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2023年1月25日

日本電信電話株式会社
国立大学法人横浜国立大学

NTTと横浜国立大学、台風予測精度向上に向けた共同研究をスタート
~台風被害を軽減し、安全・安心な社会の実現に貢献~

日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)と国立大学法人横浜国立大学(本部:神奈川県横浜市、学長:梅原 出、以下「横浜国立大学」※1)は共同研究契約「海域での大気海洋観測データを活用した台風予測手法に関する研究」を締結しました。
 NTTと横浜国立大学の双方の強みを生かし、超広域大気海洋観測技術※2による台風リアルタイム観測を実現し、台風予測精度の向上をめざします。

1.背景

地球温暖化の進行等により激甚化しつつある台風の脅威に対し、国民の生命・財産の安全・安心をいかに守るかは台風大国日本にとって重要な社会課題となっています。特に、平成30年台風21号や立て続けに発生した令和元年房総半島台風と令和元年東日本台風は、西日本および東日本の都市部を襲い、過去最大となる経済的被害をもたらしました(表1)。これまでにも様々な防災・減災対策が講じられてきましたが、残念ながら台風による被害は後を絶ちません。こうした状況を変えるべく、台風被害の軽減のために、より迅速かつ精度の高い台風予測情報の提供が求められています。

表1 過去の主な風水災による保険金の支払い※3
(日本損害保険協会調べ 2022年3月末)

※横スクロールできます

順位 災害名 地域 年月 支払保険金(億円)
1 平成30年台風21号 近畿地方 2018年9月 10,678
2 令和元年台風19号
「令和元年東日本台風」
東日本 2019年10月 5,826
3 平成3年台風19号 全国 1991年9月 5,680
4 令和元年台風15号
「令和元年房総半島台風」
関東地方 2019年9月 4,656
5 平成16年台風18号 全国 2004年9月 3,874

台風の進路予報は数値予報モデルの改良等により精度が向上している一方で、台風の強度予報は進路予報のような明確な精度向上が見られませんでした※4。台風の予測精度向上には、予測の初期値としたり、予測結果を照合する答えとしたりするための実測データの充実が不可欠であり、特に海上で成熟期に達する台風の変化過程を正確に把握することが課題となっています。
 NTTは、海域での常時リアルタイムな観測データを充実させることをめざしており、2021年に海域での大気・海洋観測を試験的に実施し、2022年より本格的に台風観測を開始しています。横浜国立大学は、2021年10月に全国で唯一の台風専門研究機関である「台風科学技術研究センター(以降「TRC」、Typhoon Science and Technology Research Center)」を設立しており、第一線の台風研究者・実務家が集い、最先端の台風予測技術を有しています。この度の共同研究は、TRCと民間企業との第1号となります。また、TRCでは航空機による台風観測も実施し、実測データの有用性についても実証を進めており、その中でも特に台風強度を表す海面付近の気圧や風速に加え、台風のエネルギー源と相関の高い水蒸気量や海水温の重要性も分かってきています。

2.共同研究の概要

TRCでは台風観測や台風予測だけでなく、台風制御や台風発電という台風に係る様々な研究テーマを推進しており、社会への被害を低減するだけでなく、台風のエネルギーを活用する試みも見据えています。NTTでは「宇宙統合コンピューティング・ネットワーク」事業に向けて、低軌道衛星や成層圏に浮かぶHAPS(High Altitude Platform Station)などとの通信に適したセンシングシステムの実現をめざしています。本共同研究では、NTTの台風直下での大気海洋観測データをTRCの台風予測モデルに組み込むことで精度の向上に寄与できることを実証していきます。

<主な共同研究内容>

  • 台風予測モデルからの逆推定により、予測結果の向上が見込まれる観測領域候補の抽出
  • 観測領域候補に基づき観測計画の策定
  • 台風観測データを用いて台風予測精度向上の検証

<NTTの役割>

  • 予測に効果のある台風観測領域候補から測機とそのオペレーションに即した観測計画を策定し、台風観測データを取得
  • 超広域大気海洋観測技術による台風リアルタイム観測の実現に向けて、台風予測精度を保証する観測最適化に関する要件定義と設計

<横浜国立大学の役割>

  • 予測に効果のある台風観測領域候補の抽出
  • 台風予測モデルによる予測の実施と検証

3.今後の展開

TRCでは台風を「脅威」の存在ではなく「恵み」をもたらす対象として活用していくための革新的な研究を推進し世界をリードすることをめざしています。NTTでは超広域で低コストなセンシングを可能とする「宇宙統合コンピューティング・ネットワーク」を活用し、未踏領域も含め、より広範囲かつリアルタイムな観測をめざしていきます。様々な業界、機関との協業により、海洋気象情報の超広域でのリアルタイム観測を実現し、台風に対する環境・社会活動の未来予測を高精度化して「恵み」に変えていくと共に、環太平洋諸国のレジリエンス実現に貢献します。

写真左からNTT宇宙環境エネルギー研究所 地球環境未来予測技術グループ久田リーダ・主幹研究員、NTT宇宙環境エネルギー研究所前田研究所長、横浜国立大学梅原学長、筆保台風科学技術研究センター長・教授 写真左からNTT宇宙環境エネルギー研究所 地球環境未来予測技術グループ久田リーダ・主幹研究員、NTT宇宙環境エネルギー研究所前田研究所長、横浜国立大学梅原学長、筆保台風科学技術研究センター長・教授

※1本件に関する横浜国立大学からの発表
https://www.ynu.ac.jp/hus/koho/29065/detail.html当該ページを別ウィンドウで開きます

※22022年9月26日のリリース
NTTとJAMSTECが「大気海洋観測」の高度化に向けた共同研究を開始
~地球環境シミュレーションを実現、地球環境の理解、再生・保全に貢献~
https://group.ntt/jp/newsrelease/2022/09/26/220926a.html

※3日本損害保険協会 "風水害等による保険金の支払い
https://www.sonpo.or.jp/report/statistics/disaster/ctuevu000000530r-att/c_fusuigai.pdf当該ページを別ウィンドウで開きます

※4気象庁:台風進路予報(中心位置の予報)の精度検証結果
https://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/typ_kensho/typ_hyoka_top.html当該ページを別ウィンドウで開きます

本件に関する報道機関からのお問い合わせ先

日本電信電話株式会社
情報ネットワーク総合研究所 広報担当
nttrd-pr@ml.ntt.com

国立大学法人横浜国立大学
先端科学高等研究院
ias@ynu.ac.jp

ニュースリリースに記載している情報は、発表日時点のものです。
現時点では、発表日時点での情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承いただくとともに、ご注意をお願いいたします。