気候と自然は密接に関連しており、気温上昇により、水不足や生態系の変化などが連鎖的に発生するリスクは高まっています。事業運営においても、気候変動による災害の激化や自然への負荷の増加によって物理リスクが大きくなることが予想されています。世界的に自然保全を求められる傾向が強まった場合、事業会社は積極的に対応を進め、規制などの移行リスクを回避することが必要です。これらの課題に対して、NTTグループでは様々な対策を講じています。そして、その対応状況について、TCFD・TNFDのフレームワークに沿って情報開示しています。
NTTグループでは、サステナビリティの推進を重要な経営課題と捉え、特に重要な事項については取締役との議論を踏まえて決定しています。
取締役による監督体制としては、取締役会直下にサステナビリティ委員会(委員長:代表取締役社長)を設置し、グループ全体の活動方針やその進捗状況を管理しています。サステナビリティに関する方針(憲章及び付随する方針等の制定・改廃、特に重要な指標の決定)は、サステナビリティ委員会を経て取締役会で決定しています。
サステナビリティに関する課題のうち、重要な解決すべき課題・アクティビティとして選定したプロセスについては、2021年度に、第三者機関・ISO26000・GRI Standards等評価機関、SDGs、世界トレンド、社内ワークショップ、他企業のマテリアリティ等を参考に、サステナビリティを取り巻く新たな課題を網羅的に考慮し、NTTグループとして取り組むべき課題をグローバル規模で議論、選択し特定しました。また、取り組むべき優先度については、"企業としての成長"と"社会への課題解決"へのインパクトの両面で評価を行い、社会課題の解決と事業の成長を同時実現するマネジメントをめざし、外部有識者の意見も取り入れ、優先度を評価しました。
上記において特定した課題及びその優先度の設定に関する妥当性は、サステナビリティ委員会で審議した後、取締役会にて定期的(年1回)にレビューし、随時見直しを行うこととしており、2023年4月20日開催の取締役会において、レビューした優先度を踏まえ、①気候変動、②人的資本、③新たな価値創造、④レジリエンスの4項目を2023年度のサステナビリティに関する重要項目として決定しています。
なお、気候変動に関してはサステナビリティ委員会の下部組織である、Green Innovation委員会、またNTTグループ各社とのグループGreen Innovation委員会において、温室効果ガス排出量等の進捗管理等を実施しています。
NTTグループでは、環境エネルギービジョンNTT GreenInnovation toward 2040を策定し、2040年のカーボンニュートラル実現に向けて環境負荷低減の取組みを推進しています。自らのグリーン電力化の推進として再生可能エネルギーの活用を進めるほか、圧倒的な低消費電力をめざしたIOWNの研究開発の推進、インターナルカーボンプライシング制度の導入、グリーンボンドの活用等を進め、環境エネルギーへの取組み及び情報開示の充実を図っています。
機会への対応としては、データセンターにおける再生可能エネルギーメニューの提供拡大や、温室効果ガス排出量可視化プロセスの構築支援、法人や個人のお客さまに対するグリーン電力販売の拡大等に取り組んでいます。
また、NTTグループは、2023年5月に公表した新中期経営戦略の取組みの一つである循環型社会の実現として、グリーンエネルギーとICTの組み合わせにより実現するグリーンソリューションの推進、再生可能エネルギー発電事業の拡大及び地産地消型の最適化・効率化された電力の安定供給の実現、様々な産業間での資源の循環、地域創生の更なる加速による、持続可能な社会の実現をめざします。あわせて、ネットゼロに向け、NTT Green Innovation toward2040のScope3への拡大をめざします。
【シナリオの前提条件】
1.5℃シナリオ:NTTグループの温室効果ガス排出量の約90%は電力使用に起因しており、炭素価格メカニズムの導入には相当なリスクを伴うことが予想されます。このリスクを評価するためにIEA WEO 2022ネットゼロ排出シナリオ(NZE)を参照しています。
このシナリオでは2030年に先進国向けに設定される炭素価格は130USD/t-CO2になると予想されています。
4℃シナリオ:NTTグループでは人々の生活や暮らしを守るサービスを数多く提供しており、自然災害の発生による安定的なサービス提供ができなくなることは大きなリスクと認識しています。そのリスク評価には、気候変動の追加的な緩和策を講じないシナリオ「IPCCのRCP8.5」を参照しています。
このシナリオを組み込んだ「気候変動の観測・予測及び影響評価統合レポート2018」では、日本各地で大雨が大幅に増加し、土砂崩れの発生確率の増大、都市近郊の丘陵地帯への多大な被害が生じることが想定されています。
(注)
1.2030年度時点での1.5℃シナリオ・4℃シナリオにおける影響度
2.時間軸短期(3年未満)、中期(3-6年未満)、長期(6年以上)を記載、影響度を3段階で記載(▲:小、▲▲:中、▲▲▲:大)
3.省エネルギー化の推進として、インターナルカーボンプライシングの社内炭素価格を国際エネルギー機関の炭素税の将来予想価格(140USD)をもとに2025年4月より21,000円/t-CO2に設定。調達(製品選定)等の意思決定に活用している
※推定される年間利益影響:
①カーボンプライシングが導入された場合( ▲250億円程度)
②再生可能エネルギー賦課金・再生可能エネルギー導入のコスト増(▲40億円程度)
③豪雨や台風による災害復旧 (2022年度:▲30億円程度、2023年度:▲24億円程度、2024年度:▲15億円程度)
【前提条件及び算出根拠】
①カーボンプライシング(140USD/t-CO2)×2030年度目標排出量
(2013年度Scope1&2排出量実績465万トンを基準に2030年度▲80%削減)
〈カーボンプライシング IEA「World Energy Outlook 2024」における2030年度の予想単価、Advanced economies:140USD〉
