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2021年11月16日

日本電信電話株式会社

東日本大震災後の10年間の経験を知恵へと発展させ、しなやかな社会の実現をめざす共同研究を新たに開始
~未知なる環境変化にも対応できる社会をめざす~

日本電信電話株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:澤田純、以下「NTT」)は、国立大学法人東北大学災害科学国際研究所(宮城県仙台市、所長:今村文彦、以下「IRIDeS」)と、「安心なくらしを支える基盤技術」のビジョンに基づき、災害対策・防災分野で新たな価値の創出と震災復興への貢献をめざしたビジョン共有型共同研究※1を2018年より進めて参りました。この度、第一期(2018~2020年度)での成果を踏まえ、第二期(2021~2023年度)の新たなビジョンに基づく共同研究を開始します。

1.ビジョン共有型共同研究の概要

近年、地震だけでなく台風や局所的な大雨、線状降水帯等の極端な気象現象が頻発していることから、安心かつ安全なくらしを支える基盤技術が益々求められています。
 第一期では、東日本大震災を経験したIRIDeSが持つ災害ビッグデータと、NTTが持つコミュニケーションサービス基盤技術を組み合わせることにより、安心・安全のいずれかが欠如した状態から、安心かつ安全な状態へ行動変容を実現する以下二つの研究テーマに取り組みました。

(1)「震災アーカイブを活用した社会課題解決型サービスデザイン手法の研究」

目的:平時の防災行動の促進

成果:「ステルス防災」というデザインコンセプト※2の創出、様々な地域に展開可能な防災デザインワークショップのパッケージを開発

説明:従来の防災啓発活動は、災害の被害ばかりを強調し、いわば脅かすことで行動変容を促してきましたが、市民との共創を通じて「ステルス防災」という生活に溶け込んだ防災対策を可能とするデザインコンセプトを生み出し、他の目的で利用していると気付かぬうちに防災レベルが上がっていくような、様々なデザインパッケージを開発しました。

(2)「リアルタイム津波浸水被害予測を活用した意思決定支援手法の研究」

目的:災害対策本部での初動における迅速で的確な意思決定を支援

成果:IRIDeSのリアルタイム津波浸水被害予測システムとNTTの統合リスクマネジメント支援システム「KADAN」※3との連携プロトタイプシステムの構築

説明:従来は災害対策本部の職員が災害時のひっ迫した状況下で被害推定情報を解釈してリソース配分等の検討を進める必要がありましたが、本技術では、初動における被害推定情報を復旧レベルに変換する活用法を提案し、効率的な検討が可能となりました。実際の高知県での防災訓練や説明会を通じたユーザ評価により有効性を確認しました。

第二期でのビジョンは、2020年度の後半より検討を開始しました。第一期では震災当時での課題を解決するための技術であったのに対し、第二期では未来の技術の進展やそれらに支えられる社会基盤へと拡大して課題を抽出しました。IRIDeSの複数の部門、及び、NTTの三つの総合研究所※4の枠を超えた複数の研究所から毎回20名程が参加して議論を尽くし、新たなビジョンを策定しました。

【新たなビジョン】

東日本大震災の教訓と10年間の復興への取り組みの経験を知恵へと発展させ、人や社会が未知なる環境変化にもしなやかに対応できるシステムの創出により、様々なリスクを乗り越える『超レジリエンス社会』の実現をめざします

2.第二期の共同研究テーマ内容

東日本大震災も含め、過去に度重なる自然災害に見舞われながらも、被災者からは「まさか自分が」という言葉が聞かれます。この状況を変えるべく、あらゆる国民ができるだけ早い段階で、来る災害の可能性を認知し、災害時に自ら適切な対応を取るようにしなくてはならないという課題が挙げられ、以下の二つの方向性を得ました。

  • 東日本大震災から得た教訓や復興の経験を知恵として、将来における不確実性の低減と未知なる災害の可視化を図り、国民自身による災害対応力を向上すること
  • リアルタイムで状況を把握するセンシング技術の発展と情報の流通、想定外の危機を乗り越える人間の思考や成長・発展過程の分析・解明、デジタルツイン(DT)やAIの応用で研究を深め、来るべく脅威に対して受け身に備える「防災」から自ら柔軟に行動する「環境適応」へ、リスクに対する考え方や価値観を変えること

つまり、第一期では過去のデータを活用して災害を正確に捉え、予測・対処することでのしなやかなレジリエンス社会の実現であったのに対し、第二期では過去に加え、災害のみではなく地球や社会・地域を正確に捉えた上で未来を予測し、しなやかに行動することでの「超レジリエンス社会」の実現と位置付けられます。両組織でのマッチングを実施し、次の二つの共同研究テーマを創出しました。

