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2019年6月10日

日本電信電話株式会社

実世界を反映した高精度デジタル情報の掛け合わせによる革新的サービスを創出する「デジタルツインコンピューティング構想」を策定 ~多様な仮想世界の合成により未来社会を創りだすイノベーションプラットフォーム~

日本電信電話株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:澤田 純、以下NTT)は、あらゆる社会・経済が大きな変革を求められている今後の時代に、デジタルトランスフォーメーションによってスマートな社会の実現をめざしています[1]。このたび、パートナーの皆さまと共にその変革を実現するIOWN[2]構想の一つとして、「デジタルツインコンピューティング構想」を策定いたしました。
 この構想は、実世界におけるモノ・ヒト・社会に関する高精度なデジタル情報を掛け合わせることにより、従来のICT技術の限界を超えた大規模かつ高精度な未来の予測・試行や、新たな価値をもった高度なコミュニケーションなどを実現します。それによって、世界中の様々な社会課題の解決や革新的サービスの創出を通じ、スマート社会の実現を加速します。

1.構想策定の背景

これまでNTTは、高速・広帯域・ユニバーサルな通信ネットワークや安心・安全な情報システムの提供を通じて、今日のデジタル社会の実現に貢献してまいりました。この間、電話や電子メールからSNSに至るヒトに関するデジタル化や、地図から情報家電や自動運転に至るモノに関するデジタル化がすすみ、今後はモノ・ヒト・社会などから構成される実世界と、それらを高精度に表現したデジタル情報から構成されるサイバー空間が融合した新たなデジタル社会が到来しようとしています。
それは、実世界とシームレスにつながるサイバー空間上でデジタル情報を用いた大規模かつ高精度な未来の予測・試行が可能となることにより、人知の可能性を一層拡大すると共に、これまでの知識共有や共同作業等のコミュニケーションに、より豊かな感情表現や高度な合意形成・意思決定等の新たな価値が加わる新しい世代のデジタル社会です。
NTTは、パートナーの方々と共にこの新たなデジタル社会を実現するために、「デジタルツインコンピューティング構想」を策定しました。

2.デジタルツインコンピューティングとは(図1)

現在、製造分野等で「デジタルツイン」が注目されてきています。デジタルツインとは、例えば、機械部品のようなモノの形状、状態、製造工程等を計算機内で正確に表現したデジタル情報です[3]。また、ヒトに関しても、医療分野におけるMRIやCTスキャン等から得られるデジタル情報の活用は、既存のデジタルツインの一形態と考えられます。これに対して、私たちが目指す「デジタルツインコンピューティング(Digital Twin Computing、以下DTC)」とは、このデジタルツインを大きく発展させ、実世界を表す多くのデジタルツインに対して交換・融合・複製・合成等の演算(デジタルツイン演算)を行うことにより、モノ・ヒトのインタラクションをサイバー空間上で自由自在に再現・試行可能とする新たな計算パラダイムです。
これまで提唱されてきたデジタルツインは、主にデジタル表現された物理的なモノの制御や観測に用いられています。一方、DTCでは、デジタル化される対象をモノだけではなくヒトにも拡張し、さらにデジタルツイン演算により、サイバー空間上でモノやヒト同士の高度かつリアルタイムなインタラクションが可能となることが大きな特長です。

3.デジタルツインコンピューティングにより実現する未来

この特長をもつDTCを用いることにより、次のような様々な社会課題の解決や革新的サービスの創出が可能となると考えます。

地球・宇宙規模のシミュレーション

地球規模で自然条件(気候、埋蔵資源等)や社会変動(人口・GDP変動等)を再現する大規模なデジタルツイン群を用いてサイバー空間上に仮想社会を構築し、高精度な予測モデルを用いた近未来推定やシミュレーションが行われ、地球規模の資源収支予測に基づいたSDGs政策等に活用されます。また、東京やサンフランシスコなど、実世界における都市のデジタルツインを宇宙空間のデジタルツインと合成し、大気、水、食糧、エネルギー等の収支シミュレーションが宇宙開発に利用されます。

都市の課題発見・解決

都市と住民のデジタルツインを通じて、住民たちの経験や文化・価値観、意識・無意識な希望・不満等を匿名化して集約して、生活者でないと気が付きにくい「危険な交差点」などの都市の潜在的な課題を発見し、さらに集団最適化した解決策を見出します。また、他の都市との相互作用シミュレーションから、類似性あるいは相互補完的で意外な組み合わせとなる「姉妹都市」を創出し、豊かな都市構築のための協力関係が多く作られます。

疾病拡散予測・抑制

感染症の発生に際し、ヒトのデジタルツインから得られる市民の行動パターンや人間関係マップと、地理・交通情報等を組み合わせた仮想社会を構築し、高精度な感染症の拡散予測を行います。さらに予測結果を元に、交通流/人流のコントロール、学級閉鎖・遠隔学習の早期実施判断、最適な病院の自動検索・予約等を行うことで、リアルタイムかつアクティブな感染拡散の予防・抑制が行われます。

個人の多面的意思決定

自らの業務スキルをデジタルツインに記録させ、日程調整、会議室予約等の日常業務を自らのデジタルツインに行わせます。また、自らのデジタルツインを複製し、過去の自分や、様々な立場、前提知識等を変化させ、実世界の自分とデジタルツインと対話し、様々な問題の解決を試みます。さらに、様々な自らのデジタルツイン同士がサイバー空間上で超高速に議論しあい、解決策や自分では気づくことができない観点を短時間で見つけ出します。

4.デジタルツインコンピューティングを駆動するプラットフォーム(図2)

DTCは、(1)デジタルツインの生成に必要となる実世界のデータ収集と、プラットフォーム上のアプリケーションがデジタルツインを用いて生成したデータを実世界にフィードバックする「サイバー/フィジカルインタラクション層」、(2)実世界から収集したデータを用いてデジタルツインを生成、保持する「デジタルツイン層」、(3)様々なアプリケーションがデジタルツインを利用するためのフレームワークを提供する「デジタルワールドプレゼンテーション層」、(4)デジタルワールドプレゼンテーション層を用いてアプリケーションを実現する「アプリケーション層」の4層から構成されるプラットフォームとして実現されます。
 DTCにおいては、ヒトのプライバシーやモノの所有者の意思が尊重され、それらに関わる情報は慎重に扱われなければなりません。そこで、本プラットフォームの利用に必要となるプライバシーを守るための機構を備えます。

5.今後について

デジタルツインコンピューティング構想を含むIOWNの実現には、社会科学、人文科学、自然科学、応用科学、学際領域等、様々な研究・技術分野の集結が必要不可欠です。NTT研究所では、このような幅広い研究・技術分野の専門家やグローバルパートナーと連携しながら、IOWN構想の実現を目指していきます。尚、デジタルツインコンピューティング構想の詳細については、以下のホワイトペーパーをご参照ください。

日本語版ホワイトペーパー http://www.ntt.co.jp/svlab/DTC/whitepaper.html
英語版ホワイトペーパー http://www.ntt.co.jp/svlab/e/DTC/whitepaper.html

参考文献:

[1]NTTグループ中期経営戦略『Your Value Partner 2025』

[2]Innovative Optical and Wireless Network(IOWN)

[3]Dr. Michael Grieves, Digital Twin: Manufacturing Excellence through Virtual Factory Replication, 2015

画像 図1 デジタルツインコンピューティング構想のコンセプト

画像 図2 デジタルツインコンピューティングのプラットフォーム・アーキテクチャ

お問い合わせ先

日本電信電話株式会社

研究企画部門
iown-pr@hco.ntt.co.jp

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