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2018年11月20日

日本電信電話株式会社

世界初、光アクセスシステムの性能をつかさどる「帯域割当制御機能」を「ソフトウェア部品化」する実証実験に成功 ~5G時代の多様なサービスに迅速に対応する光アクセスシステムの実現へ~

日本電信電話株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:澤田純、以下 NTT)は、FTTH(Fiber to the Home)サービスで用いられている光アクセスシステムの性能をつかさどる「帯域割当制御(DBA*1)機能」を「ソフトウェア部品化」した局内装置(OLT)プロトタイプ検証機を実現し、サービス要件に応じてDBA機能を入れ替える実証実験に世界で初めて成功しました。本技術により、低遅延性が要求される第5世代(5G)以降のモバイルシステムの基地局収容など、さまざまな用途で共通の光アクセスシステムを用いることが可能となります。
 NTTはこれまでに、将来光アクセスシステムの新コンセプトFASA*2を提唱し、アクセスシステムを構成する機能の部品化について研究開発を進めてきました。今回の検証では、リアルタイム性が高くソフトウェア部品化が難しいとされていたDBA機能を、サービス要件に依存するソフトウェア部と依存しないハードウェア部とに分離し、API*3を介して連携・制御する形で、ソフトウェア部品化に成功しました。本技術を、5Gモバイルシステムと連携する「低遅延光アクセス技術」*4と組み合わせることにより、5G時代の多様なサービスに迅速に対応する光アクセスシステムが実現できます。DBA機能に加え、さまざまな機能のソフトウェア部品化を進めることにより、ハードウェアを大幅に作り直すことなく、ソフトウェア部の開発および入れ替えのみで、多様な要件への低コストかつ迅速な対応が可能となります。
 ソフトウェア部品化を実現するAPIについては、さまざまなパートナーと共通的に使用できるようにするため、Broadband Forumでの標準化にも取り組んでいます。今後も、キャリア・システムベンダ・標準化団体・オープンソースソフトウェア開発団体などと協調し、光アクセスシステムの適用領域の拡充に資する研究開発を進めてまいります。

なお、本成果については、NTT R&Dフォーラム2018(秋)*5およびネットワーク仮想化技術に関する展示会ONF CONNECT*6にて出展発表します。

背景

現在FTTHサービスに利用されている光アクセスシステムは、FTTHサービスに特化した専用装置として開発されており、新たな要件を持つ別のサービスに適用するには、装置(主にOLT)全体の開発が必要になるなど、迅速な対応が困難で、また、専用装置のため利用される数量が少ない場合にはコスト削減が難しいという課題がありました。一方、従来より多くの基地局を設置する必要のある5G以降のモバイルネットワークを効率的に構築するために、光アクセスシステムによる基地局収容が期待されています。
 NTTでは2016年から、将来アクセスネットワークの新コンセプト「FASA(ファーサ)」を提唱し、要素技術検討および共通仕様化に向けた研究開発を進めてきました。FASAでは、アクセスシステムを構成する機能を徹底的に部品化し、それらを自由に組み合わせることによって、サービス品質を維持しながら、新たに必要な機能をサービス要件に応じて柔軟に、かつ迅速に組み込むことを可能にすることをめざしています。

図1.サービス要件に応じてソフトウェア部品化した帯域制御(DBA)機能を入れ替えるイメージ 図1.サービス要件に応じてソフトウェア部品化した帯域制御(DBA)機能を入れ替えるイメージ

研究開発の内容および成果(図1)

今回、FASAの部品化技術において、光アクセスシステムの適用領域を格段に拡充する「DBA機能のソフトウェア部品化」を実現しました。さらに、同機能の複数のソフトウェア部品を入れ替え可能とするAPIを実装したOLTプロトタイプ検証機を使い、サービス要件に応じて同機能を入れ替える実証実験に世界で初めて成功しました。本実証実験により、モバイル用・工場用など複数の「DBA機能のソフトウェア部品」を用意し、ソフトウェア部品を入れ替えることで仕様を変更し、異なるサービスに迅速に適用できることを示しました。