(1)「避難生活改善に資する次世代避難システム構築および地域住民の防災行動促進を目的とした介入モデルの研究」

目的:IRIDeSに集積された古から震災後までの膨大な知見・データを元に『IRIDeSスタンダード』※5となる行動指針を新たに提案

効果:国難級の災害にも柔軟に対応できるしなやかな社会の実現に資するものと考えています。

説明:第一期で前提とした従来の社会基盤ではなく、第二期では未来の社会基盤に対する行動モデルの検討へと発展させます。更に、IRIDeSスタンダードに基づく価値観の醸成や行動変容を促す技術の確立をめざします。具体的には、避難生活改善のためには、適切な避難情報・物流情報や健康関連情報の提供が必要であり、それらを提供できる次世代避難システムのモデルを設計します。また、次世代避難システムが平時から活用される持続可能な地域社会モデルを組み込み、さらにDTにおける人の思考・判断モデルや行動予測を活用することで、地域住民の平時における防災行動、および有事における避難行動を促進するための行動変容策・介入モデルを構築します。

計画:1年目に新たな社会・行動の在り方をまとめ、2年目に介入モデルの設計、3年目に実証実験を予定

役割分担:IRIDeSは、防災に関する知見に基づく次世代避難所のデザイン、社会的期待に基づく地域社会モデルの提案を担当し、NTTは、防災・避難行動への行動変容策・介入モデルの構築・評価、災害対応標準案の作成・提案、提供様式の検討・評価を担当

(2)「IRIDeSの災害情報とNTTのIOWN構想で実現をめざす4Dデジタル基盤の連携による被災予測DTを活用した意思決定支援の研究」

目的:行政担当者等ができるだけ早い段階で災害の可能性を認知し、災害時に自ら適切な対応を取れることをめざし、時空間の連続性を考慮したWhat If分析可能な被災予測DTを構築

効果:未知なる災害に対しても柔軟に対応でき、効果的な意思決定に資するものと考えています。

説明:第一期での年1回の訓練では経験の底上げが困難であったため、第二期ではより多くの対応経験ができる仕組みを提供します。被災予測DTの実現により、災害リスク対応の疑似体験を提供することで、リスク認知・対応の能力向上につながる行動変容をめざします。

計画:1年目に被災予測DTの設計、2年目に被災予測DTの構築、3年目に実証実験を予定

役割分担:IRIDeSは、数値シミュレーションによる災害データ作成、What If分析シナリオの策定、NTTは、被災予測DTの設計・構築を担当

3.今後の展開

第一期、第二期の成果を社会に実装することで、今後被災が予想される地域において被災を未然に防ぎ、先回りして環境の変化に適応する「超レジリエンス社会」の実現に貢献します。

東日本大震災後の10年間の経験を知恵へと発展させ、しなやかな社会の実現をめざします 次世代避難システム 被災予測デジタルツイン IRIDeSスタンダード(災害対応基準) 価値観・行動変容を促進

【脚注】

※1https://group.ntt/jp/newsrelease/2018/08/28/180828a.html
ビジョン共有型共同研究とは、NTTと大学双方が大きな社会課題を解決するためのビジョンを共有し、ビジョンの実現に向けた個々の共同研究をマネジメントすることで、異分野の組織間連携を促し新たな価値創造をめざしたものです。東北大学とNTTは組織的連携協力協定*に基づき、組織対組織の連携を促し、新たな価値創造をめざすビジョン共有型共同研究を立ち上げることで合意しました。異分野での組織間連携により、両者の強みを生かしながらビジョンの実現に向けた早期技術確立を展開していくことを目的としています。
* 組織的連携協力協定の概要は以下HPを参照
①国立大学法人東北大学と日本電信電話株式会社との連携協力協定締結
-学術研究と産業技術の発展をめざし、研究開発や教育・人材育成分野で連携-
https://group.ntt/jp/newsrelease/pdf/news08/0807/080728a.pdf当該ページを別ウィンドウで開きます
②東北大学とNTTの連携協力協定にNTT東日本が参画
-東北大学とNTTグループの一層の連携協力に向けて-
https://group.ntt/jp/newsrelease/pdf/news2010/1002/100212a.pdf当該ページを別ウィンドウで開きます

※2デザインコンセプトとは、地域住民をサービス共創パートナーと捉え、住民の実生活環境の中で本質的な課題の探索や発見、解決策の検討や検証を行う仕組みの中でのコンセプトです。

※3統合リスクマネジメント支援システム(KADAN®)とは、NTTが研究開発した、大規模・複合化した危機事象における経営層・管理層の効率的な状況把握と効果的な方針決定を支援する危機対応のためのマネジメントシステムです。

※4情報ネットワーク総合研究所、サービスイノベーション総合研究所、先端技術総合研究所

※5IRIDeSの知見×仙台防災枠組×SDGs ×危機対応ノウハウ(KADAN)による災害対応・復興の指針・モデル

本件に関する報道機関からのお問い合わせ先

NTT情報ネットワーク総合研究所
企画部 広報担当
inlg-pr-pb-ml@hco.ntt.co.jp
TEL:0422-59-3663

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