検索パネルを開く 検索パネルを閉じる メニューを開く メニューを閉じる

2015年3月26日

世界初、プロ向け 4K H.265/HEVCリアルタイムエンコーダLSIを開発
~4Kの"より高品質な映像素材(4:2:2フォーマット)"の伝送を可能に~

日本電信電話株式会社(以下NTT、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:鵜浦 博夫)は、最新の映像符号化に関する国際標準規格「H.265/HEVC」(以下、HEVC)※1に対応した、超高精細4K/60p※2 HEVCリアルタイムエンコーダLSI(開発コード名:NARA)を開発しました。

本LSIは、放送局などが編集や生中継などに使う、より高画質な4K映像の素材映像の伝送※3に適用可能な2倍の色情報を表現できるプロ用途向けの高品質映像規定Main 4:2:2 10プロファイルに世界で初めて対応しています。また、LSI化により、既存技術でのHEVCエンコーダと比較して、基盤実装面積を16分の1に、圧縮性能を1.5倍に、小型化と高性能化を実現しました。

今後、2020年に向けて、世界各地で多くの視聴者にスポーツの感動が共有されることが予想されています。NTTは、本技術を通じて、超高精細映像伝送サービス、パブリックビューイング、マルチアングルTV等、将来の高臨場大画面の映像分野で貢献してまいります。

なお、本LSIは、2015年4月13日から米国ラスベガスで開催される国際放送機器展(NAB2015)に展示予定です。

図1 LSIの写真(開発コード名:NARA)

図1 LSIの写真(開発コード名:NARA)

1.開発の経緯

(1)これまでの開発

NTTの研究所では、高品質の映像配信サービス等を実現するため、以下取り組んできました。

  • 2002年夏、世界初のプロフェッショナル用途向け1チップMPEG-2※4 HDTVコーデック LSI(VASA)を開発
    VASAは、2003年12月に開始された地上デジタル放送を支えるLSIとして、放送局の局内外の各種MPEG-2エンコーダやデジタルTV中継網の基幹部品として利用されてきました。
  • 2007年春、プロフェッショナル用途向けH.264/AVC※5(以下、H.264)コーデック LSI(SARA)を開発
    SARAは、2008年より地上デジタル放送・BSデジタル放送のIP同時再送信サービスにおけるMPEG-2からH.264へのリアルタイムトランスコーダとして採用されるなど、映像伝送サービスにおけるキー・デバイスとして広く利用されています。

(2)次世代の超高精細映像の伝送に向けた開発

近年、臨場感にあふれる超高精細4K映像サービスの普及拡大が見込まれています。しかし、超高精細4K映像は通常のHDTVの8倍の画素数を有するため、本格的な普及には、伝送帯域の更なる効率的利用を実現する高い圧縮性能に加えて、機器の小型化・経済化を兼ね備えたリアルタイムエンコーダの実現が求められています。

NTTの研究所は、このようなニーズに応えるため、長年の映像コーデック開発で培った技術力をベースにHEVC関連の研究開発を進めるとともに、NTTグループは総務省関連事業※6に参画し、超高精細4K・8K映像サービスの普及促進に向けて活動してきました。

2.開発のポイント

NTTの研究所は、プロ用途向けの要求条件を満たす高圧縮・高品質映像サービスの実現に向け、1チップで4K/4:2:2/60p映像のエンコード処理を行う、プロフェッショナル用途向けHEVCリアルタイムエンコーダLSI(開発コード名NARA:Next-generation Encoder Architecture for Real-time HEVC Applicationsの略)を新たに開発しました。

開発のポイントは以下のとおりです。

(1)独自の高圧縮映像エンコード技術により、高精細な映像サービスが可能に

HEVCの特徴である可変ブロックサイズに適応したフレーム間予測やフレーム内予測におけるハードウェアアルゴリズムを開発し、画面内の大きな動きを検知して適応的に広い探索範囲を実現する動き予測や、動き予測の過程で段階的にブロックサイズを絞り込む高圧縮で低演算量な動き探索、映像の特徴を解析した上で事前に予測方向を絞り込むイントラ予測等のハードウェアアルゴリズムを確立しました。

