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2015年2月19日

NetroSphere構想:キャリアネットワークのあり方を変革する新R&Dコンセプトを策定
~部品化したネットワーク機能を自由に組み合わせ、多様なサービス創出を支えるためのオープンな技術開発を推進~

日本電信電話株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:鵜浦博夫、以下 NTT)は、将来の通信ネットワークの技術開発に関するコンセプトとして「NetroSphere(ネトロスフィア)構想」を策定しました。NetroSphere構想では、ネットワークを利用するお客様やサービス事業者に、いままで以上に多様なサービスを、迅速かつ高信頼、低コストに提供していくことを目指します。そのために、高機能な専用機器を用いるのではなく、ネットワークを構成する機能をできる限り小さい粒度の部品に分離・素材化し、それを自由に組み合わせることによって必要な機能や容量を柔軟に、経済的に構成することを実現します。

 NTTでは、NetroSphere構想における部品への「分離」とそれらの「組み合わせ」制御を可能とするため、「マルチサービスファブリック(MSF)」、「新サーバアーキテクチャ(MAGONIA)」と呼ぶ技術の研究開発を推進します。これらの技術開発においては、他のキャリア、ベンダ等との協調、国際標準化への積極的な貢献など、これまで以上にオープンに取り組んでまいります。

"NetroSphere"について

Netro(インターネットの過去を知り、未来へ生かす意)とAtmosphere(大気)を組み合わせた造語です。私たちを取り巻く大気が、流動的な分子の集合でありながら地上の生命を守り、育むように、将来のネットワークも、ありふれた部品を自由自在に組み合わせながら、あまねくすべてのお客様のニーズに寄り添い、取り巻く環境の変化やリスクから守ってくる普遍的な存在でありたいという願いを込めて命名しました。

背景

スマートフォンやタブレット端末の普及、あらゆる「モノ」が通信を行うIoT(Internet of Things)の発展、4K/8K超高精細映像配信への期待など、ICTの用途や利用形態は多様化を続けています。2014年5月にはNTTが 光コラボレーションモデル*1を発表したことで、さまざまなビジネスプレイヤーとの共創で新しい通信サービスがさらに創造されていくものと思われます。
 一方で、高信頼・高スケール性が求められるキャリアネットワークには、データセンタのような汎用製品の活用やSDN*2の導入がなかなか進まず、運用の柔軟性や抜本的なコスト削減が進まないという課題があります。
 NTTの研究所では、将来のネットワークインフラの構築に向けた検討を進めてきましたが、上記のような多様性への対応力や共創を促す柔軟性などさらなる進化を遂げつつ、同時に抜本的なコスト削減を進めるためには、ネットワークや装置のあり方、さらにはそれを取り巻く通信産業全体のあり方を変革するべきという結論に達し、NetroSphere構想の策定に至りました。

NetroSphere構想が目指す転換(図1当該ページを別ウィンドウで開きます

従来、ネットワークインフラは機能ごとに開発された専用的な装置によって構成されてきました。それらの装置は、単体として高信頼・大容量を達成するために高度化、大規模化する傾向にありました。このような「サイロ型」と呼ばれる方法では、ビジネス要件に即応した機能や容量の追加・変更が困難であったり、ある装置で使用率の低い部分があっても別の装置では利用できないため効率が悪いといった問題がありました。また、高度で大規模な装置が必要になることから、価格の高止まりにつながるほか、一部の部品のEOL*3が装置全体のEOLを招いてしまうといったコスト増の要因にもなっていました。

図1 NetroSphereの実現に向けて

NetroSphere構想では、ネットワークを構成する機能をできる限り小さい部品として扱えるようにすることを目指します。そして、それぞれを最適なロケーションに分散した部品を自由自在に組み合わせて必要な機能を提供する仮想的な装置を構成し、それらによってサービス事業者が必要とするネットワークを構成します。
 小さい単位の部品を共有の資源プールとして持ち、必要な時に必要なだけ組み合わせて使用することで、お客様やサービス事業者の要請に迅速に応え、必要な機能・容量を柔軟に提供することが可能となります。また、一つひとつの部品の機能はシンプルなため、さまざまなサプライヤの参入が可能となり、コモディティ化、低価格化が進むことが期待できるほか、冗長化や大容量化を効率的に達成できるため、装置コストを大幅に削減することが可能となります。

NetroSphere構想の実現に向けた取り組み

近年、NFV*4、SDNといった仮想化技術の研究開発や機能間インタフェースの標準化が進展しており、データセンタ用途を中心に、ネットワーク装置の機能分離が進むことが期待されています。しかしながら、キャリアネットワークにおいては<1>機能配備や接続構成が、従来の専用装置の機能を前提として設計されていること、<2>高信頼性・高スケール性といった特殊な要件があることから、機能の分離が進んだとしても、従来のサイロ型の構造は変わらず、自由に組み合わせられるような部品化が進むことが期待できないと考えられます。