②再生可能エネルギー賦課金 2030年度:4.1円/kWh、2024年度:3.49円/kWh
③2022~2024年度の豪雨や台風等による復旧等の概算影響額
NTTグループでは、年間80億kWh以上の電力を利用しており、AI活用等で更なる増加が想定されます。脱炭素化社会の到来により、再生可能エネルギー拡大に伴う再生可能エネルギー賦課金や炭素税制度の導入は事業に大きな影響を及ぼします。このようなリスクに対して、環境エネルギービジョン「NTT Green Innovation toward 2040」を策定し、2040年のカーボンニュートラル実現に向けて環境負荷低減の取り組みを推進しています。
一方、脱炭素化に向け社会全体における再生可能エネルギーへのニーズの高まりは、当社にとって機会でもあります。NTTグループは、研究開発やICT基盤、人材など、様々な経営資源や能力をフル活用し、パートナーのみなさまと協創しながら、社会的な課題を解決してきました。そこで、社会へのソリューション提供を通じてGX分野でInnovation(変革)を起こすべく「NTT G×Inno」を立ち上げました。具体的には、グリーンエネルギー×ICTで実現するグリーンソリューションの推進、再生可能エネルギー発電事業の拡大及び地産地消型の最適化・効率化された電力の安定供給を実現しています。また、各企業の温室効果ガス排出抑制に向け、オンプレ型からよりエネルギー効率の高いクラウド型のデータセンターに集約するニーズも高まることが予想され、高効率なデータセンターの普及は、当社にとって機会にもつながります。
NTTグループでは、業務のDX化の加速、リモートワークの推進あるいはエネルギーマネジメントシステムなどのICTサービスの普及を通じて、企業や社会の温室効果ガス排出抑制へ取り組んでいますが、気候変動問題への更なる意識の高まりに伴い、ステークホルダーから同業他社と比べて環境意識が低い企業として認識されてしまうと、企業評価が失墜し、顧客離れによる収入減少や株価下落等の財務的影響を受けるリスクがあります。
このようなリスクに対して、NTTグループは、環境エネルギービジョン「NTT Green Innovation toward2040」を通じた環境負荷低減の取り組み推進により、CDP(気候変動)において、最高評価であるAランクを2年連続で獲得しました。また、Scope1&2の目標は、「1.5℃水準」(2021年)、Scope1&2&3の目標は、「NetZero」(2025年)をSBTiより認定取得しました。
日本国内の取り組みとして、各種通信設備、建物、鉄塔などは以下の風水害防護をしています。
| ビルディング・タワー | アウトサイドプラント | |
|---|---|---|
| 風水害防護 |
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|
詳細はNTT東日本のホームページをご覧ください。
NTTグループでは、通信ネットワーク・情報システムをはじめ、社会と経済活動を支え、国民生活の安全を守るライフラインとして欠かせないサービスを数多く提供しています。これらのサービス提供に関して、地震・津波・台風・洪水等の自然災害によって、事業運営に混乱が生じ、サービスを安定的に提供できなくなるリスクがあります。また、サービス中断によって発生した損害についてNTTグループが責任を負う可能性や、信頼性や企業イメージが低下するおそれがあります。
自然災害によるサービス中断のリスクを低減するため、移動電源車やポータブル衛星装置などの機動性のある機器の配備、各地域での防災訓練に参加するなどの対策を講じています。また、通信設備や建物などは、自然災害を想定した設計基準を定め、耐災性を確保しています。例えば、洪水などによる浸水を防ぐため、立地条件にあわせて水防扉などを設置し、通信設備への浸水防止を図っています。一方、自然災害やシステム障害等のリスクは、お客さまにとっても同様に対応が必要となることから、BCPサービスの需要増加が見込まれます。NTTグループでは、分散型エネルギーシステムを活用したバックアップ電源サービスを提供しており、災害で送配電網等が損害を受けた場合の事業継続にも貢献していきます。
NTTグループでは、国内外に多くの通信ビルやデータセンターを保有しています。気温が大幅に上昇した場合には消費電力が大きく上昇するリスクがあります。
オペレーションコスト増加を最低限に抑えるため、空調設備関連の消費電力削減施策を継続して推進しています。具体的には、ワイヤレス温度センサーモジュールを配置し、各センサーの温度計測値に合わせて空調機を自動制御し省エネルギーを実現する空調最適制御システムを導入しています。また、装置の排熱を効率的に逃がすディフューザや、ブランクパネルの設置、二重床パネルの最適配置などによって空気の流れを制御することで、温度が高くなってしまうヒートスポットを解消するとともに、空調機の設定温度の適正化による省エネルギーを実施しています。
NTTグループでは、サステナビリティに関する重要項目のリスクや機会について、サステナビリティ委員会で議論し、取締役会に報告しています。
なお、NTTグループのリスク管理プロセスとして、身近に潜在するリスクの発生を予想・予防し、万一リスクが顕在化した場合でも損失を最小限に抑えること等を目的として、リスクマネジメントの基本的事項を定めたリスクマネジメント規程を制定し、代表取締役副社長が委員長を務めるビジネスリスクマネジメント推進委員会及びグループビジネスリスクマネジメント推進委員会が中心となって、リスクマネジメントのPDCAサイクルを構築し運用しており、サステナビリティ関連のリスクの識別、評価、管理に関するプロセスはNTTグループの総合的なリスク管理プロセスに統合されています。
気候変動や資源循環・生物多様性は、事業環境及びそれに対応した戦略にかかるリスクの1つとしてビジネスリスクマネジメント推進委員会で扱われています。
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