2023年12月22日
NTTサービスイノベーション総合研究所 社会情報研究所の佐々木悠特別研究員と弊社研究所に在籍されていた青木和麻呂氏(現:文教大学)が、国際暗号学会(IACR)が主催する暗号理論の難関国際会議「Asiacrypt 2023」において、「Test-of-Time賞」を受賞しました。この賞は、Eurocrypt、Crypto、Asiacryptのそれぞれにて15年前に発表された論文の中から、その後の研究に対して長期にわたり影響を与えた論文に授与されるもので、日本人では初めての受賞です。
受賞論文では、暗号学的ハッシュ関数に対する新しい攻撃手法である「中間一致型原像攻撃」を提案しました。この攻撃手法では、ハッシュ関数の出力値に対して、その出力値となるハッシュ関数の入力値を、総当たりよりも高速に発見することができます。当時、原像攻撃に対して安全だと信じられていたハッシュ関数4-pass HAVALに対して、世界で初めて原像攻撃に成功しました。その後のハッシュ関数の設計は、必ず中間一致型原像攻撃に対して安全であるように設計されるようになり、新しい安全性の評価軸を作ったことで、安全なハッシュ関数の設計と普及に貢献しました。また、中間一致型原像攻撃は、ハッシュ関数だけでなく、その後ブロック暗号に対する鍵復元攻撃にも応用され、多くの後続研究に影響を与えました。これらの点が評価され、Test-of-Time賞に選出されました。
本研究を起点として発展してきた研究を含め一連の研究が、今日のICTサービスを安全にし、さらにはこれからのスマート社会の実現を可能とします。NTT社会情報研究所は引き続き、暗号技術の研究開発を通じて、安心・安全なサービスの実現に貢献してまいります。
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