2017年2月 7日
日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:鵜浦博夫、以下 NTT)は、研究所内の最先端のInP化合物半導体R&Dプロセスによる超高速IC技術をオープン化し、パートナとなる皆さまとのコラボレーションを通じ技術のさらなる進化をめざします。
NTTは通信の大容量化をめざし、シリコンよりも高速化や高出力化が可能なInP化合物半導体プロセスを用いる超高速IC技術の研究開発を長年にわたり進めてきました。これまで、本プロセスを活用し、300GHz帯を用いた毎秒数十ギガビットの伝送速度を有するテラヘルツ無線用小型無線機による毎秒2ギガバイトの高速データ転送(2016年5月26日ニュースリリース)や、光通信送信機の出力信号速度を倍にする帯域ダブラにより、データセンタ等で使われる将来の短距離大容量通信において毎秒250ギガビットの伝送(2016年9月23日ニュースリリース)を実証してきました。今回、このInP化合物半導体R&Dプロセスを用いる超高速IC技術をパートナの皆さまにオープン化します。
今後、コラボレーションをするパートナの皆さまを募り、パートナとなる皆さまにプロセスデザインキット(PDK)を配布し、最先端化合物半導体R&DプロセスでのIC化を支援しながら、パートナとなる皆さまと超高速ICを用いた新サービスや新産業の創出をめざすと共に、超高速IC技術のさらなる進化をめざします。
一般的なシリコンを用いたICでは、CMOS*1のような大規模な集積化により高機能化が可能ですが、高速化や高出力化に限界があります。一方、InP*2化合物を用いたICでは、高集積化は不得手ですが、シリコンよりも高速化や高出力化が可能なので、相互補完する技術として期待されています(図1)。今回、NTTとパートナの皆さまでコミュニティをつくり、この中でNTTの研究開発で培った最先端のInP化合物半導体プロセス(以下 化合物半導体R&Dプロセス)を用いる超高速IC技術をオープン化し、技術を進化させます。具体的には、<1>超高速ICの新しい領域への適用先の開拓、<2>超高速ICの更なる高速化をパートナの皆さまと共に進めます。今回オープン化するInP超高速ICは、シリコンCMOSほど集積はできませんが、組み合わせることにより、ポストムーア*3時代に必要となる超高速・高機能を両立させる領域で新しい適用先を開拓できます(図1)。
図1 InP化合物半導体による超高速ICの特徴
最先端の化合物半導体R&Dプロセスによる超高速IC技術のオープン化として、具体的には、下記を行います(図2)。
本取組みによりパートナとなる皆さまと超高速ICを用いた新サービスや新産業の創出をめざすと共に、超高速IC技術のさらなる進化をめざします。
図2 取組みの流れ
世界トップレベルの動作速度を有する化合物半導体R&Dプロセスを用いた超高速ICを実現できます。例えば、シリコンCMOSを凌駕するfT*8/fmax*9 = 400/450GHz の特性を有するInP HBT*5によるシリコン技術の倍の広帯域特性のICなど、シリコンではできない超高速アナログICが実現可能です。
2017年にトライアルおよびパートナの募集を行い、2018年にパートナとなる皆さまへのPDK配布を開始、2019年に最先端の化合物半導体R&DプロセスによるIC試作開始を想定しています。
*1CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor):
相補型金属酸化膜半導体。半導体集積回路を実現する構造としてCPUなど大規模な機能を実現する場合に用いられます。大容量光伝送の送受信では信号量が多いためこのタイプの回路が多く用いられます。微細化により高速化が進んでいますが、高速性や高出力性の面では化合物半導体の方がすぐれています。
*2InP:
リン化インジウム。インジウムとリンからなるIII-V族の化合物半導体。高速性や高出力性が求められるアプリケーション向けの機能を実現する場合に用いられます。
*3ポストムーア:
半導体技術の進展が進み、「ムーアの法則」の適用ができなくなった時代。
*4ジョンソンの性能指数:
半導体の性能を表す指標の一つ。大きいほど、高速性や高出力性に優れる。
*5HBT(Heterojunction Bipolar Transistor):
ヘテロ接合バイポーラトランジスタ。
*6HEMT(High Electron Mobility Transistor):
高電子移動度トランジスタ。
*7PDK(Process Design Kit):
プロセスデザインキット。ICの設計に必要な情報をまとめたもの。
*8fT:
電流利得遮断周波数。
*9fmax:
電力利得遮断周波数。
本件に関するお問い合わせ先
日本電信電話株式会社
先端技術総合研究所 広報担当
a-info@lab.ntt.co.jp
TEL 046-240-5157
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