
スペイン・バルセロナで開催された世界最大級のモバイル関連展示会「MWC Barcelona 2026」(以下MWC26)において、NTTグループは、7年ぶりとなるグループでの共同出展を行いました。NTT、NTTドコモ、NTTデータグループが中心となり、日本企業として唯一、会場のメインホール(Hall3)へ出展しました。
NTTグループは、2025年7月のCI刷新を踏まえ、ダイナミックループを象徴としたデザインのブースを構え、約10.5万人の来場者に対して最新の取組みを発信するとともに、ビジネスにつながるミーティングや商談を多く実施しました。また、MWC26の基調講演(Keynote)では、NTT 島田社長が登壇し、光技術による低消費電力化の意義などについて、グローバルに向けて強いメッセージを発信しました。
世界最大のモバイル関連展示会「MWC Barcelona 2026」基調講演レポート
https://group.ntt/jp/magazine/blog/mwc_barcelona2026_report/
世界最大のモバイル関連展示会「MWC Barcelona 2026」に出展
https://group.ntt/jp/newsrelease/2026/01/28/260128a.html

グローバルなIT企業が一同に集結するMWC26の会場では、各企業がイベントのテーマやトレンドに倣い、AIに関する取組みを多く展示しています。そんな中、NTTグループは、最新のイノベーティブなAIサービスやソリューションに加えて、光技術(Photonics)の活用により低消費電力社会を実現する未来のデジタルインフラの取組みも展示しました。
NTTグループのキーメッセージ"Photonics Unlocks an Intelligent Power-Optimized Future"には、将来的なAI利用拡大などに伴う電力を中心としたリソースの限界を、「光技術(Photonics)で切り拓く(Unlocks)」という強いメッセージが込められています。業界をリードする責任ある企業として、AIなどのテクノロジーを提供するだけでなく、それらのテクノロジーがあたりまえになる未来の社会を持続的に支えていくための取組みを、ユニークポイントとして訴求しています。
Data Centerの展示エリアでは、世界第三位のデータセンター事業者※であるNTTグループが、IOWNで実現する未来の低消費電力データセンターに向けた取組みを展示しました。
AI活用に伴うGPUサーバの需要拡大、およびデータセンターの消費電力増加は、グローバルでも大きな課題となっています。
ブースに来場された海外のお客さまや半導体関連の有識者の方々からは、消費電力1/8という数字に対して、特に強い関心やご質問を連日いただきました。
「光電融合技術」は、電気信号を光信号に変えることで、高速大容量・低遅延な通信に加えて、使用電力の大幅な削減を可能とする技術です。
2023年、NTTはデータセンター間を光のままつなぐAPN(All-Photonics Network)の技術を確立しました。現在はそこからさらに踏み込み、データセンター内部、コンピューティングにおける光化をめざして研究開発を進めています。

今回のMWC26ブースでは、データセンター内部のボード間を光でつなぐ「PEC(Photonics-Electronics Convergence)スイッチ」の、コンセプトを示すモックアップを展示しました。

光電融合技術においては、電気信号を光信号に変える範囲を増やすほど、消費電力を削減することができます。電気信号を光信号に変えるハードウェアにおいても、できるだけ内部まで光信号にすることが重要です。
今回の展示では、透過するディスプレイの演出を活用し、ハードウェアの内部が徐々に光化していく様子を視覚的に表現しました。NTTは、これまで電気で通信していた部分(写真のUSBメモリのような接続部のあたり)まで光を通すことに成功しており、従来と比較して、消費電力量を大幅な削減を達成しています。

「PECスイッチ」は、2027年初頭の商用リリースを予定しています。量産化に向けて各社さまとのパートナーシップも順調に進んでいます。
将来的には、2028年から2032年に向けてダイとダイの間も光化し、消費電力を驚異の1/100まで削減することを目標に研究を強化しています。
圧倒的な低消費電力を実現するためには、ハードウェア内部の光化を前提に、ソフトウェアを組み合わせたデータセンターの自律的なオペレーションが重要になります。展示ブースでは、以下2つのユースケースをご紹介しました。
モバイル関連展示会であるMWC26において、連日多くの有識者の方が足を止め、白熱した議論を交わされた展示ブースがありました。それが、NTTが誇る次世代の計算基盤「光量子コンピュータ」です。

