2025年11月10日
NTT株式会社
株式会社 東芝
発表のポイント:
NTT株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)と株式会社東芝(本社:神奈川県川崎市、代表取締役社長執行役員 CEO:島田 太郎、以下「東芝」)は、NTTのIOWN構想の中核技術である「All Photonics Network(APN)」および「RDMAアクセラレーション技術※4」と、東芝が開発したクラウド型PLC(Programable Logic Controller)「Meister Controller Cloud PLCパッケージ typeN1」を活用した共同実験により、約300km離れた拠点から制御周期20ms以内での生産設備の遠隔制御と、業界標準要件である1設備につき4fps(250ms)という短時間でのAI外観検査に製造業界で初めて成功しました。これによりクラウド型PLCにおいても既存のローカルPLCで行っている生産ラインの制御に関し、広範な要件を同等に満たすことができます。
この成果は、製造業が直面する人材不足や技術継承の課題に対し、クラウド移行による柔軟かつ効率的な制御環境の提供を可能にするものであり、工場DXの加速に大きく貢献するものです。
なお、本共同実験で確認した技術については、2025年11月19日(水)~26日(水)にNTT武蔵野研究開発センタでNTTが開催予定の「R&Dフォーラム2025※5」の「IOWN×スマートファクトリー」の展示ブース、および2025年11月19日(水)~21日(金)に東京ビッグサイトで開催予定の「IIFES2025※6」の東芝の展示ブースにてご紹介します。「IIFES2025」の会期中は、東京ビッグサイトとNTT武蔵野研究開発センタを商用APN回線で接続し、遠隔制御のデモンストレーションを行います。
図1. 共同実験の全体像
製造業では、少子高齢化による働き手不足やベテラン技術者のスキル継承が喫緊の課題となっています。東芝は、2024年5月に業界内で先駆けて、インターネット回線を用いたクラウド型PLC「Meister Controller Cloud PLCパッケージ typeN1」※7の提供を開始し、ローカルのOTシステムのクラウド移行を実現しました。これまでは、制御における応答性能が比較的緩やかな製造ライン向けにクラウド型PLCの提供を進めてきましたが、今後適用範囲を拡大するためには、低遅延かつゆらぎの少ないネットワークが必要でした。
そこで、NTTのAPNの低遅延でゆらぎの少ない通信特性を生かしてクラウド型PLCの制御周期を高速化し、その適用範囲を拡大すべく、両社での協議を開始し、本共同実験を実施しました。
NTT武蔵野開発研究センタに構築した模擬環境において、生産設備から300km離れたクラウド型PLCにより、制御周期20ms以内の生産設備の遠隔設備制御に成功しました。20msの制御周期を実現することで、自動車産業の生産ラインなど高速な制御が必要な設備要件を満たすことが可能になります。また、NTTドコモソリューションズの画像認識AIソリューション「Deeptector®※8」とNTTのRDMAアクセラレーション技術を活用することで、製品の外観検査においてローカル環境と同等の水準で300km離れた地点間でも実現可能であることを確認しました。
本成果は、工場DXの推進に向けた重要なステップです。PLCの設定情報をクラウド上でメンテナンス可能とすることで、生産ラインの新設・設定変更が実施できるようになり、現地派遣工数の削減と、複数の工場を跨る生産性向上が期待されます。さらに、生産ラインでの外観検査AIのクラウド移行が可能となることで、クラウドの柔軟性を活かした運用が実現し、複数工場における品質の標準化にも寄与します。
図2. 実験構成
エンド・ツー・エンドでの光波長パスを提供する波長ネットワークにより、現在のエレクトロニクス(電子)ベースの技術では困難な、圧倒的な低消費電力、高速大容量、低遅延伝送の実現をめざす技術
短距離での大容量低遅延データ転送が可能なRDMA通信※9に対し、転送性能を維持したままAPNを介した中長距離へ延伸することを可能にする技術
制御機能にあたる「制御コア」をクラウド上に実装する仕組みや、クラウド・エッジ間通信を独自開発することで、従来、現地で行われていたPLCによる制御系システムの構築・メンテナンス作業をクラウド上で完結可能な技術
図3. 体制と提供技術
NTTおよび東芝は、今回実証したAPNを活用したクラウド型PLCサービスの実装に向けて、サービスの内容や体制の具体化を進め、2027年度以降の実用化をめざします。また、本共同実験の成果をベースに、PLCと外観検査AIに加えて故障予兆AIなどの高度演算処理をクラウドに移行することで、設備管理工数の削減、クラウドリソースの有効活用、電力消費の最適化など、工場全体のさらなる効率化をめざしてまいります。
※1製造業界初:当社調べによるもの。
※2汎用のネット回線で制御を行う場合の制御周期は100ms~1s。
※3この数値は、2017年より画像認識AIソリューション(Deeptector®)を提供しているNTTドコモソリューションズがこれまでに様々なお客様に対して提供してきたサービス(検品や画像処理によるレポーティング等)に対して、十分に要件を満たしている処理速度。
※4RDMAアクセラレーション技術:RDMA通信の転送が成功したかを確認するループバック信号を端末側で擬似生成することでアプリケーション側のRDMA利用方法を変更することなく長延化する技術。
※5「NTT R&D FORUM 2025 IOWN∴Quantum Leap」公式サイト https://www.rd.ntt/forum/2025/
※6IIFES2025:製造業のDX・自動化・AI活用をテーマにした国内最大級の技術展示会 https://iifes.jp/
IIFES2025 東芝グループ 特設サイト https://www2.toshiba-infrastructure.jp/exhibition_smart-manufacturing/iifes2025.html
※7Meister Controller Cloud PLCパッケージ typeN1:クラウド上で制御を実行できるPLC。クラウド上に制御コアを配置することから、遠隔制御や保守が可能。設備のリアルタイムな稼働データがクラウド上で利用可能となることで、デジタルツインやAI連携といった新たな付加価値を提供することも可能。
※8Deeptector®:https://www.nttcom.co.jp/deeptector/
※「Deeptector®」は、NTTドコモソリューションズ株式会社の登録商標です。
※9RDMA通信:データセンタ、高性能計算、リアルタイムシステムなどの短距離のデータ転送で広く用いられている、ネットワーク越しにメモリ上のデータを直接転送する技術。
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