2018年11月26日
消防庁消防大学校消防研究センター
日本電信電話株式会社
株式会社NTTデータ
消防庁 消防大学校 消防研究センター(所在地:東京都調布市、所長:長尾 一郎、以下消防研究センター)、日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:澤田 純、以下NTT)、株式会社NTTデータ(本社:東京都江東区、代表取締役社長:本間 洋、以下NTTデータ)は、2018年2月から約3年間で救急ビッグデータを用いた救急自動車最適運用システムの共同研究を実施しています。
近年、救急車の現場到着時間・病院収容時間が延伸していることを踏まえ、この時間短縮を目的に、救急搬送情報、およびG空間情報やモバイル空間統計(注1)等のビッグデータと、消防研究センターおよび消防機関における運用ノウハウ、NTTグループのビッグデータ分析・学習・価値化技術を活用した救急車の最適運用システムの開発をめざし研究を進めており、シミュレーションを通して有効性を確認しました。今冬以降に実証実験を予定しています。
本内容は、2018年11月29日・30日に開催のNTT R&Dフォーラム2018(秋)にて展示予定です。
救急車による傷病者の搬送において、1996年から2016年の20年間に現場到着所要時間(注2)は全国平均で6.0分から8.5分へ、病院収容所要時間(注3)は全国平均で24.4分から39.3分へ延伸しており(注4)、社会的な課題となっています。
消防研究センターでは、現場到着所要時間および病院収容所要時間の短縮を目的に、ビッグデータ、G空間情報等を活用した救急車の最適運用システムの研究開発を行ってきました。
一方、NTTでは、リアルタイムに変化する気象情報、人や車の動態情報をビッグデータとして扱い、それらの分析・学習に基づいた予測技術とその予測結果の活用技術の研究開発を行ってきました。
また、NTTデータは1970年代から救急医療事業を開始し、都道府県単位に整備される救急医療情報システムのうち現在約半数の開発および運用保守を受託しています。これにより、救急現場での患者の搬送先医療機関の決定に関するノウハウ等を培ってきました。
今回の共同研究では、2018年2月から2021年3月までの期間で救急需要と気象条件など関連情報との関係性を分析し、これを踏まえた、リアルタイムな救急需要予測を行い、これに合わせた救急隊の再配置等で、救急車の運用最適化を図り、救急車の搬送時間の短縮をめざします。
救急隊の基本的な業務フローにおいて、現場到着までの時間と搬送先決定に関する時間を短縮する技術と、医療機関搬送時の安全性確保の技術に関する研究開発を以下3テーマで行い、実装の可能性を検証します。
現場到着までの時間短縮に関しては、各種救急活動情報を解析し、傷病者発生を予測します。さらに、この予測結果に対して救急隊の情報を加えた解析を行うことで、傷病者発生確率の高い場所への救急隊の最適配置を検討し、運用効率化の可能性を検証します。
具体的には、時系列データの学習に有効なリカレントニューラルネットワーク(RNN)を用いて市全体の救急需要を予測し、過去の救急搬送実績に基づく地図メッシュごとの確率分布と組み合わせる事で救急需要の期待値の分布を算出し、それらの計算結果に基づいて各救急隊の最適配置を求めました。過去の救急搬送事例のデータや天候などの環境データ、動的人口データなどを用いて予測最適化アルゴリズムを考案し、現実に即した制約条件を加味したシミュレーションにより実データと比較検証した結果、平均現場到着時間の短縮が得られた事でその有効性を確認しました。
搬送先医療機関決定に要する時間の短縮に関しては、救急隊の出動履歴や医療機関の受入履歴等の情報解析を行い、傷病者ごとに時々刻々と変化する各医療機関のリアルタイムな受入可能性を推定します。これにより、医療機関選定における運用効率化の可能性を検証します。
具体的には、受け入れ可能性が高い医療機関を推定するために、ランキング学習を用い、過去の救急搬送事例について、受入病院選定までの経緯を学習し、受入優先度の推定アルゴリズムを考案しました。過去の事例について、本アルゴリズムを用いて複数の病院の受入優先度を推定したところ、過半数の事例で最終的に受け入れた病院を、最初の選定先として示すことができたことで、その有効性を確認しました。
医療機関搬送時の安全性確保に関しては、救急車等の走行情報や地図情報等から、道路の段差・高低差等の道路状況を推定します。これにより、救急隊に対して走行ルートおよびその道路状態の案内を行うことで、傷病者へ負担を与えないスムーズな救急車の運転や、車内での救急救命処置の安全性確保の支援が可能か検証します。
具体的には、NTTが参加している都市ビッグデータによるスマートシティの実現をめざすEUとの共同研究プロジェクトBigClouT(注5)の成果である、慶應義塾大学が測定・蓄積したごみ収集車の走行データを活用して、本共同研究の中で藤沢市内の段差データベースを作成し、そのデータベースに基づいた段差警告システムのプロトタイプを作成し、走行実験によってその警告システムの有効性を確認しました。
各テーマでの予測精度をさらに高めるとともに、フィールド実証を想定した運用システムとしての構築を進めます。12月より(テーマ1:12月から、テーマ2・3:来年度以降)予定している実証実験にて本システムの適用をめざします。
(注1)モバイル空間統計 https://www.mobaku.jp
(注2)119番通報を受けてから現場に到着するまでに要した時間
(注3)119番通報を受けてから病院に収容するまでに要した時間
(注4)消防庁 平成29年度版救急・救助の現況より
(注5)BigClouT http://bigclout.eu
本件に関するお問い合わせ先
報道関係のお問い合わせ先
日本電信電話株式会社
広報室
Tel:03-5205-5550
株式会社NTTデータ
広報部
大島
Tel:03-5546-8051
製品・サービスに関するお問い合わせ先
日本電信電話株式会社
研究企画部門 プロデュース担当
E-mail:advanced-ambulance-ml@hco.ntt.co.jp
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