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2017年12月12日

キャリアネットワークのホワイトボックス化に向けた日台共同実験に成功 ~キャリア間のSDNコラボレーションでIP転送ネットワークの汎用化を推進~

日本電信電話株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:鵜浦博夫、以下 NTT)は、中華電信股份有限公司(Chunghwa Telecom、本社:台北市中正区信義路、董事長:鄭優、以下 中華電信)との実証実験において、伊藤忠商事株式会社(東京都港区、代表取締役社長:岡藤 正広、以下 伊藤忠)、並びに伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:菊地 哲、略称 CTC) と共同で、ホワイトボックススイッチを用いたネットワークを構成・制御するNTTのMulti-Service Fabric (以下 MSF)と、ユーザの用途・目的に応じて多様なプロダクトを制御する中華電信のオーケストレータ技術(NAPA)を連携させ、仮想ネットワーク制御においてキャリアで必要とされるサービス継続性・信頼性を実証することに成功しました。
 4社は、2015年より共同でSDN/NFV技術の検討を開始し、汎用製品を最大限に活用したアーキテクチャにより、さまざまなニーズに迅速に対応するネットワーク技術の確立をめざしています。今回の実験により、ホワイトボックススイッチの機能を最大限に引き出すことで耐故障性・信頼性の高いネットワークが構築可能であることが実証できたため、今後、商用ネットワークへのホワイトボックススイッチの適用に向けた検討をさらに推進していきます。

共同実験の背景とこれまでの協業の経緯

近年、キャリアではコスト削減のみならず、急激なトラフィックの増加や多様な利用用途により早く柔軟に対応可能なネットワークが求められています。その実現に向けては、従来のキャリア向けネットワーク製品だけに依存するのではなく、よりグローバルで共通的かつ汎用的な技術・製品を活用することが重要になってきています。こうした中、NTTと中華電信はキャリアネットワークの各分野における課題解決に向けた協業を進めています(図1)。

図1 SDN/NFV分野におけるNTTと中華電信の協業。 図1 SDN/NFV分野におけるNTTと中華電信の協業

SDN/NFV分野における協業として、転送SDN技術については2015年9月より、NFV技術については2016年4月より共同で検討を開始しており、またデータセンタ間での伝送SDN技術についても2017年9月より検討を開始しています[1]
 転送SDN技術とNFV技術について、NTT、中華電信、伊藤忠及びCTCの4社は2017年2月に共同研究及び共同実験実施に関する覚書(MoU)を締結しました[2]。本MoUにおいて4社はさまざまなニーズを満たすネットワークの実現に向けたSDN技術の共通化並びに、汎用的なネットワーク製品(スイッチ等)の積極的な活用をめざしています。
 協業当初から検討を進めている転送SDN技術においては、ユーザ毎のサービス提供に必要なネットワークエッジ、大容量の転送能力が求められるコア・バックボーンネットワーク、クラウドやエンタープライズで重要となるデータセンタネットワークの3つの領域について、キャリアネットワークの抜本的な変革をめざしてホワイトボックススイッチの適用検討を進め、このたびデータセンタネットワーク領域への適用性を証明する共同実験に成功しました。
 本実験は、伊藤忠による中華電信への技術支援調整や台湾メーカとの技術連携支援、及びCTCによるホワイトボックススイッチ(ハードウェア・ソフトウェア)のインテグレーション支援を受け、台湾桃園市の中華電信研究院において2週間実施し12月1日に完了しました。

各社が有する技術

NTTでは、2015年2月に発表したNetroSphere構想[3]に基づき、ネットワーク構成装置の汎用化の研究開発を推進しています。その中で、MSFはシンプルな汎用製品を活用しつつ高信頼なネットワークを構成する技術であり、マルチベンダのネットワーク製品に対応したSDNアーキテクチャです。本技術は2017年10月にオープンソースソフトウェアとして公開しました[4]
 一方、中華電信ではオーケストレータNAPAの研究開発を推進しています。複数のSDNアーキテクチャに対し、GUIにて統一した制御方法を提供し、併せてネットワーク状態を容易に把握できます。
 本協業では、キャリアネットワークにホワイトボックススイッチを始めとするより多くの汎用製品を適用することをめざし、MSF及びNAPAの技術検討・開発を進めてきました。

共同実験の内容

データセンタネットワーク領域において、NTTと中華電信の技術を連携し、ホワイトボックススイッチを適用したネットワークでの共同実験を実施しました。具体的にはNAPAからMSFを制御することで、データセンタにおけるホワイトボックススイッチ及びホワイトボックススイッチ用OSを用いた仮想ネットワークの構成技術及び制御技術を実証しました(図2)。

図2 データセンタサービスの構成と本共同実験の範囲 図2 データセンタサービスの構成と本共同実験の範囲

併せてMSFコントローラの故障時における冗長性の確認や、ホワイトボックススイッチ故障時における自動的な通信経路の切り替えの確認など、キャリアネットワークの運用において想定される故障を模擬し、サービスが継続できる信頼性を兼ね備えていることを確認しました。

今後の展開

今回の共同実験で得られた知見をもとにNTTと中華電信は、データセンタの商用サービスにおけるホワイトボックススイッチ等の汎用製品の活用に向け、より詳細な技術検討及び試験を行っていきます。併せてキャリアIPネットワークのネットワークエッジやコア・バックボーンネットワークの領域での適用性の確認検証に向けた検討を進め、将来的には今回データセンタ領域で確認した2社間の技術連携を、データセンタ以外の領域にも拡大して検討を進めていきます。
 NTTでは商用化を見据えた実験の検討を進めるとともに、本協業での実験実績や得られた知見をオープンコミュニティへ展開します。Telecom Infra ProjectやOpen Network Foundationを通じて、本技術に賛同するキャリアやベンダ及びインテグレータをグローバルに拡大し、ホワイトボックススイッチの適用性の実証をさらに推進することで、さまざまなニーズに応えられる信頼性の高いキャリアネットワークをめざします。

参考

[1]データセンタ間光伝送ネットワークへのオープンソース技術適用による抜本的な運用省力化/自動化に向けた共同実験を開始
~中華電信研究院と光伝送ネットワークへのオープンソースソフトウェアとホワイトボックススイッチ適用に向けて~
http://www.ntt.co.jp/news2017/1710/171031a.html

[2]中華電信與日本NTT及伊藤忠總公司簽署SDN/NFV技術合作備忘錄
http://www.cht.com.tw/aboutus/messages/msg-170216-111536.html(別ウインドウが開きます)

[3]NetroSphere構想:キャリアネットワークのあり方を変革する新R&Dコンセプトを策定
~部品化したネットワーク機能を自由に組み合わせ、多様なサービス創出を支えるためのオープンな技術開発を推進~
http://www.ntt.co.jp/news2015/1502/150219a.html

[4]Multi-Service Fabric
https://github.com/multi-service-fabric/msf(別ウインドウが開きます)

本件に関するお問い合わせ先

NTT情報ネットワーク総合研究所
企画部 広報担当
TEL:0422-59-3663
Email:inlg-pr@lab.ntt.co.jp

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