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2024年4月11日

株式会社NTTドコモ
日本電信電話株式会社
日本電気株式会社
富士通株式会社

6G移動通信に向け世界最高クラスのサブテラヘルツ帯無線デバイスを開発し、100Gbpsの超高速伝送を実現

株式会社NTTドコモ(以下、ドコモ)、日本電信電話株式会社(以下、NTT)、日本電気株式会社(以下、NEC)、富士通株式会社(以下、富士通)は、100GHz帯および300GHz帯のサブテラヘルツ帯に対応した世界最高クラス※1の無線デバイスを共同で開発し、100GHz帯および300GHz帯において100Gbpsの超高速伝送を実現しました。

6G時代のネットワークの活用として、メタバースや自動運転などさまざまなユースケースが考えられており、その増大する通信需要に応えるためには、広い帯域が利用可能なサブテラヘルツ帯(100GHz~300GHzの周波数帯)を活用した大容量の無線通信が期待されています。サブテラヘルツ帯は、現状の5Gで使用されているミリ波帯(28GHz帯など)に比べ非常に高い周波数帯であるため、無線通信の基本要素である通信用ハードウェア(以下、無線デバイス)の開発から行う必要があります。このような新規の無線デバイスを開発するためには、移動通信システムへの応用を前提としたデバイスの要求性能の明確化や、要求性能をサブテラヘルツ帯で達成するための新規デバイス開発など多岐にわたる課題があります。

これらの課題に対応すべく、2021年から4社は共同して6G時代の大容量無線通信の実現をめざしたサブテラヘルツ帯無線デバイスの研究開発(以下、本研究開発)を進め、このたび共同開発した無線デバイスを用いて100GHz帯、および300GHz帯において無線伝送実験を行い、見通し内※2の伝送距離100mにおいて100Gbpsの超高速伝送を実証しました。これは、現在提供している5Gネットワークの送信時最速4.9Gbps※3に対し約20倍の高速化に相当します。

100GHz・300GHzの伝送実証実験の様子 100GHz・300GHzの伝送実証実験の様子

<本研究開発における各社の役割と具体的成果>

・ドコモ

100GHz帯の移動通信適用における無線システム構成や要求性能の検討を行い、伝送速度100Gbps相当で100m無線伝送※1が可能な無線システムを実現。

・NTT

300GHz帯無線装置、および、そのキーデバイスである広帯域ミキサの研究開発を行い、300GHz帯において従来実現されていない、チャネルあたり伝送速度100Gbpsの100m無線伝送※1が可能な無線装置を実現。

・NEC

100GHz帯の移動通信環境を想定した無線通信システム構成技術の検討を行い、100素子超から成る多素子アクティブフェーズドアレーアンテナ(Active Phased Array Antenna : APAA)※1を実現。

・富士通

100GHz帯および300GHz帯の通信距離拡大および消費電力低減のため、高出力かつ高効率な信号増幅を可能とする化合物半導体技術の検討を行い、高出力アンプにおける世界最高の電力効率※4を実現。

今後も、4社は、サブテラヘルツ帯を移動通信で活用するために幅広い研究開発を行い、各社の強みを活かしたさまざまな取り組みを推進し、6Gに向けた世界的な標準化や実用化に貢献していきます。

本研究開発内容には、総務省からの委託を受けて実施した「電波資源拡大のための研究開発(JPJ000254)」の成果の一部が含まれています。
https://www.tele.soumu.go.jp/j/sys/fees/purpose/kenkyu/当該ページを別ウィンドウで開きます

※1世界最高クラスの無線デバイスは以下3点から想定。①100GHz帯において、100Gbpsの高速伝送と100mの伝送距離を両立した発表報告はない(ドコモ調べ)。②300GHz帯において、100Gbpsの高速伝送と100mの伝送距離を両立した発表はない(NTT調べ)。③100GHz帯で100素子以上のAPAAにより50dBmの等価等方輻射電力(Equivalent Isotropic Radiation Power : EIRP)とビームステアリング角±30度程度の特性を両立した発表報告はない(NEC調べ)。2024.3時点各社調べ。

※2無線通信において、送信機と受信機とが直線上に障害物なく対向配置された(即ち、送信機/受信機がお互いに見通せる関係で配置された)状態を指す。

※3技術規格上の最大値であり、実際の通信速度を示すものではありません。ベストエフォート方式による提供となり、実際の通信速度は、通信環境やネットワークの混雑状況に応じて変化します。

※4100GHz帯および300GHz帯において、それぞれ特定の出力での世界最高効率となります。2024.3時点富士通調べ。

本件に関する報道機関からのお問い合わせ先

株式会社NTTドコモ
6Gネットワークイノベーション部
無線デバイス技術担当
6gdevice@ml.nttdocomo.com

日本電信電話株式会社
先端技術総合研究所
広報担当
nttrd-pr@ml.ntt.com

日本電気株式会社
コーポレートコミュニケーション部
E-Mail: press@news.jp.nec.com

富士通株式会社
富士通コンタクトライン(総合窓口) お問い合わせフォーム
https://contactline.jp.fujitsu.com/customform/csque04802/873532/当該ページを別ウィンドウで開きます

