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2015年6月 8日

SDNソフトウェアスイッチLagopusがInterop Tokyo 2015のShowNetに採用
~SDNを利用したInternet Exchange高度化実験にLagopusが採用され、Best of Showアワードのファイナリストに選出される~

日本電信電話株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:鵜浦博夫、以下NTT)が開発し、普及活動に努めているSDNソフトスイッチLagopusが、今回、Interop Tokyo 2015(2015年6月10日~12日、千葉県千葉市幕張メッセ)で公開されるShowNetに採用されました。Lagopusは、従来のIP技術では難しかったInternet Exchange(IX)を使った高付加価値サービスをSDNを用いてスマートに実現し、将来のインターネットの利便性、安定性に寄与する基本技術を確認するSDN-IX高度化実験で利用される予定です。なおLagopusはInterop Tokyo 2015出展企業各社からエントリーされた製品の中から高い評価を得てBest of Show AwardのSDI(Software Defined Infrastructure)部門およびShowNetデモンストレーション部門のファイナリストに選出されました。
 今後、NTTではSDN技術の発展と普及に向けて、Lagopusにおけるオープンソースコミュニティの拡大、周辺技術の開発、用途開拓などに積極的に取り組んで行きます。その一環として大学等の若手研究者、学生を対象にLagopusを活用した研究活動に対する技術情報の提供などの支援を進めていく予定です。

1.背景

ネットワークの柔軟かつ迅速な構築及び機能追加を実現するため、最新のソフトウェア技術を用いてネットワーク機能を専用LSIではなくソフトウェアを中心に実現するSDN※1やNFV※2が注目されています。SDNは、当初データセンタを中心に限定的に導入が始まりましたが、昨今ではその役割、適用範囲が中継網や企業網、小規模網に拡大しつつあります。
 NTT未来ねっと研究所(神奈川県横須賀市 以下、未来研)では、総務省の委託研究「ネットワーク仮想化技術の研究開発」のO3(オースリー)プロジェクト※3に参画し、SDNに対応した高性能、高機能なソフトウェアスイッチの研究開発に取り組んできました。2013年12月に10Gbpsの通信性能と100万フローエントリを両立して実現するSDNソフトウェアスイッチ『Lagopus』の研究試作に成功した後、2014年7月には『Lagopus』をオープンソースソフトウェア(OSS)として一般公開しました。『Lagopus』は、新しい通信技術であるSDNの中心技術OpenFlowに準拠した高性能スイッチであるだけでなく、さまざまなネットワークプロトコルや管理インターフェースをサポートしています。こうした特長を活かして、これまでのIP技術では簡単に実現できなかった新たな用途の開拓に取り組んでいます。たとえば、通信キャリアの広域ネットワークでの運用を目指して性能、機能の充実に取り組んでいます。また、OSSをベースとした普及活動、エコシステムの拡大も、こうした取り組みの一環です。

2.Interop Tokyo 2015のShowNet SDN-IXへのLagopusの採用

SDNの新しいユースケースとして、インターネット・エクスチェンジ(IX)※4にSDNを適用したSDN-IXが注目を集めています。ネットワークとコンピューティング分野の大規模イベントであるInterop Tokyoにおいて、今年度のShowNet※5ではSDN-IXの実証実験と会期中の実運用がなされることになっています。
 SDN-IXの実証実験では、運用の自動化や従来型IXでは難しかった高付加価値機能の創出を目的としています。具体的には、下記のような機能の実現に取り組む予定です。

  • 自動パス設定
  • 運用管理システムから接続情報を設定し、当該AS間のパスを自動設定
  • AS毎に独自管理するVLAN IDの相互変換により、AS間のVLAN接続を実現
  • 外部からのDDoS(Distributed Denial of Service)攻撃の緩和・回避
  • ShowNet内にDDoS攻撃が及ばぬよう、SDN-IXで攻撃トラフィックを分離・遮断
  • 不要トラフィックの低減による安定化
  • 登録されたルータ以外からのパケットの遮断や、SDNスイッチでのARPの代理応答によるブロードキャストの局所化により、不要なトラフィックによる意図しない問題の発生を回避

