2016年2月15日
日本電信電話株式会社(以下NTT、本社:東京都千代田区、代表取締役社長:鵜浦 博夫)は、臨場感あふれる高画質な8K映像サービスを実現するためのキーとなる、専用LSIによる世界最高性能の高画質8K HEVCリアルタイムエンコーダを開発しました。
NTTは最新の映像符号化国際標準規格「H.265/HEVC」※1(以下、HEVC)に対応した専用LSIである4K/60p※2映像対応HEVCリアルタイムエンコーダLSI「NARA」※3を2015年3月に発表しました。今回、同LSI 4チップを連携動作させ、チップ間で相互データ転送を行うことにより、高画質・高効率な8K/60p※4 映像対応HEVCリアルタイムエンコーダを実現する技術を新たに開発しました。
本8Kエンコーダにより約85Mbpsで臨場感あふれる高画質な8K映像伝送が実現可能となりました。また8Kエンコード処理が1ボードで経済的に実現可能となり、パブリックビューイング、ODS※5等の8K映像配信サービスや8K放送の実現加速、監視・医療分野での新たな高臨場映像アプリケーション創出に貢献します。
近年、HDTVを超える超高精細映像サービスの普及拡大が見込まれており、NTTグループは総務省関連事業※6に参画し、超高精細4K・8K映像サービスの普及促進に向けて活動してまいりました。4K映像については、2015年頃より衛星放送、IPTV放送、ケーブルTV等でのサービスが開始されるなど、本格的な普及期を迎えつつあります。一方、8K映像については4K映像のさらに4倍の画素数を有し、圧倒的な臨場感を有していますが、本格的な普及には、高い圧縮性能と機器の小型化・経済化を兼ね備えたリアルタイムエンコーダの開発が求められています。
NTTの研究所は、これまでのエンコーダLSI開発で培った技術をベースに8K映像サービスの本格的な普及をめざし、研究開発を進めてまいりました。(別紙1参照)
NTTの研究所は、臨場感あふれる8K映像サービスを実現するため、HEVCリアルタイムエンコーダLSI(NARA)を4チップ連携動作させることにより、世界最高性能の高画質8K HEVCリアルタイムエンコーダを新たに開発しました。
本8Kエンコーダを実現する技術のポイントは以下のとおりです。
本8Kエンコーダでは、画面分割による並列エンコード方式を採用しており、7680画素×4320画素の8K映像を4つの画像に分割し、それぞれを4K映像相当の処理能力を持つHEVCエンコーダLSIで並列にエンコードします。HEVCをはじめとする映像符号化方式では映像の動きに追従して符号化済みの画像(参照画像)との差分をとることによって情報量の削減を図っていますが、本技術では、4チップ間で参照画像を相互に転送し、分割境界を跨ぐ動きに対応したエンコード処理を実現しました。これにより分割による符号化効率の低下を生じさせることなく、高い符号化効率を実現しています。(図1)
また、分割境界を跨ぐ平滑化フィルタ処理、分割画像間の画質を均一化する符号量制御処理をいずれもチップ間のデータ転送によって実現し、高い符号化効率と高画質を実現しました。これらにより従来のH.264では200~160Mbpsのビットレートが必要であった高画質な8K映像の伝送を約85Mbpsで可能としました。
これまで、4K対応のエンコーダLSIを並列動作させ8K映像のリアルタイムエンコードを実現した例はありましたが、チップ間の相互データ転送を伴わないため、符号化効率や画質の面で十分とはいえませんでした。また、8K映像をFPGA※7ベースの複数のエンコーダボードで相互にデータ転送をしつつエンコードを行う技術がありましたが、今回、より高い処理能力を持つ4K対応の専用LSIを用いることにより、より高画質・高効率なエンコード処理を実現しました。また、高速・広帯域のチップ間転送を実現するために汎用のPCIeバスを採用することで、経済的かつ柔軟な実装を実現しています。
(図1)
本エンコーダでは、従来複数のエンコーダボードで実現されていた8K映像のリアルタイムエンコード処理を、HEVCエンコーダLSI 4チップと周辺回路を搭載した1ボードで実現しています。装置サイズとしては、入力映像信号のインタフェースボード等を含めても、19インチ幅ラックで5U(222mm高)程度での実装が可能となり、従来に比べ大幅な小型化・経済化を実現しています。
(図2)
NTTは本8Kエンコーダを用いて、パブリックビューイング、ODS等の超高精細8K映像配信サービスや医療用途での実証実験を進めていく予定です。また、2020年には、世界各地で多くの視聴者にスポーツの感動が共有されることが予想されています。NTTは本技術を活用した様々な高臨場高精細映像サービスの実現に今後貢献していきます。
なお、本技術に関してはNTTエレクトロニクス株式会社より8Kエンコーダモジュールとして製品化を予定しています。
今回開発した8Kエンコーダは2016年2月18日~19日に開催するNTT R&Dフォーラム2016に展示いたします。「NTT R&Dフォーラム2016」サイト http://labevent.ecl.ntt.co.jp/forum2016/info/
※1H.265/HEVC(High Efficiency Video Coding) 国際標準化団体であるITU-T及びISO/IECによって規格化された、最先端の映像圧縮方式です。2014年4月に規格化されました。
※24K/60p映像 現行のHDTV デジタル放送に比べ映像の解像度が高い超高精細映像であり、4K映像の解像度は3840×2160画素。60pは時間方向のフレーム周波数を示し、秒間に順次走査(progressive)で60枚/秒であることを表します。HDTVと比較して、4K映像は空間方向に4倍、時間方向に2倍、併せて8倍の画素数があります。
※3NARA 開発コード名:Next-generation Encoder Architecture for Real-time HEVC Applicationsの略
※48K/60p映像 4K映像よりさらに高精細な映像であり、解像度は7680×4320画素。フレーム周波数は順次走査(progressive)で60枚/秒。4K映像に対して、空間方向に4倍の画素数があります。
※5ODS(Other Digital Stuff/Other Digital Source) 映画以外のコンテンツを映画館で上映すること。映画館の上映設備を利用して、スポーツ中継・コンサート・演劇などの映像を大画面にうつし出すサービスです。
※6総務省関連事業 総務省平成24年度補正予算事業「次世代衛星放送テストベッド事業」および総務省平成25年度補正予算事業「4k・8kを活用した放送サービスの実用化に係る技術の実証」
※7FPGA(Field Programmable Gate Array) 回路構成を変更可能なプログラマブルなLSI(集積回路)。専用LSIに比べて開発の柔軟性が高い反面、実装面積が大きくなります。
NTTの研究所では、高品質の映像配信サービス等を実現するため、以下のとおり取り組んできました。
<HEVCリアルタイムエンコーダLSI(NARA)>
※1MPEG-2(Moving Picture Experts Group-2) MPEGは動画像圧縮に関する国際標準方式。そのうちMPEG-2は、日本における地上デジタル放送などの標準符号化方式で、DVDなどにも適用されています。
※2H.264/ AVC(advanced video coding) 国際標準化団体であるITU-T及びISO/IECによって2003年に規格化された映像符号化方式です。MPEG-2の2倍の圧縮効率を有しており、IPTV・Blu-ray Disc・各種OTT映像サービスなどに適用されています。
※34K IP放送 株式会社NTTぷらら、株式会社アイキャスト報道発表「ひかりTV、11月30日より4K-IP放送を開始」
http://www.nttplala.com/news_releases/2015/11/20151117_1.html
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