2025年3月24日
日本電信電話株式会社
株式会社NTTドコモ
日本電気株式会社
発表のポイント:
2022年からNTT、ドコモ、NECは6G実現に必要となる技術や課題に向け取り組みを進めています。今回の発表は6G時代の無線需要に備え、テラビット級の大容量無線伝送の実現をめざした取り組み成果です。
日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)、株式会社NTTドコモ(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:前田 義晃、以下「ドコモ」)、日本電気株式会社(本社:東京都港区、取締役 代表執行役社長 兼 CEO:森田 隆之、以下「NEC」)は、2030年代の無線需要を支える大容量無線伝送の実現をめざし、71GHzから86GHzのミリ波帯において、OAM(Orbital Angular Momentum:軌道角運動量)モード(※1)多重伝送技術を用いて上り/下りの双方向でのリアルタイム無線伝送により、100GHz未満の周波数で世界最高となる毎秒140ギガビットの伝送容量の実証実験に成功しました(図1)。
OAMモード多重伝送技術は、同じ周波数・同じ時間に複数の異なるOAMモードをもつ複数の電波にそれぞれ信号を多重して送信することで、固定局間の無線伝送を大容量化する技術です。100Gbps超の大容量無線伝送技術は、固定局間の通信回線を光ファイバだけではなく無線接続とすることを可能にし、柔軟なバックホール(※2)の構築、イベント時の移動基地局との無線接続への適用、災害時の臨時回線などへの利用が期待できます。6Gやそれ以降の無線システムにおける、VR/AR(仮想現実/拡張現実)や高精細映像伝送などの将来の多様なサービスを支える大容量の無線バックホールとして貢献することが期待されます。
今回の成果は2025年3月24日から開催される国際会議WCNC(Wireless Communications and Networking Conference)(※3)にて発表を予定しています。
図1:実環境でのリアルタイム無線伝送技術(100GHz未満)に対する本成果の位置づけ、OAMモード多重伝送装置
6G時代には、自動運転や遠隔医療手術など高精細な映像伝送や仮想現実(VR)や拡張現実(AR)など高機能なアプリケーションの登場により無線通信需要が加速し、無線通信の大容量化の必要性が高まることが想定されます。NTT、ドコモ、NEC、は、電波の性質の一つである軌道角運動量(OAM)を用いた新しい空間多重方式による無線伝送の大容量化に取り組んでいます(図2)。
OAMとは、電波の性質を表す物理量の一つで、送信電波の同一位相の軌跡が進行方向に対して螺旋状を描くように、送信アンテナから送信される信号の位相差を設定することで生成されます。また、受信側では、受信アンテナで受信した信号の位相を、送信とは逆回転して合成することで受信でき、異なる螺旋構造を持つ複数のOAMモードに対応する無線信号を重ねても、互いに干渉することなく分離することができます。この特徴を利用して、複数の異なるデータを空間上に多重することで、限られた帯域で多くのデータを送ることができる技術がOAMモード多重伝送技術です。これにより、帯域が広く確保できない100GHz未満のような周波数帯においても、大容量の無線伝送が可能となります。実用化が進んでいる既存の無線システムの周波数帯である71GHzから86GHzのミリ波帯(以下、E帯)を用い、デジタル信号処理回路を用いたOAMモード多重伝送技術により、40mの距離において単方向で毎秒14.7ギガビットのリアルタイム伝送実験の成功が報告されていますが(※4)、6Gやそれ以降の無線システムに向けては、リアルタイム伝送の更なる大容量化が求められます。
図2:OAMモード多重伝送のイメージ
今回、NTT、ドコモ、NEC、は高周波数帯OAMモード多重伝送技術の実証実験協力に基づき、OAMモード多重伝送を用いたリアルタイム無線伝送技術を検討し、その実証実験を実施しました(図3)。
NECは、従来のデジタル信号処理回路(※4)を拡張することで変調速度を約2.6倍の300Mbaud(※5)とし、E帯において双方向通信に対応するとともに、片方向当たり1GHz幅の信号で最大で毎秒70ギガビットのリアルタイム伝送が可能なOAMモード多重伝送装置を開発しました。ドコモは、OAMモード多重伝送の利用シーン拡張を検討し、OAMモード反転受信技術を用いて、壁などによる反射を介して伝送する、反射シナリオなどで実証実験を実施しました。NTTは、伝送帯域を2倍とするための回線設計と、伝送距離の長距離化と反射シナリオに対応するOAMモード制御技術を考案しました。3社が協力し、①22.5m距離における双方向伝送、②45m距離における双方向伝送、③反射板を介した22.5m距離における双方向伝送、の3つのシナリオで実証実験を実施し、それぞれ、毎秒139.2ギガビット、毎秒104.0ギガビット、毎秒139.2ギガビットの伝送容量を達成しました(図4)。
図3:各社の役割分担
図4:左 伝送実験構成図と伝送シナリオ 右 伝送実験の様子(シナリオ①)
今回の成果により、OAMモード多重伝送を用いて双方向で合計毎秒100ギガビットを超える大容量のリアルタイム無線伝送を実証しました。このような大容量無線伝送技術は、バックホールの回線を光ファイバだけでなく無線接続とすることを可能にし、柔軟なバックホールの構築、イベント時の移動基地局との無線接続への適用や災害発生時の臨時のバックホール回線への適用など、6Gやそれ以降における無線通信需要を満たす無線通信システムに貢献できると期待できます。今後、リアルタイムの大容量無線通信を利用した中継伝送など、OAMモード多重伝送技術を用いた無線バックホール/フロントホールへの適用などのユースケースの検討を進め、6G時代のVR/AR(仮想現実/拡張現実)や高精細映像伝送、コネクティッドカー、遠隔医療など、将来の多様なサービスを支える基盤技術となるよう、ミリ波以上の周波数帯における無線伝送の大容量化、長距離化の検討により、無線需要を支える柔軟なネットワークの構築に取り組んでまいります(図5)。
図5:無線バックホール/フロントホールへの適用例
(※1)OAM(Orbital Angular Momentum):軌道角運動量。電波が持つ角運動量の一つであり、異なる軌道角運動量を持つ電波が直交していることから、複数データの多重/分離ができます。
(※2)バックホールとは基地局と基幹通信網を繋ぐ中継回線です。
(※3)T. Kageyama, T. Yamada, R. Kudo, M. Kawai, S. Morimoto, E. Sasaki, A. Fukuda, F, Hada, Y. Suzuki, "Demonstration of real-time OAM multiplexing over 100 Gb/s in E-band," in Proc of IEEE Wireless Communications and Networking Conference (WCNC 2025), Mar. 2025.
(※4)M. Hirabe, R. Zenkyu, H. Miyamoto, K. Ikuta, and E. Sasaki, "40 M Transmission of OAM Mode and Polarization Multiplexing in E-Band," in Proc. of 2019 IEEE Globecom Workshops, Dec. 2019.
(※5)変調の速度を表す単位で、1秒あたりの変調回数を示すものです。
本件に関する報道機関からのお問い合わせ先
日本電信電話株式会社
先端技術総合研究所
企画部 広報担当
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株式会社NTTドコモ
広報担当
E-Mail:dcmpr@nttdocomo.com
日本電気株式会社
テレコムサービス企画統括部
E-Mail:contact@tsbu.jp.nec.com
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