2020年2月25日
日本電信電話株式会社
離れた場所のイベントを会場にいるかのようにリアルタイムで体験するための通信技術である、超高臨場ライブ体験※1(以下「ILE」:Immersive Live Experience)の国際標準に準拠した、日本初の国内標準が2020年2月20日、日本国内の標準開発機関である一般社団法人情報通信技術委員会※2(以下「TTC」:The Telecommunication Technology Committee)において制定されました。
日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:澤田純、以下「NTT」)はこれまで、国連の専門機関であるITU-T(国際電気通信連合 電気通信標準化部門)においてILEの国際標準化に取り組み、2019年11月29日には、ILEに関するメディア伝送方式を定めた国際標準ITU-T H.430.4が制定されました。今回は、ILEに関するITU-T国際標準に準拠する日本初の国内標準制定となります。
NTTでは、国内外のプロリーグとの連携も進んでおり※3、本標準化によりパートナーとの連携が加速されることが期待されます。
NTTはこれまでに、超高臨場感を実現する通信技術Kirari!の研究開発を進めてきました。Kirari!を利用すると、例えば離れた場所のスポーツイベントをあたかもその場所にいるかのように再現するために選手の位置や大きさなどの空間情報を映像や音声と一緒に伝送することができ、超高臨場感ライブビューイングやセキュリティ分野における広視野角遠隔監視といったサービスを実現できます。
NTTは、このような超高臨場感をリアルタイムに体験するための通信技術による新たな価値創造に向け、さまざまなパートナーと共同でILEの名称でITU-T SG16にて研究課題を立ち上げて標準化に取り組み、これまでに要求条件などの基本的な事項の勧告化を推進してきました。
また、ITU-Tでの国際標準化活動と並行して、TTCでの日本国内標準化活動も進めてまいりました。
これまでに制定された、ILE関連のITU-T及びTTCの標準を表1及び表2にそれぞれ示します。また、図1にILEの基本アーキテクチャを示します。一連の標準では、通信技術であるILEで実現されるサービスの全体像を明確化するためのアーキテクチャや、個々の具体的な通信技術の要件を規定しています。
H.430.1ではILEで実現されるサービスに求められる要件が、H.430.2ではILEで実現されるサービスのアーキテクチャフレームワークが、それぞれ規定され、これら2勧告によってサービスの基盤となる概念が明確化されました。
H.430.3ではサービスシナリオが類型化され、それぞれにユースケースが例示されており、ILEサービスによって可能となる新しい体験を具体的にイメージしやすくなっています。
H.430.4では具体的な通信技術として、映像、音声に加え物体の位置等の空間情報も同期伝送するためにMMT※4を拡張した、メディア伝送方式が規定されています。
NTTはこれら国際標準の日本でのさらなる普及促進を図るため、TTCでの日本国内標準化活動を推進し、日本初のILEの国内標準となる、JT-H430.2が制定されました。
番号 | タイトル | 制定年月 |
---|---|---|
H.430.1 | Requirements for immersive live experience (ILE) services (ILEのための要求条件) |
2018/8 |
H.430.2 | Architectural framework for immersive live experience (ILE) services (ILEのためのアーキテクチャフレームワーク) |
2018/8 |
H.430.3 | Service scenario of immersive live experience (ILE) (ILEのサービスシナリオ) |
2018/8 |
H.430.4 | Service configuration, media transport protocols, signalling information of MPEG media transport for immersive live experience(ILE)systems (ILEのためのサービス構成、メディア伝送プロトコル、MMTシグナル情報) |
2019/11 |
番号 | タイトル | 制定年月 |
---|---|---|
JT-H430.2 | 超高臨場ライブ体験(ILE:Immersive Live Experience):アーキテクチャフレームワーク | 2020/2 |
図1:ILEの基本アーキテクチャ
これまで、ILEの通信方式を統一する標準が存在しませんでしたが、一連の標準制定により、アーキテクチャ等のシステム構成が共通化され、映像、音声に加え位置などの空間情報についても本会場側と視聴会場側の各システム間で共通のフォーマットで通信が可能となります。
これによって、映像、音声だけでは難しかった空間的位置等も含めた高い再現性を実現することができ、これまで以上の臨場感をリアルタイムに体験することができるようになります。またこれらの付加情報を利用することで、位置調整などの従来は人が行っていた処理を自動化することが可能となり、管理運用コストの削減も期待できます。
今後活発になっていくことが想定されるスポーツイベントのパブリックビューイングや、セキュリティ分野での広視野角遠隔監視等において、本標準で規定される通信方式を採用したシステムの活用を進めていきます。
また、さまざまな国際標準化団体、日本国内標準化団体等と連携し、本通信技術の普及をめざします。
※1超高臨場ライブ体験(Immersive Live Experience:ILE)
センサ情報収集、メディア処理、メディア伝送、メディア同期、メディア表示などのマルチメディア技術の組み合わせで実現された高臨場感により、あたかも遠隔の視聴会場の観客がイベントの本会場に入り込み、観客の目の前で実際のイベントを見ているかのように、本会場と視聴会場の両方の観客の感覚を刺激する共感視聴体験。
※2一般社団法人情報通信技術委員会(TTC)
国内の情報通信ネットワークに関する標準化を扱うSDO(標準開発機関)。
https://www.ttc.or.jp/
※3NTTニュースリリース
2019年3月14日「新たなスポーツ映像体験の提供と映像関連ビジネスの更なる成長をめざし、日本初の本格的スポーツデジタルアセットハブ"Jリーグ FUROSHIKI"(Jリーグふろしき)の構築を推進」
https://www.ntt.co.jp/news2019/1903/190314a.html
2019年9月4日「MLBとNTTがテクノロジーパートナーシップを締結」
https://www.ntt.co.jp/news2019/1909/190904a.html
※4MMT(MPEG Media Transport)
国際標準化団体である、ISO/IEC JTC 1/SC 29/WG 11 MPEGで制定するメディアトランスポート規格。IPを含む多様なネットワークに柔軟に対応できるトランスポート規格をめざし、2009年より検討開始。2014年6月、コアパート(23008-1)が国際標準化。
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