開発したターゲットマイク技術では、シュート音の特性(鋭い立ち上がりを持っている)をうまく利用し、空間情報だけでは取り除けなかった雑音(歓声や応援)と目的音(シュート音)を区別するための処理を追加いたしました。音の空間情報と音源の時間的性質の双方を活用することで、2本程度のマイクロホンでも、狙った音をクリアに抽出することを可能としました。
※1014年4月16日リリース
世界初、約20m先にいる任意の人の声をクリアに収音できる技術を開発
http://www.ntt.co.jp/news2014/1404/140416a.html
※22014年9月24日リリース
100dBの騒音下でも高品質な通話や音声認識を可能とする小型インテリジェントマイクを開発
http://www.ntt.co.jp/news2014/1409/140924a.html
本件に関するお問い合わせ先
日本電信電話株式会社
サービスイノベーション総合研究所 企画部広報担当
TEL: 046-859-2032
E-mail: randd@lab.ntt.co.jp
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