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2025年2月20日

日本電信電話株式会社

NTT、NOKIA、アンリツ、IOWNオールフォトニクス・ネットワーク(APN)を用いて、世界で初めてモバイルフロントホールの動的経路変更の実証に成功
~トラフィック変動に応じた動的な基地局拠点運用により、電力効率の高いRANネットワークの実現をめざす~

発表のポイント:

  1. IOWN Global Forumのアーキテクチャに基づき、IOWN APNを5G RAN基地局のアンテナ側装置(Radio Unit/RU)と制御側装置(Distributed Unit/DU)の間のモバイルフロントホールに適用し、動的な経路変更の実証に成功。
  2. 本技術により、電力効率が高く、強靭なネットワークの実現が可能となります。

日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)は、IOWN オールフォトニクス・ネットワーク(All-Photonics Network、以下「APN」※1)を、5G Radio Access Network(RAN)基地局のアンテナ側装置(Radio Unit、以下「RU」)と制御側装置(Distributed Unit、以下「DU」)間のモバイルフロントホールに適用することで、モバイルフロントホールの動的経路変更ができることを、Nokia、アンリツと共同で実証しました。実証実験では、IOWN APNを用いた2つのモバイルフロントホールにユーザトラフィックが流れている環境で、動的経路変更を行っても8分以内で切り替わり、変更経路以外にてユーザトラフィックに影響がないこと、および切り替わった後でもユーザトラフィックが正常に流れることを確認しました。本成果により、モバイルトラフィック変動に応じてRUが接続するDU拠点を柔軟に切り替え、稼働するDU拠点の片寄せを行うことが可能となり、不稼働となるDU拠点の通信設備を含め電力削減に貢献します。さらに経路の障害時には迅速に別のDU拠点に経路を切り替え迂回することで、サービスへの影響を低減しネットワークの信頼性向上に貢献します。

1. 研究の背景

現在、5Gの技術が普及する中で、モバイルトラフィックは増加傾向にあり基地局や通信設備の消費電力が増加しつつあります。6Gではさらに高速な通信や大量のデータ伝送が期待されるため、その分、消費電力の増大も予測されています。モバイルキャリアやモバイルベンダにとって電力の効率化が重要な課題であり、これまで基地局装置の省電力化や、仮想化技術の適用による電力削減など、この課題に対処してきました。
 本取り組みでは、動的経路変更によって基地局および通信設備を含めたさらなる電力削減とネットワークの信頼性向上の実現をめざしています。モバイルトラフィック量は人の移動や人が多く利用する時間帯により変動します。例えばオフィス街では、昼のトラフィック量が高くなり多くのDUが必要となる一方で、夜はトラフィック量が低いため本来DUは少なくて済みます。しかし現状では、DUを必要数以上に稼働させている場合があります。これは、RUとDU間を1対1で固定的に光ファイバにて接続する形態(ダークファイバ)が主流となっており、RUがカバーしているエリアのサービス継続には接続されたDUを稼働させる必要があるためです。
 IOWN APNをモバイルフロントホールに用いることで、RUとDU間の1対1で物理的に直結した接続構成からRUが接続するDUを動的に経路変更することが可能な構成になります。これにより、モバイルトラフィック量が高いときにはすべてのDU拠点を稼働させ、トラフィック量が少なくなってきたらRUは接続先のDU拠点を切り替え、サービスを継続しながら運用するDU拠点を片寄せすることが可能となります。不稼働となるDU拠点は、通信装置だけではなく空調含め拠点全体での電力削減を実現します。さらに、動的経路変更はRUとDU間の経路に障害が発生した際に、障害部分を迂回させ運用可能なDU拠点に迅速に切り替えることが可能となります。これによりRUがカバーしているエリアのサービスを継続させることができ、ネットワークの信頼性向上に繋がります。

