IoTのその先を行く「IoB(Internet of Behavior/Bodies)」という単語を耳にする機会が増えた昨今、その技術はますます加速しています。
IoTは「モノのインターネット」とも呼ばれ、インターネットとさまざまなデバイスが通信できる技術のことで、「行動のインターネット」といった考え方もあり、行動・活動に関するデータを収集・分析することを指します。
近年では、IoBと画像認識AI技術との関係性について注目されることも増え、ビジネスでの活用も期待されています。
そこで、今回はIoBが注目されている理由や、社会にもたらすこと、解決できる課題などについて幅広く解説します。
IOBは、以下の2つの意味を持つ言葉です。
Internet of Bodiesは、直訳すると「身体のインターネット」です。
具体的には、人間の身体をインターネットに接続することで、本人だけではなく、外部も身体の情報を獲得できる技術です。
わかりやすい事例としては、近年普及しているスマートウォッチのデバイスが挙げられます。
スマートウォッチを身につけることで、心電図や消費カロリーなどがわかる技術はInternet of Bodiesによるものです。
一方のInternet of Behaviorは、人の行動に関するあらゆる情報について、インターネット上で取得できるシステムを指します。
具体的には位置情報や購入履歴、ネット上の閲覧履歴などが挙げられます。
個人の行動データを貴重な資料として、より生活を快適・豊かに送れるようにするための技術です。
インターネットと人間の関わりは、今やここまで深まってきているのです。
IoBと似た用語として「IoT」がありますが、具体的にどのような違いがあるのかはご存じでしょうか。
IoBとIoTのそれぞれの違いは「インターネットに接続する対象」です。
IoBは人の身体や行動をインターネットに接続するのに対し、IoTはモノに対してインターネットを接続します。
たとえば、家電であればテレビや掃除機、照明などがIoT家電として知られるようになってきました。
インターネットに接続することで、遠隔での操作が可能となったり、時間や曜日ごとに設定を切り替えたりできるのがIoTの特徴です。
IoBは、IoTをより進歩させたものといったイメージであり、今後の技術開発次第ではIoBもさらなる成長が期待されています。
IoBが注目されている理由は、「個人」にフォーカスしたビジネスが求められていることにあります。
個人の健康やフィットネスに関するデータを収集し、リアルタイムで健康状態をモニタリングすることが可能になるため早期の健康リスクの発見や予防に役立てられます。
また、効果的なマーケティングのために、消費者の行動データをもとに、ターゲット市場や広告の配信方法を最適化することもできます。
企業や組織であれば、リスク管理としてIoBを使用して従業員の行動パターンを監視し、セキュリティリスクや不正行為の早期検出に役立てることもできるでしょう。
IoBは現代で重要視されている「個人」の行動パターンや傾向を分析できることから、重視されるようになりました。
IoBは、人とネットを繋ぐ存在であり、この技術は社会や人にさまざまな幸福をもたらすと考えられています。
まず、個人の健康データをIoBで収集し、分析や調査が行えるようになれば、病気リスクの早期発見や予防が可能になります。
これにより、医療コストの削減や人々の健康とウェルネスの向上が期待されます。
ビジネスの現場では、IoBのデータ分析によって、市場の傾向や需要予測が正確になると期待されています。企業はより効果的な「広告の打ち出し方」「販促方法」など、あらゆる領域の手法を確立しやすくなり、ビジネスチャンスにつなげることが可能です。
IoBでマーケティング戦略を策定できれば、製品やサービスの開発へと役立てることも可能でしょう。
また、スマートシティの概念を支える要素の一つとして、IoBは都市の効率化や持続可能な発展に寄与します。
交通管理やエネルギー使用の最適化、環境モニタリングなどが行われ、生活の質の向上も期待できます。
本項からは、IoBの活用事例についてご紹介します。
どのような事例があるのか、「Internet of Bodies」「Internet of Behavior」それぞれの事例について見ていきましょう。
Internet of Bodiesの活用事例としては、ペースメーカーが代表的です。
ペースメーカーとは、電池と電気回路及び電線で構成された医療機器です。
脈拍数を維持するために、手術で人間の体内に植え込んで使用します。
