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2025年2月21日

お知らせ

AI分野の難関国際会議AAAIにNTTから8件採択

2025年2月25日~3月4日にアメリカのフィラデルフィアにて開催される、人工知能分野の国際会議AAAI(AAAI Conference on Artificial Intelligence)2025に、NTTの研究所より提出された8件の論文が採択されました。AAAI 2025の論文採択率は23.4%(投稿数12,957件)と、難関国際会議として知られています。
なお、このうち(*)の4件の論文はOral発表論文(全体の5%程度)として発表されます。

また、所属としてそれぞれ略称で書かれている研究所名は、以下の通りです。
人間研:人間情報研究所
CD研:コンピュータ&データサイエンス研究所
CS研:コミュニケーション科学基礎研究所
物性研:物性科学基礎研究所

  1. Explanation Bottleneck Models(*)
    自然言語による説明ボトルネックを持つ解釈可能な深層学習モデル
    1. 山口 真弥 准特別研究員(CD研)、西田 光甫 准特別研究員(人間研)
    2. 深層ニューラルネットワークは強力な予測性能を達成する反面、予測出力の根拠や解釈がわからないブラックボックスな性質が課題として知られています。本研究では、新しい解釈可能な深層ニューラルネットワークである説明ボトルネックモデル(Explanation Bottleneck Model, XBM)を提案します。XBM は入力データからモデル自身がテキストによる説明を生成し、生成した説明から最終出力を行う二段階予測によって解釈可能な予測結果を提供します。
  2. ToMATO: Verbalizing the Mental States of Role-Playing LLMs for Benchmarking Theory of Mind(*)
    ToMATO: 心の理論ベンチマークのためのロールプレイングLLMの心的状態の言語化
    1. 篠田 一聡 研究員(人間研)、北条 伸克 研究主任(人間研)、西田 京介 上席特別研究員(人間研)、水野 沙希 研究員(人間研)、鈴木 啓太 研究員(人間研)、増村 亮 特別研究員(人間研)、杉山 弘晃 主任研究員(人間研)、斎藤 邦子 主席研究員(人間研)
    2. 心の理論(他者の信念や意図などの心的状態を推測する能力)をより包括的かつ実応用に近い設定で評価可能なデータセットを、大規模言語モデル同士の情報の非対称性のある対話によって構築しました。このデータセットでの評価によって、既存の大規模言語モデルの心の理論をコミュニケーション理解等の実応用に適用する上での課題を明らかにしました。
  3. Multimodal Fine-Grained Apparent Personality Trait Recognition: Joint Modeling of Big Five and Questionnaire Item-level Scores
    アンケート項目レベルの情報を活用したマルチモーダル性格特性認識
    1. 増村 亮 特別研究員(人間研)、折橋 翔太 研究主任(人間研)、庵 愛 研究員(人間研)、田中 智大 研究主任(人間研)、牧島 直輝 研究員(人間研)、鈴木 敏志 研究主任(人間研)、水野 沙希 研究員(人間研)、北条 伸克 研究主任(人間研)
    2. 人が自己紹介している際の映像から、第一印象(人が他人に感じる印象)を自動予測する新たなマルチモーダルモデリング手法を提案しました。ビッグファイブと呼ばれるパーソナリティ特性と、50個の第一印象のアンケート項目を同時に予測するモデル化を行うことで高精度なモデリングを実現し、実際に人が知覚する場合と同等以上の自動予測性能を達成しました。
  4. A Continuous-time Tractable Model for Present-biased Agents
    連続時間における現在バイアス下の意思決定モデル(*)
    1. 赤木 康紀 研究主任(人間研)、金 秀明 准特別研究員(人間研/CS研)、倉島 健 特別研究員(人間研)
    2. 人間は、直近の利益や損失を過大評価する心理傾向である現在バイアスの影響を受けた意思決定を行っています。本研究では、連続時間の設定の下で、目標達成行動における現在バイアスの影響を分析するための新しい数理モデルを提案しました。提案モデルは、様々な現在バイアスを持つ人間の行動を解析的に記述することが可能であり、現在バイアスに関するいくつもの新たな知見をもたらしました。
  5. Tensorized Attention Model for Understanding Multi-Object Relationships
    多次元構造(テンソル)からなる関係を学習可能な言語モデルの提案
