2021年10月18日
日本電信電話株式会社
日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:澤田 純、以下「NTT」)は、国立大学法人 東京工業大学(以下、東工大)と共同で、再帰反射アレーの一種であるバン・アッタ・アレーを用いた双方向通信を世界で初めて※1実験的に確認しました。
ミリ波・テラヘルツ波といった高周波数帯を用いる無線通信では、信号の伝搬損失が大きいためアレー化した多素子アンテナの各素子を位相制御して鋭い指向性を形成し、通信相手に常にアンテナ指向性の最大方向を向ける必要があります。このため、通信相手が移動する場合には、アンテナ指向性を追従させるための信号処理・指向性制御機構が必要でした。
一方、再帰反射アレーは、電波の到来方向に対して制御レスでアンテナ指向性を形成し、電波を入射方向に反射できる特徴を有しています(図1)。このため、再帰反射アレーを無線通信に用いることが出来れば、従来の無線基地局・端末が備えていたビーム選択機能(あるいは電波の到来方向推定機能)やアンテナ指向性制御機能を不要にできる可能性を秘めています。
再帰反射アレーには様々な種類がありますが、バン・アッタ・アレーはその中でも最も小型で構成が簡易という特徴を有しています。
今回着目したバン・アッタ・アレーは、RFIDへの応用や電力伝送用途での活用は研究・報告されていた※2ものの、通常無線装置で行われる双方向通信への適用については未検討でした。
そこで、NTTと東工大の西方敦博准教授の研究室では広範な無線装置への応用をめざして、バン・アッタ・アレーを用いた双方向通信の原理確認を行いました。
バン・アッタ・アレーを用いて通信する場合、図2に示すように無線機Aではバン・アッタ・アレーに向けて送信される電波(A→B)に情報を載せることで無線機Bに情報を届ける一方、無線機Bでは再帰反射の過程で情報を重畳する※3ことで無線機Aへの情報伝送(B→A)が可能となります。無線機Bからの信号を受けた無線機Aでは、結果的に自身が送信した信号に無線機Bで加えた信号(情報)を重畳したものが受信されるため、無線機Aは受信信号から自身が送信した情報(電波(A→B))を除去することで無線機B→無線機Aに送りたかった情報を取り出すことができます。
今回、図3のような3×4素子のモノポールアンテナを用いてバン・アッタ・アレーを試作し、無線機Aにおいて実験的に無線機Bからの情報が復元できることを実験的に確認しました。
本成果により、従来必須であったアンテナ指向性制御のための信号処理や制御機構を不要にできれば、無線装置の簡易化・低消費電力化につながると期待されます。今後は、広範な無線装置への応用に向けて、装置化等の実用化研究を進める予定です。
図1.バン・アッタ・アレー単体での動作イメージ
図2.バン・アッタ・アレーを用いた通信方式の動作
図3.試作したモノポールアンテナを用いたバン・アッタ・アレー
※1NTT・東工大 独自調査による
※2Chan, P., and V. Fusco. "Bi-static 5.8 GHz RFID range enhancement using retrodirective techniques." Microwave Conference (EuMC), 2011 41st European. IEEE, 2011.
※3無線機Bでの変調方式は、OOK(On Off Keying)です。なお、パッチアンテナを用いたバン・アッタ・アレーでBPSK(Binary Phase Shift Keying)について同様の原理を確認しています。
本件に関する報道機関からのお問い合わせ先
NTT情報ネットワーク総合研究所
企画部 広報担当
inlg-pr-pb-ml@hco.ntt.co.jp
TEL:0422-59-3663
ニュースリリースに記載している情報は、発表日時点のものです。
現時点では、発表日時点での情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承いただくとともに、ご注意をお願いいたします。
NTTとともに未来を考えるWEBメディアです。