これに対し、NTTでは、これらの障壁を取り除くための2つの研究開発に取り組みます。

(1) マルチサービスファブリック(MSF)(図2当該ページを別ウィンドウで開きます

MSFは、高機能なエッジルータ、コアルータなどの専用装置ではなく、機能がシンプルな汎用製品を用いることを前提としたネットワークの構成方式(アーキテクチャ)です。具体的には、部品化されたサーバ・スイッチ群を仮想資源として管理し、動的に制御することで、安価な装置を使いながらも従来以上の高信頼・高スケール性を確保することを目指します。このようなネットワーク構成のモデル化を行うことで、スイッチ等の機能部品ごとの要件を明確化することができます。これを共通仕様としてオープン化することで、市場を形成し、多くのベンダの参入、製品の部品化・コモディティ化が進むことが期待できます。また、部品化された機能・容量を動的に構成することで、サービス事業者の要請に迅速に応えることが容易になります。

図2 マルチサービスファブリックとは

NTTの研究所では、現時点で活用可能な技術や製品を用いた動作確認を通じて、MSFが目指す世界の実現性について見通しを得ることができました。
 なお、本実証実験は、2015年2月19日~20日に開催するNTT R&Dフォーラム2015にて公開します。
 (「NTT R&Dフォーラム2015」サイト http://labevent.ecl.ntt.co.jp/forum2015/info/当該ページを別ウィンドウで開きます

(2) 新サーバアーキテクチャ(MAGONIA)(図3当該ページを別ウィンドウで開きます

MAGONIA(マゴニア)は、高信頼性とスケール性を、さまざまなアプリケーションに共通のプラットフォームとして提供するもので、フランスの神話に登場する空中大陸を語源とし、クラウドと融合し進化を続けるサーバプラットフォームを空の大陸に見立て命名したものです。NTTの研究所が中心となって技術開発を先導し、オープン化することで、それぞれのアプリケーションが共通的な機能を利用可能となり、新規ベンダの参入が容易となります。これにより、多様なアプリケーションが提供されるようになり、ネットワークの用途が広がっていくことが期待できます。さらに、MAGONIAの活用によって広域に分散したサーバにネットワーク機能を最適に配備することが可能となり、故障や災害に強く、トラヒックの変化に対して伸縮自在なネットワークインフラを実現することができます。

図3 MAGONIAとは

NTTの研究所では、これまでに賛同を得たパートナー企業との共同研究プロジェクト*5を通じた、ETSI NFVが提唱するネットワーク機能仮想化のコンセプトの具現化、SDN & OpenFlow World Congress 2014 への出展、フィールドでの実証実験*6の実施を通じて、MAGONIAの中核を担う分散処理基盤の高信頼性やスケール性を実証してきました。

 この結果を踏まえ、NTTの研究所では、MAGONIAを今後のサーバシステムの基本アーキテクチャとして位置づけ、まずMAGONIAのAPI仕様を策定し公開します(別紙1テキストファイルを開く2テキストファイルを開く参照)。今後、ETSI NFV等での標準化を推進するとともに、本API仕様の普及にむけた国内外の開発者やサービス事業者との連携を推進していきます。

今後の展望

NetroSphere構想の実現に向けては、通信産業における多くのプレイヤーと共に変革を進めていく必要があります。必要な汎用部品の普及促進に向けては、同様のコンセプトを共有するキャリア等と、共通仕様の策定や国際標準化等の協力を進めます。また、技術開発を加速するために、国内外ベンダや研究機関等さまざまな得意分野を持つパートナーと幅広く連携し、共同での研究開発や実証実験を通じて技術確立を進めていきます。

用語解説

*1光コラボレーションモデル
「"光コラボレーションモデル" ~ 新たな価値創造への貢献 ~」 NTTニュースリリース 2014年5月13日当該ページを別ウィンドウで開きます

*2SDN
Software Defined Networking。パケット転送の機能や構成を外部のソフトウェアによって定義・制御することが可能なネットワークのこと。2009年12月に初版の標準仕様が公開されたOpenFlowの登場によって、ソフトウェアと転送装置のインタフェースが標準化され、転送装置における制御機能を外部に切り出すことが可能となり、ネットワーク装置の機能分離、機能シンプル化による汎用化が進むと期待される。

*3EOL
End of Life:装置やソフトウェア等の製品に関するベンダによる販売やサポートの終了。故障修理や不具合、セキュリティリスクへの対応、交換部品の製造・提供が打ち切られることから、その製品を活用したサービスの提供の継続に支障があり、対応として代替可能な製品への交換やそれに伴う周辺装置への機能変更が発生し、時にはシステム全体の更改、サービス自体の終了といったことも余儀なくされるなど、サービス継続やコスト負担の面で影響が大きい場合がある。

*4NFV
Network Functions Virtualisation。従来専用装置に搭載されていたファイヤウォール等のネットワーク機能を汎用サーバ上に搭載されたソフトウェアで処理する仕組みのこと。2012年12月にETSI(European Telecommunications Standards Institute)においてNFV ISG(NFV Industry Specification Group)が設立され、主にキャリアが中心となって技術検討が推進されている。

*5共同研究プロジェクト
将来ネットワークを見据えた新たなサーバアーキテクチャの共同研究を開始
http://www.ntt.co.jp/news2014/1402/140207a.html

別紙・参考資料
図1 NetroSphereの実現に向けて
図2 マルチサービスファブリックとは
図3 MAGONIAとは
別紙1 MAGONIA API仕様書(分散処理基盤編)概説 [922KB]
別紙2 MAGONIA API仕様書(分散処理基盤編) [1.27MB]

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