図1. モバイルフロントホールにAPNを用いた動的経路変更 図1. モバイルフロントホールにAPNを用いた動的経路変更

2. 実証実験の概要

本実証では、動的経路変更時の通信影響を可能な限り少なくするため、RUの収容変更とAPNの経路変更を最適に組み合わせた手順を検討し、その手順にて動的な経路変更が可能であることの検証を行いました。
 検証の環境として、2つのモバイルフロントホールを30kmの距離としその間にIOWN APNを適用し、ユーザトラフィックを流している環境下で、vDU装置のRU収容の設定変更とAPN装置の光パス切り替え設定を行い、動的経路変更にかかる時間と通信に対する品質を含めた影響、切り替えた後の通信品質を確認しました。
 なお、検証においては、IOWN APN機器構成や伝送方式など、IOWN Global Forum※2のIOWN for mobile networksのProof of Concept(PoC)Reference※3に準拠の上実施しました。

3. 実証実験の結果

実証検証の結果、伝送距離30kmの環境で動的経路変更が8分以内※4で完了し、切り替え後データ転送時の速度やロス率などの通信の品質に影響がないこと、変更した経路のユーザトラフィックは中断となるが、それ以外の経路には影響がでないこと、また経路変更前後で、消費電力が20%程度※5削減できることを確認しました。

図2. 実証環境と結果 図2. 実証環境と結果

4. 実証実験における各社の役割

IOWN APN を適用した動的経路変更の実証(図2)を以下の分担で行いました。

■NTT:端末、RU、vCU/vDUなどの5G モバイル通信で必要な機器と通信の正常性確認と品質測定が可能なテスト環境を提供し実証実験を実施。
■Nokia:IOWN APN機器であるFlexible Bridge、APN-T、APN-G、APN-Iを提供し実証実験を実施。
■アンリツ:計測器を提供し、APNの遅延測定やPTP/Sync-Eの正常性動作確認を実施。

5. 今後の展開

今回の実証実験により、IOWN APNをモバイルフロントホールに適用することで動的経路変更が正常に動作できることを実証しました。これにより、モバイルトラフィック変動や障害時に動的なDU拠点運用が可能となり電力削減やサービス影響の低減が図れます。今後は、実際の基地局の構成やユーザ数やトラフィックを模擬しトラフィック予測による自動経路変更判断を組み合わせIOWN APNの動的経路変更による電力削減効果の実証実験とサービス影響の極小化に向けて動的経路変更にかかる時間短縮に取り組み、電力効率が高く、強靭なネットワークの実現をめざします。

※1IOWN APN(オールフォトニクス・ネットワーク):IOWNは、主に、ネットワークだけでなく端末処理まで光化する「オールフォトニクス・ネットワーク(APN)」、サイバー空間上でモノやヒト同士の高度かつリアルタイムなインタラクションを可能とする「デジタル・ツイン・コンピューティング」、それらを含む様々なICTリソースを効率的に配備する「コグニティブ・ファウンデーション」の3つで構成されます。
APNは、ネットワークから端末、チップの中にまで新たな光技術を導入することにより、これまで実現が困難であった超低消費電力化、超高速処理を達成します。1本の光ファイバ上で機能ごとに波長を割り当てて運用することで、インターネットに代表される情報通信の機能や、センシングの機能など、社会基盤を支える複数の機能を互いに干渉することなく提供することができます。
https://www.rd.ntt/iown/当該ページを別ウィンドウで開きます

※2IOWN Global Forum(IOWN GF):これからの時代のデータや情報処理に対する要求に応えるために、新規技術、フレームワーク、技術仕様、リファレンスデザインの開発を通じ、シリコンフォトニクスを含むオールフォトニクス・ネットワーク、エッジコンピューティング、無線分散コンピューティングから構成される新たなコミュニケーション基盤の実現を促進する新たな業界フォーラムです。
https://iowngf.org/当該ページを別ウィンドウで開きます
https://group.ntt/jp/newsrelease/2019/10/31/191031a.html

※3IOWN for mobile networkのPoC Reference:IOWN Global Forum内でモバイルネットワーク領域における技術検討を行った結果を実証実験の技術条件として定義し公開しています。
https://iowngf.org/wp-content/uploads/formidable/21/IOWN-GF-RD-MFH_over_APN_PoC_Reference_1.0.pdf当該ページを別ウィンドウで開きます

※4作業時間や確認時間を自動化により短縮し実現可能な時間。

※5概算値。ユーザトラフィックは最低限であり変動がない条件の負荷で実証。

本件に関する報道機関からのお問い合わせ先

日本電信電話株式会社
研究開発マーケティング本部
研究企画部門
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