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2024年5月16日

日本電信電話株式会社

産業用ネットワークの機能ソフト化技術によるサーバ上でのロボット遠隔自動制御を実証
~工場における機器選択の自由度向上と開発コスト低減を促進~

発表のポイント:

  1. 従来ベンダが一括して工場システムを構築しているため、機器や制御ソフトの選定自由度や拡張性が課題となっていた。
  2. 公立千歳科学技術大学との共同研究を進め、産業用ネットワークの機能ソフト化に取り組み、産業用ロボットをサーバで制御する実証実験を行い、遠隔制御でも滞りなく制御でき、産業用ネットワークの機能入替ができることを2024年4月19日に確認した。
  3. 本技術の導入により、迅速な工場システムの構築も可能になり、産業界における人手不足解消に向けた工場の生産ラインの自動化の普及が期待できる。

日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)は、公立千歳科学技術大学と共同で産業用ネットワークの機能ソフト化に取り組んできました。この度、工場内の産業用ロボットをネットワーク越しのサーバ上で制御する実証実験を行い、遠隔制御でも滞りなく制御できることと、産業用ネットワークの機能入替ができることを確認しました。これにより、工場内に専用機器を設置する必要がなく、クラウド上のサーバリソースを活用することが可能になります。将来的には、簡易な工場システムの構築も可能になり、産業界における人手不足解消に向けた工場の生産ラインの自動化の普及が加速化することが期待できます。
 なお、本技術については2024年5月16日、17日に開催予定の「つくばフォーラム2024*1」にて展示します。

1. 背景

近年日本では労働人口の減少が進んでおり、多くの業界で人手不足の課題に対して、省人化・自動化の検討が進んでいます。企業の工場の生産ラインについても自動化の検討が進められていますが、複数のロボットを制御する工場の構築においては、基盤となる産業用イーサネットプロトコルを決定し、そのプロトコルが使用可能なロボットや操作系機器を使用する必要があるため、機器や制御ソフトの選定自由度や拡張性が課題となっていました。またロボットを操作するための機器はロボットごとに用意されているため、工場内に多くの機器を設置する必要がありました。一方で、新興ベンダのロボットについては、操作系機器のサポートが少なく、容易にはシステムを構築できない課題がありました。
 これらの課題を解決するために、NTTは公立千歳科学技術大学と2022年度より共同研究協定を締結し、産業用ネットワークの機能をソフト化する技術に取り組んできました。

2. 技術のポイント

産業用ネットワークの機能ソフト化技術

従来、ロボットを制御するためのプロトコルドライバと、画像解析などの高度な制御を行う制御機能は、ロボットごとに専用の操作系機器に実装され、ベンダ独自仕様で作られていました(図1(a))。
 NTTは公立千歳科学技術大学と共同で研究を進め、これら専用機器に実装されている機能を分類し、ロボットと通信するプロトコルドライバレイヤと、ロボットの動作をコントロールする制御機能レイヤと、上位管理装置との連携を司る管理ドライバレイヤに分離し、それらのソフト化に成功しました(図1(b))。プロトコルドライバは、ロボットが対応しているプロトコルとの互換性が必要です。プロトコルドライバのソフト化と複数プロトコルの対応によって、ロボットのプロトコルに依存することなく、ロボットを制御できるようになります。また、制御機能は、ロボットの動作制御だけでなく画像解析による操作の判断の機能を有し、そのソフト化の実現によって動作内容に応じて柔軟に切替・更新できることが可能になります。管理ドライバは、他のシステムとの連携制御を可能とするインタフェース機能になります。OpenFlow*2やREST API*3対応によりネットワークとの連携制御やその他の機構との連携制御が可能になります。
 提案するサーバアーキテクチャで産業用ネットワークの機能をソフト化することで、図1(c)に示すような構成で、操作系機能をエッジ拠点に配置する構成が可能になります。このソフト化技術により、(1)ロボットの機器選定の自由度が高まり、目的とコストに合ったロボットを選定可能になります。また、(2)ロボット制御のための操作系機能を汎用サーバに実装することで、点在していた操作系専用機器を汎用サーバに集約ができます。さらに、(3)制御機能の汎用アプリが活用可能になり、動作機構構築のための開発コストの低減が見込まれます。また、これらのソフト化機構を、IOWNサービスで提供されるような光ネットワーク(IOWN APN*4)を活用することで、ネットワーク越しのエッジ拠点のサーバに実装できるようになります。

図1:現状の構成と提案構成の違い 図1:現状の構成と提案構成の違い

3. 実験の概要

今回技術確立したロボット操作に必要な操作系機能のソフト化に関し、その有効性を確認するために、ロボットを光回線で接続した汎用サーバで制御し、自動で動作制御させました。具体的には、工場内で動作することを想定したロボット付近にカメラとトランプを配置し、エッジ拠点を想定した光回線越しのサーバには、画像解析・動作制御・プロトコルドライバを実装しました(図2・3)。カメラで認識したトランプを、サーバで処理して、色に応じて自動振り分けをする実験を行い、滞りなく動作できることを確認しました。さらに、操作系機能の一つであるプロトコルドライバをNTTがソフト実装したPROFINET*5ドライバから公立千歳科学技術大学がソフト実装したEtherCAT*6ドライバに入れ替えて、異なるドライバでも動作可能であることも確認しました。

図2:実証構成 図2:実証構成

図3:実証の模様 図3:実証の模様

4. 各社の役割

―NTT:
  産業用ネットワークの機能ソフト化技術の研究開発
  PROFINETドライバの実装
  実証実験のユースケース検討
―公立千歳科学技術大学:
  産業用ネットワークの機能に係る知見の提供と技術協力
  EtherCATドライバの実装
  実証実験の制御機能の実装
 実証実験のシステム構築・動作確認は共同で実施

5. 今後の展開

本実証実験で得られた成果は、工場内に専用機器を設置する必要がなく、クラウド上のサーバリソースを活用することができ、また、ロボットの機器選定の自由度が高まり、初期投資を抑えて迅速に工場を立ち上げられることが期待できます。
 今後は、実際の中小企業の工場システムに導入できるよう、複数台のロボットの同時制御や実工場でのフィールドトライアルを通じた実用化に向けた機能拡充を図ってまいります。これにより、より早く産業の現場における人手不足解消に向けた工場の生産ラインの自動化の普及をめざしてまいります。

【用語解説】

*1つくばフォーラム2024
https://www.tsukuba-forum.jp/当該ページを別ウィンドウで開きます

*2OpenFlow
OpenFlowは、ソフトウェア定義ネットワーク(SDN)の環境で、ネットワーク機器をリモートで制御するプロトコル。

*3REST API
REST(Representational State Transfer)は、Webアーキテクチャのスタイルの1つであり、Web上でリソースを表現し、アクセスするための設計原則の集合体。REST APIとは、Webアプリケーションの機能を外部のクライアントアプリケーションから利用するためのAPIの一種。

*4IOWN APN
通信ネットワークの全区間で光波長を専有するオールフォトニクス・ネットワークで、IOWN構想を実現する商用サービス。

*5PROFINET
ファクトリーオートメーションで用いられる産業用イーサネットプロトコル。世界で最も普及しているプロトコル。

*6EtherCAT
ファクトリーオートメーションで用いられる産業用イーサネットプロトコル。高精度な同期制御を実現可能なプロトコル。

本件に関する報道機関からのお問い合わせ先

日本電信電話株式会社
情報ネットワーク総合研究所 広報担当
nttrd-pr@ml.ntt.com

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