従来は定期的に電池を交換しなければならなかったり、大型で手術の負担も大きかったりするのが難点でしたが、近年はペースメーカーの小型化に電池の長寿命化、電池交換不要(拍動で発電する)のタイプも多数登場してきており、利用者に負担の少ない機器が展開されるようになりました。
また、身近な事例では、活動量計のようなウェアラブルデバイスも、Internet of Bodiesの技術として該当します。
活動量計を身につけるだけで、歩数や走行距離などがデータとして確認できるようになりました。
自身の生活を見直すきっかけにしたり、健康維持のためのヒントとしてデータを活用できるでしょう。
たとえば、個人の健康データをIoBで人の健康状態を継続的に観測・監視することにより、身体状態の把握ができるようになります。
個人の生活習慣や行動の変化をトラッキングすることで、健康状態を最適化できるのはIoBの特徴の一つで、病気を予防しつつ、適切なタイミングでの治療を実現しやすくなります。
Internet of Behaviorは、GPSによる位置情報取得や顔認識などの活用事例があります。
GPSは人工衛星を活用して人の位置情報を計測できるシステムであり、スマホなどの端末から「誰がどこにいるか」を確認できます。
一般的には、親が子どもの位置情報を確認するためにGPS機器やアプリを持たせて防犯対策とするような使い方が多いです。
また、顔認識は、顔の特徴をデジタル情報に置き換えるための技術です。 デジタル化した顔の特徴の情報は認証データとして使うことができ、スマートフォンのロック解除のための認証で使われています。
ほかにも、公共施設の利用者について調査することを目的として、来店者・利用者の顔認証を行うケースもあります。顔認証で集めたデータは、混雑状況調査や購入層の調査などに使われることが多いです。
IoBとAI技術は、それぞれ異なる技術が採用されているものの、一部に関連する部分があります。
とくに、データを収集したり、分析したりする部分においては関係性が深いと言えます。
IoBは、個人や組織の行動データを収集し、分析して洞察を得るための概念です。
その中で、AI技術でも画像認識があります。画像認識AI技術は画像や映像データを解析して、その中から特定の対象物やパターンを識別する能力を持っています。
IoBで行動データを収集し、その中に含まれる画像や映像データを画像認識AI技術を用いて解析することで、より詳細な情報や洞察を得ることができます。
IoBと画像認識AI技術が組み合わさることで、インフラ設備の整備に活用するなど、社会に役立つシステムとして利用可能です。
実際に、すでに最先端の技術として徐々に社会で活用が進み始めています。
NTTでは、MMSやドローンなどを活用し、取得した画像からAIがインフラ設備の問題を自動検出する技術を研究しています。
カーブミラーやガードレール、電柱、ケーブルなどあらゆるインフラ設備の損傷や劣化などを検知でき、施設管理者ごとの稼働負担を大幅に軽減できるため、人手不足の現場にとってメリットが大きいと言えます。
また、AIが検知することで、より高い点検品質を実現することも可能です。
中でも、NTTでは画像認識 AI「Deeptector(ディープテクター)」をサービス展開しています。
お客さま自身で集めた画像を用いて実務に即した判定基準を学習させ、オリジナルな学習済みモデルを生成することができます。CUI(キャラクター・ユーザー・インターフェース)による難解なコマンド入力は不要で、GUI(グラフィカルユーザインターフェース)によって判定基準の学習や判定結果の確認が可能です。その使いやすさから、工場の製品検査担当者や管理栄養士といったITの専門家でない方にもご利用いただくことが可能です。
また、日々の業務を通じた追加学習によって検出精度や対象物などのアップデートが可能で、画像の判定パターンは大きく5種類で「物体検出型」「領域検出型」「分類型」「レベル判定型」「正例判定型」から選択可能です。
「Deeptector」はXMLベースのAPIを標準で具備しているため、お客さまの既存システムやこれから導入を検討される新規システムとの連携も容易です。一般的に、製造業の生産現場で使われている設備は電気信号で制御されていますが、判定結果を電気信号に変換して設備連携することも可能であるため、現場でより高い生産性向上効果が得られます。
https://www.youtube.com/watch?v=gkL0O7OU-1E
なお、インストール版・クラウド版の2種類を展開していますので、さまざまな環境・シーンでの導入が可能です。
※「Deeptector」はNTTコムウェア株式会社の登録商標です。
NTT情報ネットワーク総合研究所
企画部 広報担当
E-mial:inlg-pr-pb-ml@hco.ntt.co.jp
TEL:0422-59-3663