2024年7月21日~27日(中央ヨーロッパ夏時間)にオーストリアのウィーンで開催される、機械学習分野の国際会議ICML(The Forty-first International Conference on Machine Learning) 2024にて、NTT研究所より提出された2件の論文が採択されました。ICML 2024の論文採択率は27.5%(9,473件の応募から2,609件採択)と、分野最難関国際会議の一つとして知られています。今回、以下の2件の論文が採択されました。
(以下、NTTコミュニケーション科学基礎研究所はCS研、NTTネットワークサービスシステム研究所はNS研と略します。)
- ·Understanding the Impact of Introducing Constraints at Inference Time on Generalization Error
- 西野正彬 特別研究員(CS研)、中村健吾 准特別研究員(CS研)、安田宜仁 主幹研究員(CS研)
- 機械学習・AIを安心して利用するための方法として、たとえば「商品推薦アルゴリズムにおいて子供向けにはアルコールを推薦しない」といった仕様に基づく制約を課す方法があります。本研究では、既存の学習済み機械学習モデルを用いて仕様を推論時に制約として用いる状況において、予測誤差にどのような影響が出るかを理論的に解析しました。特に多クラス分類問題の場合、採用する損失関数によっては相対的な予測誤差が制約の追加によって大きくならないことを示しました。本成果はAI出力への制約を課すことで、AIの信頼性の向上と性能の両立をなす基盤技術としての貢献が期待できます。
- ·Position: C*-Algebraic Machine Learning — Moving in a New Direction
- 橋本悠香 特別研究員(NS研/CS研)、池田正弘 研究員(理研)、Hachem Kadri 教授(Aix-Marseille University)
- 本論文では、C*環的機械学習という、機械学習研究の新しい方向性を提案しました。C*環的機械学習は、C*環という数学的概念を用いて既存の機械学習手法を統一的に表現し、より多様でより多くの情報が抽出可能なモデルを得るための新しいフレームワークです。C*環理論を機械学習に応用し、カーネル法とニューラルネットワークを例として、既存のフレームワークだと単一モデルでは実現困難な、複数モデル間・データ間の複雑な関係性を考慮した学習が可能となることを示しました。さらに、C*環的機械学習における未解決問題や課題を考察しました。今後は残された課題の解決に取り組むことで、複雑なデータやモデルに対しても高精度な解析方法を確立し、機械学習/AIの高度化による産業の発展や自然科学への貢献が期待できます。
NTTのR&Dは、環境にやさしい持続的な成長、多様性に寛容な個と全体の最適化を狙う未来のコミュニケーション基盤であるIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想を掲げ、その実現に向けた研究開発を進めてまいります。また、それとともに、今後も研究テーマの多様性・継続性を大切に、NTTグループの各事業会社をはじめ、さまざまな分野の産業界の方々と一緒に、さまざまな社会的課題を解決し、人々が意識することなく技術の恩恵を受けることができるスマートな世界の実現をめざし、世界を変革する技術の研究開発を続けていきます。