2015年3月27日
日本電信電話株式会社
沖電気工業株式会社
日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:鵜浦 博夫、以下 NTT)と沖電気工業株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:川崎 秀一、以下 OKI)の2社は、波長多重技術と組み合わせた新たなPON技術※1である「WDM/TDM-PON技術※2」を共同開発しました。本技術を用いて、40kmの伝送距離と従来の40倍に当たる40Gbit/sの総伝送容量、32倍のユーザ数にあたる1024ユーザの収容を可能とする光アクセスシステムのフィールド伝送実験に世界で初めて成功しました。
なお本成果の一部については、光通信に関する国際学会OFC2015(Optical Fiber Communication Conference 2015、米国ロサンゼルスで3月22日~26日開催)で3月26日(米国西海岸時間)にポストデッドライン論文※3として発表します。
今回の研究開発は、総務省の委託研究「超高速・低消費電力光ネットワーク技術の研究開発(アクセスネットワーク(加入者・局舎ネットワーク)高速大容量化・低消費電力化技術)」を受託し実施したものです。次世代光アクセスシステムの研究開発では、年々増加するブロードバンドユーザのトラフィックに対応すべく、通信容量の大容量化が求められています。また、伝送距離を伸ばし収容ユーザ数を増やすことにより、装置を配置する局舎数や局舎内の装置数を削減できるため、効率的な運用と消費電力削減が実現できます。このように大容量化、広域化、収容ユーザ数の増加をもたらすために、従来の時間多重を用いたTDM(Time Division Multiplexing)-PON技術の限界を超えるさらなる技術革新が求められています。
NTTのアクセスサービスシステム研究所(以下、NTTの研究所)とOKIは、本課題を解決すべく、従来のTDM-PON技術と、コア、メトロネットワークで活用されてきた長距離伝送用の波長多重(Wavelength Division Multiplexing:WDM)技術とを組み合わせた「WDM/TDM-PON技術」(図1)の確立を目指し研究に取り組んできました。TDM-PON技術という効率的に複数のユーザを収容可能な技術に加え、WDM技術によって総帯域を大きく拡大するとともに、少ない損失で長距離の伝送が可能になります。
今回、NTTの研究所とOKIが開発した「WDM/TDM-PON技術」は、(1)波長可変型バースト光送受信器※4、(2)波長多重バースト光増幅器、(3)波長切替制御プロトコルから構成されます。
WDM/TDM-PONでは、ONU(宅内装置)によって使用波長が異なるため、各々異なる仕様のONUを用意した場合、管理コストの上昇や誤接続が発生する可能性があります。これらを防止するためにはONUの光送受信器に波長可変機能(カラーレス化)が必要となります。本開発では、PONの上り伝送方式であるバースト伝送※4に対応した波長可変機能付き光送受信器として、小型・低コストタイプと高速波長可変タイプの2種類を実現しました(図2)。
WDM/TDM-PONの40km、1024分岐を実現するためには、波長多重された上りバースト信号を経済的に増幅する光増幅技術※5が必要です。また、上りバースト信号の出力レベルを均一化し、入力ダイナミックレンジ※6を拡大する必要があります。本開発では装置の小型経済化を実現するため、利得媒体※7として半導体光増幅器(Semiconductor Optical Amplifier、 SOA)を用いました。また、SOAの利得を高速に制御する自動利得制御(Automatic gain control、AGC)技術を確立し、部品点数の削減によるさらなる経済化を実現しました(図3)。
本開発装置の1波長あたりの総帯域は最大10Gbit/s(×4波長=40Gbit/s)であり、同一波長のONUのトラフィックの総和が10Gbit/sを超えると、フレーム損が発生する可能性があります。これに対処するため、運用中にONUの波長をトラフィック量の少ない別の波長に切替えることができる波長切替プロトコルを開発しました。また、波長切替中は局側装置及びONUがフレーム送信を停止して蓄積し、切替完了後に蓄積フレームの送信を再開する機能を実装することで、フレーム損を発生させない波長切替を可能にしました。
2社はこれらの新規開発技術を実装したOLT(局内装置)、ONU、光増幅器を用いてフィールド実証実験を実施しました。実験は、札幌の複数のNTT東日本ビルを光ファイバで結び、総伝送距離40km、1024分岐の広域加入者系光ネットワークを模擬したテストベッド※8を構築して行いました(図4、5)。OLTとONUとの距離40kmにおいて、1024分岐のファイバ構成で、ONUの接続動作を世界で初めて確認しました。また上り下りで総帯域40Gbit/sとなる良好な伝送特性とフレーム損のない波長切替が行えることや,トラフィック量が少ない場合は稼働波長数を減らすことで,OLTの消費電力を削減できることを世界で初めて確認,実証しました。
本技術開発で得られた成果は、ITU-T G.989※9(通称NG-PON2)の標準化活動にて提案し、採択される見込みです。
今後は、開発した「WDM/TDM-PON技術」のさらなる信頼性向上を目指すとともに、装置の小型化にも取り組んでいきます。また、合わせて国内外の機関とも連携し、成果のグローバル展開を目指していきます。
図1 WDM/TDM-PONの概念図(a)OKI開発品
(b)NTT開発品
本件に関するお問い合わせ先
NTT情報ネットワーク総合研究所
企画部 広報担当
TEL:0422-59-3663
E-mail:inlg-pr@lab.ntt.co.jp
沖電気工業株式会社
広報部 山本
TEL:03-3501-3835
E-mail:press@oki.com
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