今回、このShowNetにおけるSDN-IX構築のために、『Lagopus』が採用されました。これはソフトウェアスイッチ『Lagopus』の機能性の高さや使いやすさが評価されたものです。ShowNetでは、『Lagopus』が提供するOpenFlowの仕組みを使って、従来のIPネットワーク機器では実現するのが困難であるか、複雑な設定が必要な機能をスマートに実現します。
 『Lagopus』は、大手町と幕張の両拠点に導入し、分散IXを構成します(図1)。『Lagopus』の操作には、NECOMAプロジェクト※6のコントローラを用います。
 なお、今回のInterop Tokyo 2015では、『Lagopus』はShowNetに使われるほか、O3プロジェクトの展示ブース(ブース番号:5N25)で説明パネルをご覧いただけます。また、今年度Best of Show AwardのSDI部門およびShowNetデモンストレーション部門のファイナリストに選出されました。Best of ShowNet Awardは、審査委員会が選んだ「今年の一品」に与えられる賞であり、『Lagopus』は、高い技術に裏付けられた高性能、高機能性に加え、その先駆的な取り組みの実績が高い評価をいただいたと考えております。

3.Lagopusを用いた大学等への研究支援

未来研では、OSSのエコシステム拡大を通して、『Lagopus』のユースケースや機能の拡充を目指しています。人材育成の観点から、特に若手の技術者、研究者、学生の方々には、実際に『Lagopus』を手にとり、SDN分野の技術習得や研究活動に役立てていただき、斬新な発想でアプリケーションの開拓に取り組んでいただければと願っています。
 こうした目的から、『Lagopus』を研究等に活用していただく大学、大学院、高専などを対象に、詳細な技術情報の提供などの技術支援や、ハンズオン・セミナーの実施や遠隔中継などの研究支援を検討しています。
 対象となる団体は、Lagopusユーザ会もしくは沖縄オープンラボラトリ※7に参加していただいた上で、『Lagopus』を用いた研究に取り組んでいただける大学、大学院、高専等とさせていただきます。具体的な研究テーマ選定や成果発表方法など、その他の詳細条件については、『Lagopus』のホームページなどでお伝えする予定です。なお、研究支援対象は10団体程度を想定しております。

4.今後の展望(図2

NTT研究所では、今回のSDN-IX実験を通じた知見を今後の『Lagopus』の開発に活かしていくほか、関係する諸組織と連携しながらオープンソースコミュニティを拡大し、技術の普及促進だけでなく、開発者の皆さまの参画による機能拡張、性能向上の一層の加速を目指します。さらに、OSSを活用したビジネスマーケットの拡大も推進し、SDN/NFVに関わる技術発展とビジネスの活性化を目指します。

用語解説

※1SDN: Software Defined Networkingの略。ソフトウェアにより機能や構成を定義・制御することが可能なネットワークのこと。

※2NFV: Network Functions Virtualisationの略。ネットワーク機能をソフトウェアで仮想化して実装する仕組みのこと。

※3O3(オースリー)プロジェクト:
ニュースリリース:
世界初の広域SDN(Software-Defined Networking)実現を目指す研究開発プロジェクト
『O3(オースリー)プロジェクト』の開始について
http://www.ntt.co.jp/news2013/1309/130917a.html

※4IX(Internet Exchange): インターネットにおけるAS(ISP,データセンタ,企業網等,組織毎のネットワーク)の相互接続点。AS間の経路確立(ルーティングプロトコルによる経路交換)と,実トラフィックの転送を担う

※5ShowNet: 産学界から最先端技術・製品を持つ参加社が集結し,一つのネットワークを作り出す世界最大級の相互接続検証ネットワーク。Interop Tokyo出展社や来場者がインターネットへ接続するためのISP,キャリアとして運用される。

※6NECOMA(Nippon-European Cyberdefense-Oriented Multilayer threat Analysis)プロジェクト:欧州委員会 FP7 プログラム(Seventh Framework Programme)と総務省 戦略的国際連携型研究開発推進事業の日欧 ICT 協調課題である「サイバー脅威に対する回復性強化のためのサイバーセキュリティ」に取り組んでいる。

※7一般社団法人 沖縄オープンラボラトリ: 沖縄うるま市を拠点とし、SDN技術とクラウド技術の融合を目指し、技術開発・検証、人材育成、国際会議開催などの活動を推進する研究機関。
http://www.okinawaopenlabs.org/

図1 『Lagopus』を用いたSDI-IXの構成(Interop Tokyo 2015のShowNetで運用)

図1 『Lagopus』を用いたSDI-IXの構成(Interop Tokyo 2015のShowNetで運用)

図2 今後の展開イメージ

図2 今後の展開イメージ

本件に関するお問い合わせ先

日本電信電話株式会社
先端技術総合研究所 広報担当
a-info@lab.ntt.co.jp
TEL 046-240-5157

ニュースリリースに記載している情報は、発表日時点のものです。
現時点では、発表日時点での情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承いただくとともに、ご注意をお願いいたします。