検索パネルを開く 検索パネルを閉じる メニューを開く メニューを閉じる

2023年5月15日

日本電信電話株式会社

世界初、風力発電の風車を無停止点検可能とする技術の実証実験を開始

日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)は、世界で初めて風力発電風車の無停止点検を実現する技術の実証実験を開始しました。
 本技術では、点検対象構造物を挟み込む形で飛行させた2機のドローン間において、微弱無線の送受信を行い、その受信信号の変化を解析することで、フレネルゾーン※1内の点検対象構造物の損傷有無を検知します。(図1)
 従来は、風車を停止し点検を行っていたため、発電効率の低下が生じていました。本技術は、これを回避可能とすることで、発電効率向上によるカーボンニュートラルへの貢献をめざします。
 なお、本技術については2023年5月17日(水)~18日(木)に開催予定の「つくばフォーラム2023※2」にて紹介します。

図1.技術の活用イメージ 図1.技術の活用イメージ

1.背景

2050年カーボンニュートラル実現や日本国内のエネルギー自給率向上に向けて、再生可能エネルギーのひとつである洋上風力発電が将来の主力電力として期待されています。その導入目標※3は2030年で約1,000万KW、2040年で約3,000万kW~4,500万kWとなっています。導入目標達成のためには2040年時点で約3,600基※4の洋上風力発電の風車が日本沿岸に建設されることとなります。そして建設だけでなく、保守運用効率化も課題になると想定され、アクセスや現地作業が困難な環境条件を踏まえると、なるべく人手を介さない保守運用の実現が重要となります※5。また洋上風力発電の想定設備利用率※6は30%※7であり、その向上も課題となっています。
 そこでNTTでは洋上風力発電の定期点検の自動化による運用効率化と運転停止時間短縮による設備利用率向上の実現に向けて、これまで通信事業で培ってきた無線技術とドローンによる設備点検技術を組み合わせた研究開発に取り組んでまいりました。

2.技術のポイント

  • 自律飛行ドローンを無線の送信機と受信機にしていること
  • 無線局免許不要の微弱無線を使用するため、どこでも使用可能
  • 周波数と送受信距離により決まるフレネルゾーンを簡単に変更可能
  • フレネルゾーン内の受信信号の変化を検知可能

3.今回の実験および成果

本技術はどこでも使用できる無線局免許不要の微弱無線を使用し、その送受信間の受信信号の変化により、送受信間にある構造物の損傷有無を検知する技術です。
 本技術を2機のドローンに搭載し、微弱無線の送信機と受信機に見立てると、上空で微弱無線の送受信間に損傷有無を検知する対象物以外の遮蔽物、反射物が無い状態にすることができます。この状態をつくることで、対象物の軽微な変化を把握しやすくなります。また本技術ではソフトウェア無線を活用しているため、送受信周波数を簡単に変更できます。無線局免許が不要な微弱無線による送受信であるため、上空で自由に様々な周波数の電波を変化させながら送受信することができます。これにより周波数と送受信距離によって決まるフレネルゾーンを検知対象の構造物に合わせて変化させることができます。

① 実験室におけるフレネルゾーン内の受信信号の変化による損傷有無検知実証

本技術で構造物の損傷有無を検知できることを確かめるために、ノイズ影響の少ない実験室でフレネルゾーン内の受信信号の変化を検知する屋内実験を行いました。この検知は風車停止状態で行う画像撮影・解析などすでにある技術を使った点検の前段階で使用することを想定しています。そのことから、運転停止基準の判断に使えるかどうかが重要となります。今回の実験では風力発電設備のブレード点検ガイドライン※8に記されている3つの状態と正常状態を比較することで、回転中のブレード損傷の状態を判断することをめざしました(図2)。結果、運転に影響する計画的に補修を行う状態と保安停止を要する状態の損傷有無を検知することに成功しました(図3)。

図2.判定する損傷レベル 図2.判定する損傷レベル

図3.屋内実験 図3.屋内実験

② 屋外における微弱無線の送受信の実証

2機のドローンを微弱無線の送信機と受信機に見立て、上空で微弱無線の送受信する屋外実験を行いました。ドローンで上空を飛行する際にはノイズの影響を強く受けますが、その対策も行い実験を行った結果、上空30メートルでの微弱無線送受信に成功しました(図4)。また2機の自律飛行ドローンの操作により、上空で微弱無線の送受信距離を意図通りに変化させて※9、フレネルゾーンを簡単に変更できることを確認しました。

図4.屋外実験 図4.屋外実験

4.今後の展開

今後は技術確立に向けて、実際に屋外で運転中の複数の風力発電風車に対して本技術を活用する実験を行い、屋外の実物でも損傷検知が行えることを確認予定です。
 更なる研究、実証実験を重ねることで、洋上風力発電の定期点検の自動化による運用効率化と設備利用率向上による発電量増加を実現し、カーボンニュートラルへの貢献をめざします。

<用語解説>

※1無線送受信の距離と周波数によって決まる無線が伝搬する空間のこと

※2つくばフォーラム2023
https://www.tsukuba-forum.jp/当該ページを別ウィンドウで開きます

※3経済産業省 「洋上風力産業ビジョン(第1次)」より

※4再エネ海域利用法に基づく促進区域指定「ラウンド1」の1.26万kW/基を元にNTTにて試算

※5経済産業省 「海外の洋上風力発電設備に関する運用実態調査2022年2月」より

※6設備利用率
定格出力で100%運転(24時間365日)した場合の発電量に対する、実際に1年間で発電した電力量の割合のこと

※7経産省調達等算定委員会資料2023年2月8日より

※8日本風力発電協会「風力発電設備 ブレード点検および補修ガイドライン」より

※92機の自律飛行ドローンの安定飛行は、NTT西日本グループの株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマークに作業を委託して実施

本件に関する報道機関からのお問い合わせ先

日本電信電話株式会社
情報ネットワーク総合研究所 広報担当
nttrd-pr@ml.ntt.com

ニュースリリースに記載している情報は、発表日時点のものです。
現時点では、発表日時点での情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承いただくとともに、ご注意をお願いいたします。