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2018年10月16日

1レーンあたり毎秒256ギガビットのPAM4信号生成が可能な超高速ICを開発 ~データセンタ等で使われる光伝送の容量を現在の10倍にする技術として期待~

日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:澤田純、以下 NTT)は、高速動作に適したDAC(Digital to Analog Converter)(※1)アーキテクチャ技術と、波形高品質化技術を用いて、イーサネット等で採用が始まっているPAM4(※2)符号により毎秒256ギガビットの信号生成に成功しました。
 データセンタ等で使われるイーサネット等の短距離光伝送では、省電力化や経済性への要求から光部品の構成が簡単な強度変調(※3)方式が用いられます。容量増大の要求に応えるために近年採用が始まっている強度変調の一種であるPAM4符号では、送信する情報をアナログ的に多値電圧に変換する必要がありますが、毎秒256ギガビットの高速かつ高品質な多値電圧波形を生成することは困難でした。
 NTTは、独自の高速DACアーキテクチャ技術と波形高品質化技術を適用したPAM4信号生成回路を、InP(※4)-HBT(※5)で実現し、毎秒256ギガビット(シンボルレートとして128ギガボー)の多値電圧信号生成に成功しました。現在広く使われている100ギガビットイーサネット(毎秒25ギガビットの光信号を4レーン多重して実現)の10倍の伝送速度となる毎秒1テラビット(※6)級の伝送実現につながるなど、データセンタ等で使われる将来の短距離大容量通信を実現する超高速IC技術として期待されます。本技術の詳細は、10月14日からアメリカ、サンディエゴで開催される国際会議BCICTS 2018(IEEE BiCMOS and Compound Semiconductor Integrated Circuits and Technology Symposium)で発表予定です。

1.研究の背景

イーサネット等の短距離通信はデータセンタ等に用いられ、低コスト・小型・低消費電力の送受信器が求められます。従来の短距離通信では、2つのレベルのパルス信号として伝送するNRZ(非ゼロ復帰)符号が使われていましたが、将来の伝送容量増大のために、4つのレベルのパルス信号として伝送するPAM4符号の採用が始まっています(図1)。PAM4符号では、送信する情報をアナログ的に多値電圧に変換する必要がありますが、毎秒256ギガビットの高速かつ高品質な多値電圧波形を生成することは困難でした。

2.研究の成果

今回、独自の高速DACアーキテクチャ技術と波形高品質化技術(図2、図3)を適用したPAM4信号生成回路を、InP-HBTで実現し(図4)、毎秒256ギガビット(シンボルレートとして128ギガボー)の多値電圧信号生成に成功しました(図5)。現在広く使われている100ギガビットイーサネットは、1レーンあたり毎秒25ギガビットの光信号を4レーン多重して実現しています。今回、高速化(5倍)と多値化(2倍)により、1レーンあたり毎秒256ギガビット(現在の実用化技術の10倍)のデータレートのPAM4信号を生成できる超高速ICの開発に世界で初めて成功しました(図6)。

3.今後の展開

本超高速ICは、これまで世の中で実現が困難であった、高シンボルレート(128ギガボー)の高品質な多値電圧信号を生成できるので、次世代大容量通信システム実現に向けた100ギガボー~128ギガボーの革新デバイス研究開発やシステム検証のための計測器(信号発生器)としての活用が期待されます。また、4レーン多重化することで毎秒1テラビット級の伝送実現につながるなど、高速多値信号が必要とされる様々な分野への展開が期待されます。NTTは、パートナとなる皆さまとのコラボレーションを通じて、超高速ICを用いた新サービスや新産業の創出をめざすと共に、超高速IC技術のさらなる進化をめざします(※7)。

4.技術のポイント

独自の高速DACアーキテクチャ技術と波形高品質化技術を適用して、PAM4信号生成回路を実現しました(図2)。一般にDACでは、生成するアナログ信号のシンボルレートと同じ速度の多ビットのデジタル信号を入力する必要があり、このデジタル入力インタフェースがDAC全体の動作速度を律速していました。また、DACを高速で動作させる場合、DAC内部でのビット間のスキュー(時間ずれ)による波形歪の発生や、クロック信号のデータ信号への漏れによるノイズ発生が問題となっていました。
 本技術では、高速セレクタ回路(SEL)を利用して入力をハーフレート化する独自の高速DACアーキテクチャ技術と、歪補償遅延回路及びノイズ除去バッファによる波形高品質化技術の適用により、動作速度と波形品質を飛躍的に向上させることができます。PAM4信号生成回路を、内製InP-HBTで実現し、毎秒256ギガビットの多値電圧信号生成に成功しました。

図1 短距離光伝送装置の構成例 図1 短距離光伝送装置の構成例

図2 PAM4信号生成回路の構成 図2 PAM4信号生成回路の構成

図3 波形シミュレーション(毎秒200ギガビット) 図3 波形シミュレーション(毎秒200ギガビット)

図4 内製InP HBTとPAM4信号発生チップ 図4 内製InP HBTとPAM4信号発生チップ

図5 超高速PAM4信号生成波形の実測 図5 超高速PAM4信号生成波形の実測

図6 成果の位置付け 図6 成果の位置付け

用語解説

※1DAC(Digital to Analog Converter):
デジタル信号処理回路から信号を出力する際のデジタル信号をアナログ信号に変換する回路です。

※2PAM4(4値パルス振幅変調):
2ビットのデータ(00、01、10、11)を4つのアナログレベルのパルス信号として伝送する強度変調方式です。1ビットのデータ(0、1)を2つのアナログレベルのパルス信号として伝送するNRZ(非ゼロ復帰)符号と比較して、一度に2倍の情報を送ることができます。

※3変調:
信号を送るために波を変化させることをいいます。強度変調は、最も簡単なものは電気の場合を例にとると2値の電圧信号となります。また、多値強度変調は、一度により多くの情報を送ることができるように何段階かの電圧レベルを設定して信号を送る方法です。

※4InP:
インジウム燐。インジウムとリンからなるⅢ-Ⅴ族の化合物半導体。高速性や高出力性が求められるアプリケーション向けの機能を実現する場合に用いられます。

※5HBT(Heterojunction Bipolar Transistor):
ヘテロ接合バイポーラトランジスタ。

※6毎秒1テラビット:
ギガビットの1,000倍の量。現行の100ギガビットイーサの規格では、毎秒25ギガビット×4レーンで毎秒100ギガビットを実現しています。今回の成果は毎秒256ギガビットを達成しており、同様に4レーンを用いることで1テラビットの伝送も可能となります。

※7「先端化合物半導体プロセスを用いた超高速IC技術のオープン化」2017年2月7日プレスリリース:
http://www.ntt.co.jp/news2017/1702/170207b.html

本件に関するお問い合わせ先

日本電信電話株式会社
先端技術総合研究所 広報担当
science_coretech-pr-ml@hco.ntt.co.jp
TEL:046-240-5157

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