2021年3月 5日
日本電信電話株式会社
日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:澤田 純、以下「NTT」)が研究開発・普及推進した「プッシュプル締結方式を採用したフィジカルコンタクト接続による光ファイバコネクタ」の開発(1986年)、普及の功績が、技術分野における世界最大の学会であるIEEE※1より、世界的に権威のある「IEEEマイルストーン」に認定されました。
今後も、NTTでは、世界をリードする技術を通じて、社会や産業、学術の発展に寄与していくとともに、安心・安全で豊かな社会の創造に貢献していきます。
「IEEEマイルストーン」とは、IEEEにより、電気・電子・情報・通信分野における画期的な技術革新の中で、開発から25年以上にわたり国際的に高い評価を受けてきた技術革新の歴史的業績を称える表彰制度として1983年に設立されたものです。
過去の受賞例では、19世紀における電話やエジソン研究所※2、マルコーニの無線通信※3など、近代化の基盤となった歴史的施設・技術や、20世紀では、テレビ、コンピュータ、インターネットなど情報通信を支える技術が認定されています。
なお、NTTのIEEEマイルストーン認定は、KDDI株式会社と共同で開発・普及推進した「G3ファクシミリの国際標準化(1980年)」の功績(2012年4月※4)、NTTが研究開発・普及推進した「高能率音声符号化に用いられるLSP(線スペクトル対)方式の開発、普及(1975年)」の功績(2014年5月※5)、古河電気工業株式会社、住友電気工業株式会社、株式会社フジクラと共同で開発・普及推進した「高品質光ファイバの量産製造技術「VAD法(気相軸付け法)」(1977年-1983年)」の功績(2015年5月※6)に続く4件目の認定となります。
従来に無い優れた光学特性を実現するフィジカルコンタクト接続技術を1986年に発明し、これをベースとしてプッシュプル締結方式を採用した光学特性、高密度実装性に優れた光ファイバコネクタであるSC形光コネクタ(単心用)、MPO形光コネクタ(多心用)をそれぞれ1986年、1991年に実用化しました。光接続のベースとなっているフィジカルコンタクト接続技術は、国際標準(IEC 61755-3-1,IEC 61755-3-31,-32)として様々なタイプの光コネクタに用いられワールドワイドに普及しています。また、これらの礎を築いたSC形光コネクタ、MPO形光コネクタは現在においても基幹網・アクセス網からデータセンタに至る光ファイバネットワークにおいて広く用いられています。
光通信システムの伝送容量の増大に伴いより、1980年代には反射が少なく損失ばらつきの小さい光コネクタが求められる状況となってきていましたが、当初の光コネクタで要求性能を実現するには、フェルール端面に屈折率整合剤を塗布する必要があり現実的には適用が困難でした。
1984年ころから基幹伝送系だけでなくアクセス系への光の導入の要求が高まり、低コストで高密度実装が可能な光コネクタが必要となってきました。また,アクセス系では多心光ファイバケーブルを使用するため、シングルモード光ファイバを多心一括で接続できる光コネクタも必要な状況となってきました。
1986年に開発されたSC形光コネクタ(図1)、1991年に開発されたMPO形光コネクタ(図2)は、フィジカルコンタクト接続技術をベースとしプッシュプル締結方式を採用することにより、屈折率整合剤無しで反射戻り光を信号光の1000分の1程度に抑え0.5dB以下の安定した接続損失を実現するとともに、高密度な光配線盤を実現いたしました。
単心光コネクタにおけるSC形光コネクタの世界シェアは約30%を占めています。また、MPO形光コネクタは標準的な多心PC光コネクタとして唯一普及しているコネクタです。
1985年に日本縦貫光ファイバケーブル網が完成し本格的に光通信時代の普及が始まりましたが、ここでは、ねじ締結方式FCコネクタ(1979、NTT)が用いられていました。また、多心光ファイバケーブルの光ファイバテープ心線どうしの一括接続には、MTコネクタ(1986、NTT)が用いられていました。MTコネクタは地下設備など着脱回数の少ないクロージャやキャビネットにおいて、屈折率整合剤により反射戻り光を抑え使用されていました。
1986年にNTTが開発したSC形光コネクタは、フィジカルコンタクト接続技術をベースとし屈折率整合剤無しに反射戻り光を信号光の1000分の1程度に抑え0.5dB以下の安定した接続損失を実現しました。また、プッシュプル締結方式を採用することにより、4倍の高密度実装を実現しました。プッシュプル締結構造はラッチによる結合となるため、プラスチック成形によるハウジング部品製造が可能であり大幅な低コスト化も実現しています。
1991年にNTTが開発したMPO形光コネクタは、フィジカルコンタクト接続技術をベースとし屈折率整合剤無しに優れた光学特性を実現しています。従来のMTコネクタはクリップにより結合させる構造のため着脱の容易性が求められる装置間などの接続には不向きでしたが、MPO形光コネクタはプッシュプル締結方式を採用し、また屈折率整合材も不要のため幅広いシーンでの適用が可能となりました。
※1The Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc.の略。世界160ヶ国以上から40万人近くの会員をもつ世界最大の学会。ニューヨークに本部がありコンピュータ、バイオ、通信、電力、航空、電子など様々な技術分野で指導的な役割を担っています。
※2エジソンらが白熱電球、発電機、レコードなど数々の新技術を開発した研究所。
※31895年にマルコーニが世界で初めて無線電信の実験に成功。無線通信の幕開けとなった。
※4報道発表 http://www.ntt.co.jp/news2012/1204/120405a.html
※5報道発表 http://www.ntt.co.jp/news2014/1405/140522a.html
※6報道発表 報道発表 https://www.ntt.co.jp/news2015/1505/150521a.html
図1:SC形光コネクタ
図2:MPO形光コネクタ
(写真1)
※銘板記載内容
Physical Contact Push-Pull Technology for Fiber Optic Connectors, 1986
In 1986, Nippon Telegraph and Telephone Corp.(NTT)invented the physical contact connection technology that advanced performance and reliability of fiber optic connectors. NTT developed Single-fiber Coupling(SC)and Multifiber Push-On(MPO)connectors; their compactness and simple push-pull operation were major advantages. Widely adopted by carriers and data centers since 1990, this technology facilitated the construction of systems for near light-speed, digital, global communications.
(日本語訳)
プッシュプル締結方式を採用したフィジカルコンタクト(PC)接続による光ファイバコネクタ、1986年
1986年、日本電信電話株式会社(NTT)は、光ファイバコネクタの性能と信頼性を支える基礎となる物理接触(PC)接続技術を発明した。この技術を元にしたプッシュプル締結方式を採用したSCコネクタ及びMPOコネクタは、高密度実装性と操作性に優れ、1990年以降、世界中の通信事業者やデータセンタ事業者に採用されており、今日の高速デジタル光ファイバネットワークの構築に多大な貢献を果たしている。
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