これら高圧縮映像エンコード処理に加え、音声エンコーダ・映像音声のトランスポートストリーム(MPEG2-TS)への多重化処理も1チップに内蔵することで、チップ搭載システムの構成のシンプル化を実現しました。(図2)

図2

図2

(2)4:2:0フォーマットの2倍の色情報を有する4:2:2フォーマット映像処理を1チップで実現(図3)

プロフェッショナル用途に用いられる4:2:2フォーマット映像は、配信などに用いられている4:2:0フォーマットの2倍の色情報を有しているため、エンコード・デコードを複数回繰り返しても、色の劣化が発生しにくいという利点があります。このため、ライブイベントなどの生中継のように、カメラで撮影された映像が何度もエンコード・デコードされて素材が編集されるような場合に用いられています。

従来技術では、主に4:2:0フォーマット映像を用いたエンコード処理を実現していますが、今回の成果では、HEVCの真の性能である高圧縮率を達成すると共に、4:2:0フォーマット映像の2倍の色情報を有する4:2:2フォーマット映像のエンコード処理をリアルタイムで実現することができます。

図3

図3

3.今後の予定

(1)販売予定について

NTTでは、本LSIの搭載システム装置を、今後本格化する超高精細映像の伝送サービスでの利用に向けて検証を重ね、2015年度第3四半期以降にNTTグループより市場投入する予定です。

(2)今後の展開について

本LSIの4Kリアルタイムエンコーダとしての特長に加えて、本LSIを複数チップ用いることで、さらに臨場感の高い8K映像をリアルタイムエンコード処理する技術的な実現性も確認しました。

2020年には、世界各地で多くの視聴者にスポーツの感動が共有されることが予想されており、本技術は、超高精細4K・8K映像伝送サービス、パブリックビューイング、マルチアングルTV等、将来の高臨場大画面の映像分野での活用にも今後貢献していきます。

用語解説

  1. H.265/HEVC(High Efficiency Video Coding)
    国際標準化団体であるITU-T及びISO/IECによって規格化された、最先端の映像圧縮方式です。2014年4月に規格化されました
  2. 4K/4:2:2/60p映像
    現行のHDTV デジタル放送に比べ映像の解像度が高い超高精細映像であり、4K映像の解像度は3840x2160画素。60pは時間方向のフレーム周波数を示し、秒間に順次走査(progressive)で60枚/秒であることを表します。HDTVと比較して、空間方向に4倍、時間方向に2倍、併せて8倍の画素数の高精細映像であります。
    4:2:2は放送等に用いられる4:2:0フォーマットの2倍の色情報を有するフォーマットであり、高品質であることが求められる素材伝送等に必須の機能であります。
  3. 素材伝送
    放送業界において番組編集の元となる画像や音声を伝送すること。一例として、地上デジタル放送等のビットレートはMPEG-2 HDTVでも15Mbps程度ですが、それらのHDTV番組を制作する過程で使用される素材伝送では、MPEG2で60Mbpsから150Mbpsといわれる高レートの品質が必要となります。
  4. MPEG-2(Moving Picture Experts Group-2)
    MPEGは動画像圧縮に関する国際標準方式。そのうちMPEG-2は、日本における地上デジタル放送などの標準符号化方式で、DVDなどにも適用されています。
  5. H.264/ AVC(advanced video coding)
    国際標準化団体であるITU-T及びISO/IECによって2003年に規格化された映像符号化方式です。MPEG-2の2倍の圧縮効率を有しており、IPTV・Blu-ray Disc・各種OTT映像サービスなどに適用されています。
  6. 総務省平成24年度補正予算事業「次世代衛星放送テストベッド事業」および総務省平成25年度補正予算事業「4K・8Kを活用した放送サービスの実用化に係る技術の実証」

本件に関するお問い合わせ先

日本電信電話株式会社

サービスイノベーション総合研究所
企画部広報担当
E-mail:randd@lab.ntt.co.jp
Tel:(046)-859-2032

Innovative R&D by NTT NTTのR&D活動を「ロゴ」として表現しました

ニュースリリースに記載している情報は、発表日時点のものです。
現時点では、発表日時点での情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承いただくとともに、ご注意をお願いいたします。