2021年3月 1日
2021年3月1~5日に開催予定の国際会議Financial Cryptography and Data Security 2021 (FC21) にて、NTTグループの著者を含む下記3件の論文が採択されました。
FCは主に金融や商用システムに関わる暗号・セキュリティ・プライバシ保護分野の難関国際会議で、FC21では54本の論文が採択されています(採択率54/217=24.9%)。
「Efficient Noise Generation to Achieve Differential Privacy with Applications to Secure Multiparty Computation」は元データや統計値などの情報を全て秘匿したまま、差分プライバシと呼ばれる安全性指標を満たすように値を加工する手法を提案したものです。本論文では差分プライバシに基づく秘密計算(データを暗号化したまま計算できる技術)のための汎用的フレームワークを示した他、差分プライバシで多く用いられる2種類のノイズを従来よりも効率的に生成する方法を提案しており、これにより秘密計算による統計分析結果をより安全かつ円滑に提供できることが期待されます。本成果は、東京大学/産業技術総合研究所の江利口礼央氏、縫田光司准教授、筑波大学の國廣昇教授との共同研究によるものです。
「Selfish Mining Attacks Exacerbated by Elastic Hash Supply」はブロックチェーンにおいて、攻撃者の得るマイニング利益を上げ他のマイナーの利益を下げる、セルフィッシュマイニングと呼ばれる攻撃手法に関する論文です。従来の理論的分析では、セルフィッシュマイニングに対抗して他のマイナーが戦略を変更することはないと仮定していました。本論文は実在する3つの暗号通貨のデータを用いて、マイニングの収益性とトータルハッシュレートの間に統計的有意な相関があり、マイナーが実際には収益性の変化に対応していることを確認しています。加えて本論文は、攻撃者の初期のシェア次第でセルフィッシュマイニングがチェーンを均衡、または崩壊へ導くことを明らかにしています。
「Instant Block Confirmation in the Sleepy Model」はブロックチェーンプロトコルに関する論文です。ブロックチェーンでは、ステーク(掛け金)の大部分をブロックチェーンの成長に関与しない参加者が所持していることで、セキュリティが低下してしまいます。最新の解決策(The Sleepy Model of Consensus)を用いれば大多数の参加者がオフラインであっても安全な運用が可能となりますが、一方で取引の承認を遅らせる必要も生じてしまいます。Algorandのような既存のビザンチン合意に基づくブロックチェーンであれば、取引が台帳に生じ次第すぐに承認されますが、その際にユーザがオンラインでなければ取引を進行できません。本論文では参加者が常にチェーンへの関与を求められないような、Sleepy Modelにビザンチン合意に基づくブロックチェーンを適用した手法を提案しています。
NTTセキュアプラットフォーム研究所とNTT Research Cryptography & Information Security (CIS) Labは引き続き、暗号技術、セキュリティ技術、プライバシ保護技術の研究開発を通じて、安心・安全なサービスの実現に貢献してまいります。
トピックスに記載している情報は、発表日時点のものです。
現時点では、発表日時点での情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承いただくとともに、ご注意をお願いいたします。
NTTとともに未来を考えるWEBメディアです。