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2020年4月16日

日本電信電話株式会社

IOWN構想の実現に向けた技術開発ロードマップ

日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:澤田 純、以下「NTT」)は、IOWN構想(アイオン:Innovative Optical & Wireless Network)の実現に向けて、具体的な技術ロードマップを策定し、技術開発を推進してまいります。IOWNを構成する主要技術について、2021年よりリファレンス方式を順次実現し、IOWN Global Forum, Inc. (以下「IOWN GF」)での検討を加速させるとともに、パートナー企業との有効性検証を早期に実施してまいります。

1.NTTの取り組みと開発ロードマップ

IOWN GFホワイトペーパー※1で示された4つのTechnical Directionsに関連して、下記の技術開発に取り組みます。図1に技術開発ロードマップを示します。(西暦はリファレンス方式の実現時期)

※1https://iowngf.org/white_papers/innovative-optical-and-wireless-network-global-forum-vision-2030-and-technical-directions/当該ページを別ウィンドウで開きます

(1)大容量低遅延データ通信方式(Layer4/Layer3※2に該当する通信方式の高速化:2021年、光/無線アクセス大容量化:2023年)

オールフォトニクス・ネットワークの大容量性を最大限に活かすため、パケット伝搬遅延による最大可能データ転送レートの低下を軽減しながら、従来のTCP/IP方式と比べて大容量データの転送時間を大幅に短縮する高速Layer4/Layer3通信方式を開発します。また、これによる通信量のさらなる増大に対応するための光や無線アクセスの大容量化方式の開発にも取り組みます。

※2ISO(International Organization for Standardization「国際標準化機構」) OSI参照モデルのトランスポート層(Layer 4)とネットワーク層(Layer 3)

(2)データセントリック型ICTインフラの実現(2021年)

コグニティブ・ファンデーションの構成要素ひとつとして、センサノードやAI分析ノードなどのノードの間の大容量データの交換・共有を低遅延に、効率的に実現するコグニティブファウンデーションデータハブ(以下「CFデータハブ」)を開発します。また、このデータハブを中心として多種多様なネットワーク、コンピューティング手段を連携させるデータセントリックアーキテクチャを推進していきます。詳細は2(1)をご参照ください。

(3)多地点、超高速、低遅延クラウドコンピューティングの実現(2021年)

複数のデータセンタがシームレスにまたがったクラウドコンピューティングインフラを実現するため、オールフォトニクス・ネットワーク上の通信の高速性、低遅延性を活かした高速分散コンピューティング方式を開発します。

(4)ICTインフラにおけるエネルギー効率の飛躍的向上(2023年)

コンピューティングのモジュール間、パッケージ間、チップ間のデータ伝送を段階的にこれまでの電気ベースから光ベースへと置き換えながらデータ伝送の経路を簡略化することにより大幅なエネルギー効率の向上を実現するフォトニックディスアグリゲーテッドコンピューティング技術を開発します。詳細は2(2)をご参照ください。

図1 IOWN技術開発ロードマップ 図1 IOWN技術開発ロードマップ

2.主な取り組みの概要

(1)CFデータハブとデータセントリックアーキテクチャ

CFデータハブは、広域に分散配備された複数のサーバーからなるデータ交換・共有インフラです。ユーザーノードは、最近傍のサーバーにアクセスすることにより、高い最大可能転送レートでデータを転送することが可能となります。さらに、CFデータハブはブローカー機能や共有データ領域を提供し、多対多のノード間のデータ共有を効率的に実現します。
 ユーザーノードからCFデータハブへのアクセスは、IP/非IPを含めて、多様な通信方式を可能とします。これにより、従来のIPを共通レイヤとするパラダイムから脱却し、多様な通信方式に対応可能なデータ交換・共有手段を中心として、様々なシステムを連携させる「データセントリック」という新しいパラダイムを実現します。特に、IOWN上のノードからのアクセスについては、1(1)で述べた高速なLayer4/Layer3通信方式を用いるとともに、機能別ネットワークを用いることで可用性を確保します。

  • 図2 CFデータハブとデータセントリックアーキテクチャ
  • 図2 CFデータハブとデータセントリックアーキテクチャ
図2 CFデータハブとデータセントリックアーキテクチャ

(2)フォトニックディスアグリゲーテッドコンピューティング

フォトニックディスアグリゲーテッドコンピューティングは、従来のサーバーボックス指向のコンピューティングインフラからフォトニクスベースのデータ伝送路に基づくサーバボックスレスなコンピューティングインフラへパラダイムシフトさせる新しいコンピューティングアーキテクチャです。
 メモリやAI演算デバイス等のモジュールそれぞれに光のデータI/O(入出力)を持たせ、これを大容量で高速な光データネットワークにつなげることで、柔軟性の高いコンピューティングインフラを実現し、コンピューティング要求に応じて動的にモジュールを結合させることにより、飛躍的な性能の向上を実現します。NTTの光電融合技術を用いて、モジュール内部についても、パッケージ間、チップ間のデータ伝送処理を段階的に光に置き換えながら、エネルギー効率の飛躍的な向上を実現します。

  • (a) これまで(物理サーバーオリエンテッド)
    (a) これまで(物理サーバーオリエンテッド)
  • (b) ディスアグリゲーテッドコンピューティング
    (b) ディスアグリゲーテッドコンピューティング
図3 ディスアグリゲーテッドコンピューティング

3.実現される世界

1に示す本ロードマップに従い、データセントリックコンピューティング技術、ディスアグリゲーテッドコンピューティング技術などをIOWN構想に取り込んでいくことにより、Smart World時代のナチュラルなサイバー空間の創造を加速していきます。
 たとえば、大容量データを低遅延に伝達しながらAI制御を行うことにより、ヒトの知覚能力、反射能力を超越したシステム制御を実現します。また、多数のAIシステムの協調により、社会規模の全体最適化や大規模シミュレーションを通じた未来予測を実現します。
 また、CFデータハブを通じて多数のノードの間の連携が加速され、複数のAIサービスを組み合わせながら新しいAIサービスを作るようなマッシュアップ型AIサービス開発も実現され、IOWNを基盤としたSmart World時代のソーシャル・キャピタルが形成されていきます。
 また、これらを支えるコンピューティングインフラの超低消費電力化による持続可能な社会の実現にも貢献していきます。

今後の取り組み

今回策定したロードマップに従い、前述した様々な技術について2021年中にリファレンス方式を策定するとともに、IOWN GFに提案して仕様整備を進めていきます。また、その他のコア技術についても早期にリファレンス方式の開発を行うとともに、様々なユースケースについて多くのパートナーの皆様と有効性の検証を進める予定です。

本件に関する報道機関からのお問い合わせ先

日本電信電話株式会社

広報室
ntt-cnr-ml@hco.ntt.co.jp

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