NTTが開発を進める「光量子コンピュータ」のアプローチは、巨大な冷却装置を必要とする従来の方式とは一線を画し、常温・常圧で動作し、最終的にはラックに収まるサイズで消費電力は数百ワットクラスをめざします。長年培ってきた光通信技術の応用によって現実のものになろうとしているこの技術は、先日、世界トップレベルとなる量子ノイズ圧縮 10dB の達成というブレイクスルーを果たしました。「光量子コンピュータ」が実現すると、電力に加えて、動作環境や設置場所などのリソースも最小化することができます。
現在、世界中で様々な方式の量子コンピュータの研究が進められていますが、その多く(超伝導方式など)は絶対零度に近い極低温環境や真空状態を作る必要があり、巨大な冷却装置を必要とします。しかし、NTTが開発を進める「光量子コンピュータ」は、基本的には常温(室温)および常圧での動作が可能です。
これを可能にしたのが、NTTが長年の光通信技術の研究で培ってきた「OPA(光パラメトリック増幅器)」です。本来は光通信において信号を増幅したり波長を変換したりするための技術ですが、私たちはこれを、量子計算を行うための「量子光源」として応用することに成功しました。
展示ブースでは、実際に光がどのように飛んで計算の土台が作られるのかを、グラフィカルな模型(モックアップ)で分かりやすくお見せしました。

光量子コンピュータのメカニズムは非常にユニークです。まず、発生した光の「量子ノイズ」を特定の方向にギュッと圧縮し(これをスクイージングと呼びます)、計算に利用できる状態にします。この縦や横にノイズを潰した光同士を、ハーフミラーでぶつけることで「量子もつれ」という状態を作り出します。
さらに、光ファイバーを「遅延線」として使い、光をぐるぐると遠回りさせます。すると、遅れてきた光と、先に進んだ光との間で次々と量子もつれが形成され、まるで繊維が絡み合った巨大な布のような量子計算リソースが生み出されるのです。
この方式の最大の強みは、圧倒的なスケーラビリティ(拡張性)です。クロックスピードを上げたり、光ファイバーを長くしたりするだけで、原理的には量子数を無限に増やしていくことが可能です。
例えば、100メートルのファイバーを用意すれば、約100量子ビット分の計算ができる遅延を作り出せます。100万量子ビットを実現するためには数キロメートルのファイバーが必要になりますが、ファイバーはドラム状に巻いて収納できるため、最終的にはラックに収まる程度の体積に抑えることができます。
超伝導方式で100万量子ビットを作ろうとすると物理的に不可能に近いサイズの巨大な冷凍機が必要になると言われていますが、光方式であれば十分に現実的なサイズで実現可能です。
さらに、1本のファイバーの中で異なる波長の光を使う「波長多重」などの通信技術を組み合わせることで、装置を巨大化させることなくスケーラビリティを確保できます。
光のまま計算処理を行うため、発熱が非常に少なく、周辺の電子制御回路などを含めてもシステム全体で数百ワット程度での動作をめざしています。数キロワットから数メガワットの電力を消費する他の方式と比べ、まさに桁違いの省電力性を誇ります。
私たちは、2027年度に実用的な計算が可能となる1万量子ビットの実現、そして2030年代初頭には100万量子ビットの達成を目標に掲げています。2024年11月には、量子状態を安定させるスクイージングのレベルにおいて、世界トップとなる 10dBの圧縮に成功しました。このブレイクスルーにより、1万量子ビットの実現がはっきりと見えてきています。
100万量子ビットが達成されれば、複雑な化学計算や暗号処理はもちろん、将来的には「量子AI」と呼ばれるような分野にも応用され、これまでの計算インフラを根本から変える計り知れないインパクトをもたらすでしょう。
NTTグループは今後も、パートナーの皆さまと共に、革新的な「光量子コンピュータ」の実用化に向けた研究開発を加速してまいります。
MWCの展示でご紹介したNTTデータグループとNTTドコモの「AIエージェント」の取組みについて、4月上旬にご紹介予定です。
導波路型光デバイスによる世界最高品質のスクイーズド光生成に成功
https://group.ntt/jp/newsrelease/2026/03/05/260305a.html
IOWN構想について
https://group.ntt/jp/group/iown/
中国事業者を含まず。「Structure Research 2025.8 Rport」より