2024年4月10日
NTT社会情報研究所とNTT物性科学基礎研究所は、文教大学、群馬大学および長崎県立大学と共同で、世界で初めて光演算素子を用いた共通鍵暗号の暗号関数の実装方式を考案し、その方式を基に作製した光回路の原理検証を行い、それが正しく動作することを確認しました。この結果をまとめた論文は、2024年4月15日~18日にIEEE Photonics Societyが日本で開催する、シリコンフォトニクスに関する著名な国際会議2024 IEEE Silicon Photonics Conferenceにおいて発表されます。
高橋 順子(NTT社会情報研究所)、北 翔太(NTT物性科学基礎研究所)、新家 昭彦(NTT物性科学基礎研究所)、青木 和麻呂(文教大学)、千田 浩司(群馬大学)、星野 文学(長崎県立大学)
NTTが提唱するIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)では、コンピューティング環境や各種電子機器を光技術によるデバイスに置き換えて光ネットワークで結ぶことで低遅延・低消費電力などの情報処理基盤の実現をめざしています。現在は、暗号演算のような複雑なデジタル演算は電子回路で行われていますが、光技術で様々な演算処理を行う中で暗号演算も光回路で実装することにより、電子回路に比べて、遅延は1/200、電力効率は100倍といった更なる低遅延・低消費電力の演算の実現を目標としています。
そこで本論文では、光演算素子を用いて、標準化されている軽量暗号の主要な非線形暗号関数であるS-box回路の実装方式を考案しました。その実装方式を基に、マッハツェンダー型光変調器およびY分岐素子を用いて、シリコンフォトニクス技術により、各々のS-box回路を作製し、正しく演算できることを世界で初めて実証しました。これにより、複雑なデジタル演算から構成される暗号演算を光回路で実装することの第一歩となり、低遅延・低消費電力の演算の実現につながることが期待されます。
NTTグループでは引き続き、暗号回路を光技術で実現する研究開発を通じて、IOWNの安全な情報処理基盤の実現に貢献してまいります。
図1 シリコンフォトニクス技術により作製したS-box光回路の顕微鏡画像
(Y分岐素子を利用した光回路の例)
トピックスに記載している情報は、発表日時点のものです。
現時点では、発表日時点での情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承いただくとともに、ご注意をお願いいたします。
NTTとともに未来を考えるWEBメディアです。