別紙

本研究開発概要

■各社の研究開発内容

・NTTドコモ

サブテラヘルツ帯の移動通信システム実現に向け、無線デバイスの構成・要求条件の明確化と、広帯域な信号伝送装置の検討を行いました。サブテラヘルツ帯の広い帯域を利用するためには、広帯域なベースバンド(BB)信号および中間周波(IF)信号を生成する必要があります。しかし、従来のBB信号、IF信号を取り扱う装置においては、信号帯域幅が数GHz程度の狭帯域信号しか送受信できないという課題がありました。そこで、複数の狭帯域信号を周波数軸上に多重するチャネルボンディング装置を開発し、広帯域な信号を実現しました。開発したチャネルボンディング装置を用いて、屋外環境にて100GHz超帯における伝送距離100m超、伝送速度100Gbps超相当の無線伝送に成功しました。さらに、チャネルボンディング装置と、富士通が開発したアレーアンテナを用いた軸合わせ技術、NECが開発したAPAAとを組み合わせて、100GHz超帯において電波の指向性制御が可能であることをも確認し、サブテラヘルツ帯の移動通信適用に向けた検討を大きく前進させることができました。

  • チャネルボンディング装置を用いた屋外伝送実験 チャネルボンディング装置を用いた屋外伝送実験

  • 電波の指向性制御実験 電波の指向性制御実験

・NTT

高速トランジスタであるInP-HEMT※5を用いて300GHz帯の超高速データ伝送が可能な無線装置を実現しました。本無線装置においては、300GHz帯にデータを載せるためのミキサICがデータ伝送速度を決定するキーデバイスとなります。そこで、ミキサICを広帯域な設計とすることで、検証実験にて1チャネルで100Gbpsが伝送できることを確認できました。また本ミキサICの広帯域性を活かすことにより、100Gbps信号を300GHz帯における複数のチャネルで伝送できることも確認しています [参考文献]。
 実現したミキサICをモジュール化し、NTTで製作した電力増幅器などと組み合わせて300GHz帯無線装置を構築しました。300GHz帯無線装置を用いて無線伝送実験を行い、伝送距離100mにおいて1チャネル100Gbpsの高速伝送を達成しました。これらの伝送距離と伝送速度は300GHz帯における世界最高クラスのものです。

実現した300GHz帯のInP-HEMT広帯域ミキサIC、モジュールと無線装置 実現した300GHz帯のInP-HEMT広帯域ミキサIC、モジュールと無線装置

  • 無線伝送系概要 無線伝送系概要

  • 無線伝送系の写真 無線伝送系の写真

  • 100Gbps伝送結果 100Gbps伝送結果

※5InP-HEMT:
電子移動度が高く高周波特性に優れた材料であるリン化インジウム(InP)系材料を用いることで高速動作が可能なトランジスタの一種。HEMTは、High Electron Mobility Transistor(高電子移動度トランジスタ)の略称であり、無線通信におけるアナログ回路などの高速動作が求められる電子回路に使用されることが多い。

[参考文献]

T. Jyo et al., "220-to-320-GHz Fundamental Mixer in 60-nm InP HEMT Technology Achieving 240-Gbps Dual-Band Data Transmission," IEEE Trans. Microw. Theory Techn. vol. 72, no. 1, pp. 516 — 524, Jan. 2024.

・NEC

100GHz帯の移動通信環境を想定した無線デバイスの検討および製作を行いました。現状の移動通信で用いられる数GHzの電波と異なり、サブテラヘルツ帯は、電波の回り込みが少なく、伝搬損失が大きいという特徴があるため、移動通信エリアの形成が困難となる課題があります。この課題を解決するために、複数のアンテナ素子をアレー配置することで電波の方向制御と送信電力の向上という2つの利点を有するフェーズドアレー方式を検討しました。100GHz帯では、低周波に比べてアレー実装時の配線などに起因する電力損失が大きいため、フェーズドアレー実現が困難になります。そこで、アンテナ、移相器、増幅器を一体集積することで配線長を短縮し、実装時の電力損失を低減可能なアンテナIC一体型APAA方式を検討しました。さらに、4系統のアンテナ素子が一体集積されたAntenna on Chip(AoC)送信ICと、ICをパッケージングするモジュールをアレー配置することで、合計100素子以上のAPAAモジュールを開発しました。本APAAモジュールの性能検証を行い、EIRP 50dBm、ビームステアリング角±30度程度の特性を有していることを実証しました。さらに、本APAAモジュールを用いて、100GHz帯において、通信距離100mで、100Gbps級の無線伝送を行うためのシステム仕様検証を実施することができました。

  • AoC送信IC(4素子、4.5mm × 3.0mm) AoC送信IC(4素子、4.5mm × 3.0mm)

  • APAAモジュール(64素子) APAAモジュール(64素子)

APAAモジュールの水平方向ビームパターンとコンスタレーション APAAモジュールの水平方向ビームパターンとコンスタレーション

・富士通

サブテラヘルツ帯を実用化するためには、高速通信と並行して通信距離の拡大と省電力化という2つの課題を解決する必要があり、そのためには、電波の送信部に使用される増幅器において出力と電力効率を両立することが重要です。この課題を解決するため、富士通は、窒化ガリウム(以下、GaN)およびリン化インジウム(以下、InP)と呼ばれる2種類の化合物半導体材料を用いたMMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit、モノリシックマイクロ波集積回路)技術により、100GHz帯と300GHz帯の2つのサブテラヘルツ周波数領域で、高出力増幅器における世界最高の電力効率を実現しました。(100GHz帯:4W/mm以上の高出力GaN系MMICにおいて、18%以上の効率を達成、300GHz帯:10mW級のInP系MMICにおいて、9%以上の効率を達成)
 また電波暗室内において、製作した増幅器を用いた100GHz帯の無線通信試験を行い、2多重のMIMO(Multiple Input Multiple Output)にて100Gbpsの無線伝送実験に成功しました。さらに、屋外において100GHz帯で100mの伝送実験も実施しました。

100GHz帯による無線通信実験の様子 100GHz帯による無線通信実験の様子

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