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2024年2月20日

日本電信電話株式会社

郊外型データセンタ活用・省電力リアルタイムAI分析技術を実証
~IOWN技術の活用によりリモート拠点上でのAI分析の遅延と消費電力を大幅に削減~

日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)は、IOWN構想の一環として、Red Hat、NVIDIA、および富士通の協力のもと、IOWN技術を用いて郊外型データセンタを活用したリアルタイムArtificial Intelligence(AI)分析を省電力に実現する技術を開発しました。本AI分析基盤では、IOWNオールフォトニクス・ネットワーク(All-Photonics Network、以下、APN)、およびIOWNデータセントリック基盤(Data Centric Infrastructure、以下、DCI)のデータ処理高速化手法を活用しています。本実証実験を通じ、郊外型データセンタによるAI分析において、従来の方式と比べて、遅延時間(センサ設置拠点でデータを受信してから郊外型データセンタでAI分析を完了するまでの時間)を、最大で60%削減できることを確認しました。また、郊外型データセンタにおいてカメラ毎のAI分析に要する消費電力を、最大で40%削減できることを確認しました。これらにより、AIのリアルタイム分析処理の郊外型データセンタ集約およびその省電力化が可能になります。本成果は、2024年2月29日実施予定のMWC BarcelonaでのIOWN Global Forumセッション当該ページを別ウィンドウで開きますにおいても紹介されます。

1. 背景

近年のセンシング、ネットワーキング、およびAI技術の進展により、リアルタイムに生成される大規模データのAI分析による新たな価値創造が期待されています。しかしながら、大規模データのAI分析では、以下の課題が存在します。

  1. センサ設置拠点におけるAI分析では、維持管理コストが高く、進化し続けるAIモデルやハードウエアに追従することが困難です。
  2. クラウドといった大規模データセンタにおけるAI分析では、大規模データの収集に伴う遅延やCPUオーバヘッドにより、厳しいリアルタイム性能が求められるサービスの提供が困難です。

これらの課題に対し、エッジコンピューティングによる、センサ設置拠点近傍(一般的に、センサ設置拠点から数十km圏内)でのAI分析も議論されています。しかし、土地や電力の不足から、特に大都市圏において、多くのGPUといったアクセラレータを必要とするAI分析処理を収容できるデータセンタを見つけることが難しくなってきています。

2. 実証実験の概要

本AI分析基盤では、IOWN Global Forum*1で検討されている、APNによる低遅延・ロスレス通信、ならびに、DCIにおけるデータ処理高速化手法を活用しています。これらにより、大規模データの収集に関するオーバヘッドが最小限に抑えられるため、大都市圏内に設置されたセンサからデータを収集し、郊外型データセンタでAI分析することが可能になります(図1)。特に、郊外型データセンタは、大都市圏内に設置されたデータセンタと異なり、再生可能エネルギーを最大限活用できるという利点があります。本実証実験におけるAI分析基盤の特長は、以下の通りです(図2)。

  1. NTTによるAI推論のデータ処理高速化*2:RDMA over APNを用い、センサ設置拠点におけるセンサデータを、郊外型データセンタに設置されたアクセラレータのメモリ上に直接転送します。これにより、従来ネットワークにおけるプロトコル処理のオーバヘッドを大幅に削減します。また、CPUによる制御オーバヘッドを抑えつつ、アクセラレータ内でAI分析処理を完結させることで、その電力効率を改善しています。
  2. Red Hat OpenShift*3による柔軟なワークロードの配備:Kubernetesベースのハイブリッドクラウド向けアプリケーションプラットフォームRed Hat OpenShiftは、GPUといったアクセラレータの複雑性を隠蔽するためのKubernetes Operator当該ページを別ウィンドウで開きます*4の仕組みを備えます。これにより、データ処理高速化が適用されたワークロードを、郊外型データセンタをはじめとする複数サイトに、柔軟かつ容易に配備できるようになります。

図1. 大都市圏における郊外型データセンタによるAI分析 図1. 大都市圏における郊外型データセンタによるAI分析

図2. 本AI分析基盤の特長 図2. 本AI分析基盤の特長

3. 実証実験の結果

本実証実験では、横須賀市におけるセンサ設置拠点と、武蔵野市における郊外データセンタとをAPNで接続して、AI分析基盤を評価しています(図3)。横須賀市と武蔵野市間の光ファイバの距離は、およそ100kmです。センサとして多くのカメラ接続を模擬した状態で、従来のAI分析処理を適用した結果と比較した結果、本AI分析基盤では、その遅延時間(センサ設置拠点でデータを受信してから郊外型データセンタでAI分析を完了するまでの時間)を、最大で60%削減できること確認しました。また、郊外型データセンタにおいてカメラ毎のAI分析に要する消費電力を、最大で40%削減しました。加えて、本AI分析基盤は、GPUの数を増設することで、CPUボトルネックを生じさせることなく、より多くのカメラを収容できます。その結果、1,000台カメラの収容を想定した見積りにおいて、最大で60%の消費電力の削減が見込まれています。本実証実験は、IOWN Global Forumから、Proof of Concept(PoC)Reference*5に準拠したPoCとして認定されています。また、本実証実験の詳細は、IOWN Global Forumの公式サイトに掲載されているIOWN PoCレポート当該ページを別ウィンドウで開きますから確認できます。

図3. 実証実験の構成 図3. 実証実験の構成

4. 今後の展開

今後は、本AI分析基盤に、光電融合技術を組み合わせ、更なる電力効率の向上を図り、カーボンニュートラルの実現に向けて貢献します。また、これらの成果は、IOWNコンピューティング*6の一部として、2025年大阪・関西万博におけるNTTパビリオンに適用すると共に、2026年の商用化をめざします。

<用語解説>

*1Innovative Optical and Wireless Network Global Forum:https://iowngf.org/当該ページを別ウィンドウで開きます

*2本AI分析基盤の郊外型データセンタにおけるAI推論では、NVIDIA A100 Tensor コア GPU当該ページを別ウィンドウで開きますNVIDIA ConnectX-6 NIC当該ページを別ウィンドウで開きますを搭載したFujitsu PRIMERGY RX2540 M7を利用しています。また、データ処理高速化としてNVIDIA Rivermax当該ページを別ウィンドウで開きますnvJPEG当該ページを別ウィンドウで開きますCV-CUDA当該ページを別ウィンドウで開きますUnified Communication X当該ページを別ウィンドウで開きますフレームワークなどのNVIDIAのライブラリも活用しています。

*3本実証実験では、コンテナオーケストレーションとしてRed Hat OpenShift 4.13を利用しています。

*4https://www.redhat.com/en/topics/containers/what-is-a-kubernetes-operator当該ページを別ウィンドウで開きます

*5PoC Reference: Reference Implementation Model for the Area Management Security Use Case, August 2022. https://iowngf.org/wp-content/uploads/formidable/21/IOWN-GF-RD-RIM_for_AM-S_UC_PoC_Reference_1.0.pdf当該ページを別ウィンドウで開きます

*6https://youtu.be/6ZAHUjfEyKs?si=0z8qSllqOUB67zg5当該ページを別ウィンドウで開きます

本件に関する報道機関からのお問い合わせ先

日本電信電話株式会社
IOWN総合イノベーションセンタ 広報担当
nttrd-pr@ml.ntt.com

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