    1. 中辻 真 特別研究員(人間研)、藤原 靖宏 特別研究員(CS研)、大塚 淳史 主任研究員(人間研)、野本 済央 主任研究員(人間研)、佐藤 吉秀 主幹研究員(人間研)
    2. Transformerモデルは注意機構で優れた性能を発揮しますが、「コメント」「返信」「トピック」など、会話における複雑な多対多の関係を捉えることは苦手です。この問題を解決するため、TAM(テンソル化注意機構)を提案します。TAMはタッカー分解を活用して複数のオブジェクトタイプを処理し、Transformerモデルの性能を向上させ、Llama2のLoRAでの微調整精度を改善します。
  6. Layered-Parameter Perturbation for Zeroth-Order Optimization of Optical Neural Networks
    光ニューラルネットワークのゼロ次最適化訓練のための層状パラメータ摂動
    1. 澤田 宏 上席特別研究員(CS研)、青山 一生 シニアスペシャリスト(CS研)、納富 雅也 フェロー(物性研)
    2. 光ニューラルネットワークは、外部から観測できない固有の製造ばらつきを持つハードウェアで実行されるため、内部の詳細情報を利用する誤差逆伝播法の代わりにブラックボックス最適化の一種であるゼロ次最適化を用いて訓練を行います。ゼロ次最適化ではパラメータに摂動を与えますが、パラメータが層状に配置される光ニューラルネットワークに対してはパラメータ間の相互依存を考慮する必要があることを指摘し、有効な摂動の与え方を提案しました。現代の人工知能の主要な構成要素であるニューラルネットワークはその消費電力が大きな課題ですが、本成果は超低消費電力での動作が期待される光ニューラルネットワークの実現に寄与する成果です。
  7. An And-Sum Circuit with Signed Edges That Is More Succinct Than SDD(*)
    SDDより簡潔な符号付きand-sum回路
    1. 大中 亮磨 社員(CS研)、中村 健吾 准特別研究員(CS研)、西野 正彬 特別研究員(CS研)、安田 宜仁 主幹研究員(CS研)
    2. 論理関数は様々な実問題に現れる重要な概念であり、例えばデジタル回路の設計や通信ネットワークの解析など、一見異なる対象も論理関数の問題と考えることができます。論理関数を計算機上で扱う際、表現次第では膨大なメモリを必要としてしまうため、論理関数を扱いやすい形に圧縮する方法が研究されてきました。本論文では論理関数を圧縮する新しい手法 st-DASC を提案し、1) st-DASC が従来の最先端手法を大幅に上回る圧縮率を達成可能であること、2) 圧縮した論理表現を伸長することなく様々な計算が可能であること、を明らかにしました。本手法を用いることで、論理関数に関する実問題解決の高速化・大規模な問題への適用などに貢献することが期待されます。
  8. Tensor Decomposition Meets Knowledge Compilation: A Study Comparing Tensor Trains with OBDDs
    テンソル分解と知識コンパイルが出会うとき: テンソルトレインとOBDDの比較
    1. 大中 亮磨 社員(CS研)、中村 健吾 准特別研究員(CS研)、西野 正彬 特別研究員(CS研)、安田 宜仁 主幹研究員(CS研)
    2. 上記のst-DASC論文で述べた課題同様、論理関数の圧縮に取り組みました。既存の論理関数表現の多くは、目的の論理関数を小さな部分に分解することにより全体を表現していました。本論文では従来の手法とは異なり、論理関数とはまったく別の分野である「テンソル」の技法を論理関数の圧縮に適用することを試みました。具体的にはテンソル分解手法のひとつであるテンソルトレインを論理関数の圧縮に用い、その性能を理論的に解析しました。その結果、テンソルトレインは現在広く用いられている論理関数表現よりも高い圧縮率を持ち、さらに圧縮した状態で様々な計算が可能であることが明らかになりました。本結果は論理関数表現とテンソル分解という異なる分野を理論的につなげるものであり、量子計算等のテンソル分解の応用先に論理関数表現の知見を適用することで高速な問題解決への貢献が期待されます。

NTTのR&Dは、環境にやさしい持続的な成長、多様性に寛容な個と全体の最適化を狙う未来のコミュニケーション基盤であるIOWN(Innovative Optical and Wireless Network)構想を掲げ、その実現に向けた研究開発を進めてまいります。また、それとともに、今後も研究テーマの多様性・継続性を大切に、NTTグループの各事業会社をはじめ、さまざまな分野の産業界の方々と一緒に、さまざまな社会的課題を解決し、人々が意識することなく技術の恩恵を受けることができるスマートな世界の実現をめざし、世界を変革する技術の研究開発を続けていきます。

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