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2024年5月14日

日本電信電話株式会社

管路の形状・埋設位置を高精度に計測する技術を確立
~社会インフラのデジタルツイン実現へ~

発表のポイント:

  1. 地中に埋設された管路の形状・位置を高精度に計測する技術を確立しました。
  2. 管路内を直接計測する手法のため、設置環境(深度、周辺埋設物等)の影響を受けずに計測することが可能です。
  3. 本技術により、道路下の設備状況を3次元的に把握することが可能となり、都市開発等における設計・施工業務や保全業務の効率化、災害復旧の早期化等への効果が期待されます。

日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)は、地中に埋設された管路の形状を可視化し、埋設位置を誤差0.10%以下(対計測長)の精度で計測する技術を確立しました。本技術により、専門のスキルを必要とせず道路下の設備状況を3次元的に把握することが可能となり、都市開発等における設計・施工業務や保全業務の効率化、災害復旧の早期化等への効果が期待されます。また電気、ガス、水道等の社会インフラへの技術展開により、地中設備全体のデジタルツイン推進に貢献し、将来にわたり安心・安全に社会インフラを利用できる社会をめざします。
 なお、本技術については2024年5月16日、17日に開催予定の「つくばフォーラム2024※1」にて紹介します。

1.背景

人々の生活や産業を支える社会インフラは、設備の老朽化や労働力の減少、激甚化する災害への対策など様々な課題を抱えています。これらの課題に対し、官民一体となったDX(デジタルトランスフォーメーション)が進められており、NTTにおいても4Dデジタル基盤®※2を用いたデジタルツイン※3による業務の効率化、維持管理の高度化を実現するための取り組みが行われています。デジタルツインの社会実装に向けては、基盤となる地理空間データ上に設備の形状や位置を高精度な3次元デジタル情報として整備することが重要であり、現在衛星測位やMMS※4等を用いたデータ収集が活発に行われています。しかしながら、地中に埋設された設備は衛星測位が活用できないことに加え、実測や目視が困難な状況も多いため、高精度かつ効率的に設備情報を取得することが課題となっています。その中で、全国の道路下に膨大に設置された管路※5は都市開発等の観点から高精度な設備管理が求められていますが、埋設後に外力や劣化により変化した形状を定量的に計測することは困難です。また、埋設位置は図面情報や路面からのレーダ探知等により取得することが可能ですが、レーダが届かない高深度に設置された設備や埋設物の密集箇所等については位置の把握が困難なため、設置環境によらず計測可能な技術が必要とされています。

2. 技術内容

本研究により、管路内で取得した点群データを用いて管路の形状を可視化し、埋設位置を高精度に計測する技術を確立しました。管路内を直接計測する手法のため、深度や周辺環境の影響を受けずに計測することが可能です。なお、本技術は通信用管路を用いて検証・評価を実施しています。

<技術のポイント>

(1)管路形状の可視化

TOFカメラ※6、ジャイロセンサ※7、エンコーダ※8を有する装置を用いて管路内の点群データを取得します。管路内は狭隘空間(Φ約8cm)であり、1回の撮影で取得できる点群データはカメラ前方の数m程度のため、計測装置を管路の始点から終点へ牽引し、その間連続的に取得した点群データを長手方向に繋ぎ合わせることで管路全長の形状を3次元で可視化しました。

(2)埋設位置の算出

管路はマンホール※9間を接続する設備です。マンホールは入孔部である鉄蓋が地表面に露出しているため、衛星測位により正確に設置位置を計測することができます。(1)により可視化した管路の始点と終点をマンホールの位置と括りつけることにより地理空間上の埋設位置として算出します。

図1:管路の形状・位置計測手法 図1:管路の形状・位置計測手法

本技術の精度評価のため、実際の管路設備と同様に直線および水平方向・垂直方向の曲がり部を再現した185mの模擬設備を構築し、計測実験を行いました。
 本技術で算出した管路位置と実際の位置との誤差は計測長185mに対して最大0.10%、平均0.05%となり、高精度に計測できることを確認しました。

図2:位置計測実験の結果 図2:位置計測実験の結果

3.本技術の効果と今後の展開

本技術により、管路の形状・位置を設置環境によらず高精度な3次元のデジタルデータとして取得することが可能となります。これらのデータを活用し、埋設物に関する調査等の削減、掘削時の設備損傷リスクの低減、災害復旧の早期化等を図ることで、維持管理業務の効率化、安全性向上の実現に寄与します。
 また、本技術は通信用管路だけではなく、類似設備への応用が可能です。今後は、電力、ガス、水道等の管路への技術展開により、地中設備全体のデジタルツイン推進に貢献し、将来にわたり安心・安全に社会インフラを利用できる社会をめざします。

【用語解説】

※1.つくばフォーラム2024
https://www.tsukuba-forum.jp/当該ページを別ウィンドウで開きます

※2.4Dデジタル基盤®
ヒト・モノ・コトのさまざまなセンシングデータをリアルタイムに収集し、「緯度・経度・高度・時刻」の4次元の情報を高い精度で一致・統合させ、多様な産業基盤とのデータ融合や未来予測を可能とする基盤

※3.デジタルツイン
モノやヒトをデジタル表現することによって、現実世界(リアル)のツイン(双子)をデジタル上に構築すること

※4.MMS(Mobile Mapping System)
レーザー計測器、GNSS(Global Navigation Satellite System/全球測位衛星システム)装置、デジタルカメラなどの機器を車両に搭載し、走行しながら道路、建物、設備などの3次元座標データやカラー画像等の空間情報を取得するシステム

※5.管路
通信/電気ケーブルやガス、上下水等を収容または配送するための管

※6.TOF(Time of flight)カメラ
赤外光が対象物に当たり、その反射光が戻ってくるまでの時間を測定することによって距離を測定するセンサ

※7.ジャイロセンサ
物体の回転や向きの変化を角速度として検知し、電気信号で出力するセンサ

※8.エンコーダ
機械的な移動量や方向をセンサで測位し、電気信号として出力する装置

※9.マンホール
管路設備へのケーブル等の設置、点検、修繕などの維持管理を行うための構造物

本件に関する報道機関からのお問い合わせ先

日本電信電話株式会社
情報ネットワーク総合研究所 広報担当
nttrd-pr@ml.ntt.com

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