今回の成果・技術のポイントを以下に示します。

1)光アクセスシステムの適用領域を格段に拡充する「DBA機能のソフトウェア部品化技術」

オープンソースソフトウェア(OSS)団体Open Networking Foundation(以下、ONF)や標準化団体Broadband Forum(以下、BBF)などで、光アクセスシステムの部品化に関する様々な議論・検討が行われていますが、サブミリ秒オーダでの高速処理が必要なDBA機能の部品化は、実現が困難なため部品化のスコープに入っていませんでした。しかしながら、当研究所では、光アクセスシステムの性能をつかさどる同機能を部品化することにより抜本的な光アクセスシステムの柔軟性向上が期待できると考え、要素技術検討を進めてきました。今回、DBA機能をサービス要件に依存するソフトウェア部と依存しないハードウェア部とに分離し、APIを介して連携・制御することによりソフトウェア部品化に成功しました。今回実現したAPIについては、さまざまなパートナーと共通的に使用できるものとするため、BBFでの標準化にも取り組んでいます。

2)サービス要件に応じてDBA機能を入れ替える実証実験に世界で初めて成功

今回、上記APIを実装した2つの異なる構成のOLTプロタイプ試作機により、光アクセスシステムの利用シーンに応じてソフトウェア部品化したDBA機能を入れ替える実証実験を行いました。ボックス型OLTは、通信事業者の収容局内などの環境下で用いることを想定しており、従来のFTTHサービスに加え、低遅延光アクセス技術との組み合わせにより、低遅延要求の厳しい5Gモバイルシステムなどへの適用が期待されます。モジュール型OLTは、従来のOLTの機能のうち、ハードウェアによる実現が必須となる機能のみを小型のモジュールに収めたもので、ソフトウェアで実現可能な機能を配置した汎用サーバと組み合わせて利用します。スモールスタートが可能となるため、工場および大学・オフィスビル内などの構内LAN(Local Area Network)などへの適用が期待されます。今回の実証実験では、モバイル用・工場用など複数の仕様の異なる「DBA機能のソフトウェア部品」を用意し、それらを入れ替えることで柔軟にシステムの仕様を変更し、異なるサービスへ迅速に適用する実証実験に成功しました。本技術に加え、アクセスシステムを構成する各機能のソフトウェア部品化を進めることにより、新たなサービス要件に応じてOLTをハードウェアレベルから大幅に作り直すことなく、さまざまな用途で共通の光アクセスシステムを用いることが可能となります。

今後の展望

今後、今回実現した「帯域割当制御(DBA)機能のソフトウェア部品化」において、同機能の入れ替えを可能にするAPI仕様の国際標準化に向けて引き続き活動していきます。また、世界中のキャリア・システムベンダ・標準化団体・OSS団体と協調し、DBA機能以外のソフトウェア部品化に取り組んでまいります。これらの取り組みにより、多様なサービスに迅速に対応する光アクセスシステムの実現をめざします。

用語解説

*1DBA
Dynamic Bandwidth Assignment。ポイントツーマルチポイント型の光アクセスネットワークにおいて、多元接続される宅内装置(ONU)からの上り信号の衝突回避を実現するために、局内装置(OLT)により各ONUからの上り信号の送信タイミングと割当て帯域量をスケジューリングする帯域割当制御機能のこと。

*2FASAFlexible Access System Architecture。「将来アクセスシステムの新コンセプトFASAを提唱」
NTTニュースリリース 2016年2月8日 http://www.ntt.co.jp/news2016/1602/160208a.html
(FASAホームページ:サイトURL http://www.ansl.ntt.co.jp/j/FASA/index.html (別ウインドウが開きます)

*3API
Application Programming Interface。部品間で情報をやりとりするためのインタフェース仕様。

*4NTTニュースリリース2018年2月14日「5Gモバイルシステムと連携する低遅延光アクセス技術を開発・実証」
http://www.ntt.co.jp/news2018/1802/180214a.html

*5NTT R&Dフォーラム2018(秋)
2018年11月29日・30日、NTT武蔵野研究開発センタ(東京都武蔵野市)にて開催。。

*6ONF CONNECT
2018年12月4日~6日、米国サンタクララにて開催。ネットワーク仮想化技術の普及・促進を推進するOSS(Open Source Software)開発団体ONF(Open Networking Foundation)が主催する展示会。

FASAは、NTTの登録商標です。

本件に関するお問い合わせ先

NTT情報ネットワーク総合研究所
企画部 広報担当
TEL:0422-59-3663
Email:inlg-pr-pb-ml@hco.ntt.co.jp

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