検索パネルを開く 検索パネルを閉じる メニューを開く メニューを閉じる

2021年11月12日

日本電信電話株式会社
リージョナルフィッシュ株式会社

海洋の二酸化炭素減少をめざしNTTとリージョナルフィッシュが実証開始
~世界初、生態系への影響がない環境下でゲノム編集技術を藻類と魚介類の炭素循環に応用~

日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:澤田 純、以下「NTT」)とリージョナルフィッシュ株式会社(本社: 京都府京都市、代表取締役社長: 梅川 忠典)は、環境負荷ゼロと経済成長を同時実現する、新たな環境エネルギービジョン 「NTT Green Innovation toward 2040※1」の実現に向け、藻類と魚介類にゲノム編集技術※2を適用して、海洋中に溶け込んだ二酸化炭素量を低減させる二酸化炭素変換技術の実証実験を開始しました。
 本技術は、海洋中の二酸化炭素を吸収する藻類と、それをエサとする魚介類による炭素循環にゲノム編集技術を応用した環境負荷低減技術であり、陸上養殖のプラットフォームを活用した拡散防止措置を講ずることで、ゲノム編集体を拡散することなく、二酸化炭素低減効果を実社会に提供することが期待できます。本技術の実証を進めることにより、温室効果ガスの排出、実質ゼロに貢献することをめざします。
 なお、本技術については2021年11月16日~19日に開催予定の「NTT R&Dフォーラム ― Road to IOWN 2021」※3にて紹介します。

1.背景

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書では、地球上から大気中に排出される二酸化炭素の総排出量(8,484.7億t・CO2/年)のうち、海洋からの排出量は33.7%(2,860億t・CO2/年)を占めており、人間の活動4.8%(403.3億t・CO2/年)の約7倍となっております(図1)。また、大気中からの二酸化炭素の吸収割合においても、海洋は34.6%(2,933.3億t・CO2/年)を占めており、そのほとんどが湿地や海藻藻場の海洋生物によるものです。そのため、海洋における二酸化炭素の排出量を減少させ、吸収量を増加させる技術は、大気中に滞留する二酸化炭素の総量を削減するための有効且つ新たな手段になりえると考えられます。

図1. 地球上における二酸化炭素循環

2.技術の特徴と実証モデル

藻類と魚介類による通常の食物連鎖においても、大気中の二酸化炭素は海洋中に吸収されます。しかし、人間活動や森林の農地転換や都市化などにより、大気中に排出される二酸化炭素量が年々増加しているため、現状以上に大気中に滞留する二酸化炭素量を低減することはできません。そこで、NTTは藻類の二酸化炭素固定※4量を増加させるゲノム編集技術の研究開発に取り組み、リージョナルフィッシュ株式会社は魚介類の体内に固定する炭素量を増加させるゲノム編集技術の研究開発に取り組みます。この2つのゲノム編集技術を藻類と魚介類の食物連鎖に適用することにより、海洋における炭素固定量を相乗的に増加させる二酸化炭素変換技術の確立をめざします。
 カルタヘナ法※5により、遺伝子組換え生物等を使用する際の規制措置が定められており、生物多様性への悪影響を未然防止することが求められています。ゲノム編集技術を適用した生物はカルタヘナ法の対象外であるものの、制度の趣旨を踏まえて、ゲノム編集技術を適用した生物を実環境へ放出させない拡散防止措置を施した陸上養殖プラットフォームを活用します。これにより、海洋生物へ影響を与えることなく、海洋中の二酸化炭素量のみを低減する実証モデル(図2)を構築しました。
 本実証実験では、藻類による二酸化炭素固定量を最大化する遺伝子や魚介類への給餌に適した培養条件などを明確化していきます。魚介類に対しても、筋肉などの軟組織や骨・貝殻などの硬組織において、二酸化炭素固定量を最大化するためのゲノム編集方法や育種方法を検討します。さらに、藻類及び魚介類への二酸化炭素固定量の定量的評価方法を確立するための検討も進めます。

図2. ゲノム編集技術を応用した海洋中の二酸化炭素低減技術

3.今後の展望

今後は、本技術の実証試験を重ねることで、藻類と魚介類の食物連鎖による二酸化炭素固定量を最大化させ、海洋中に溶け込んだ二酸化炭素量を低減させる二酸化炭素変換技術の実用化をめざします。将来的には、本技術を魚類や農作物の生産量増や高品質化にも適用することも検討します。
 環境負荷ゼロは、1つの要素技術のみでは実現できないため、様々な環境負荷低減技術を確立し、それらの技術を適材適所に組み合わせて、効果を最大化することが重要です。IPCCの第6次評価報告書にもありますように、大気中への二酸化炭素排出量の61.3%は土壌が占めており、二酸化炭素の吸収の57.7%を森林が占めています。そのため、海洋だけに着目するのではなく、土壌からの二酸化炭素排出量の制御や森林における二酸化炭素吸収量の増加が期待できる環境負荷低減技術の検討にも取り組みます。これらの技術を組み合わせて、環境負荷ゼロの実現に貢献すること、懸念されている人口爆発により発生しうる世界の食料不足やタンパク質クライシス※6の解消をめざします。

※1NTTグループでは2021年9月28 日に環境ビジョン「NTT Green Innovation toward 2040」を策定し、2030年度までに温室効果ガス排出量の80%削減(モバイル、データセンターはカーボンニュートラル)、2040年度までにカーボンニュートラルを実現することをめざしています。また、NTTグループでは、自らのカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを社会へ拡大し、日本政府がめざす2030年に2013年度比で温室効果ガスを46%削減するという目標、および2050年までのカーボンニュートラルの実現に貢献します。

※2 ゲノム編集技術: 生物が持つ特定の塩基配列を狙って変化させる技術であり、塩基配列の変化により、その遺伝子が担う形質を改良することができます。

※3NTT R&Dフォーラム ― Road to IOWN 2021
URL:http://www.rd.ntt/forum/当該ページを別ウィンドウで開きます

※4二酸化炭素固定: 二酸化炭素など無機的な炭素を、糖などの有機的な炭素化合物に変換して体内に取り込む過程です。

※5カルタヘナ法:生物多様性条約カルタヘナ議定書を適切に運用するための法律であり、遺伝子組換え生物が生物多様性へ影響を及ぼさないかどうかの事前審査や、適切な使用方法について定められています(正式名称:遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律)。

※6人口の増加と新興国の経済発展による生活レベルの向上により、人類が必要とするタンパク質の需要に、供給が追いつかなくなることを予測した警鐘です。

本件に関する報道機関からのお問い合わせ先

NTT情報ネットワーク総合研究所
企画部 広報担当
inlg-pr-pb-ml@hco.ntt.co.jp
TEL:0422-59-3663

リージョナルフィッシュ株式会社
経営企画部 塩見泰央
info@regional.fish
TEL:075-600-2963

ニュースリリースに記載している情報は、発表日時点のものです。
現時点では、発表日時点での情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承いただくとともに、ご注意をお願いいたします。