安全かつ快適に世界中の人々と感動を共有できるスタジアムにするために、NTTの総合力を注ぎ込んだセキュアで安定した通信インフラが、2019年12月に無事に完成しました。
国境を越え空間を超え一つのレースとして、同じ時刻、同じルールでバトンをつなぐ―。
2019年12月21日
新しい国立競技場の完成を祝うオープニングイベントとして「ONE RACE」が行われました。
健常者と障がい者、男性と女性といった従来のスポーツ競技にある枠を超えて結成された4つの混合チームが競う、人類初の1,200メートルリレー(200メートル×6人)です。
この試みを支えたのはNTTのグローバルネットワークと 超高臨場感通信技術Kirari! でした。
完成したばかりの新しい国立競技場で行われた「ONE RACE」
国立競技場のある東京、ロサンゼルスとパリの3カ国3都市の競技場で行われるレースをNTTのグローバルネットワークによりリアルタイム中継でつなぎ、超高臨場感通信技術Kirari!を使って同期し、国境と空間を超えたひとつとのレースとして実現。距離という壁を越えた新しい競技の形を選手に、そして、新しい観戦体験の感動を観客のみなさんに届けることができたのです。また、観客席から6万人を超える来場者のスマートフォンが一斉に光る中、オープニングイベントでは人気アーティストのライブやスポーツ選手によるトークイベントが行われました。
それは同時に、撮影された画像や動画がSNSやメールに投稿され、世界に拡散される瞬間でもありました。
イベントと連動して満員の観客によって灯された携帯電話の光
6万人もの観客が日常の延長線にあるように、同時に気軽にSNSに投稿ができた事実は、国立競技場の通信インフラが安定的で高い品質であることを証明しています。
性別、人種、国籍、宗教、障がいを越え、世界中から集まる選手と観客が一体となり、奇跡や感動を共有できる新たなスタジアムとしてスタートを切った国立競技場を、NTTの最先端情報通信技術が支えています。
日本の新しいスポーツの聖地として世界に誇れるスタジアムとなるために、様々なシステムが適切に連携する競技場ネットワークと観客にストレスのない通信環境が必要でした。そのため、NTT東日本、NTTコミュニケーションズ、NTTブロードバンドプラットフォームからIPネットワーク構築やWi-Fi構築の経験豊富で高い技術力をもつスペシャリストが集結し、設計から施工までワンチームとなってプロジェクトを進めたことが成功の鍵でした。
先行する建築工事と並行して設計と構築を進める必要があったため、関係各社と議論を重ねながら調整を行いました。建築現場ですので、予定通りに進まないこともありましたが、多くのみなさまの協力をいただきながら様々な課題をワンチームで解決し、プロジェクトを進めることができました。
現場事務所でのミーティングの様子
プロジェクトマネージャー
NTT東日本 得能 永次
NTTが構築した競技場ネットワークには情報通信システム以外にも、監視カメラ・入退室管理・入場ゲート・リボンボードやデジタルサイネージ等の競技場の様々なシステムが接続されます。これらのシステムを適切に連携させるシステムインテグレーション業務もNTTが行いました。
競技場の運営に重要なシステムなど、各工程で必要なシステムインテグレーションをNTTが行いながら各事業者との協力関係を構築、競技場ネットワークの目的や方針を明確にし十分なコミュニケーションを取りながらプロジェクトを進めました。競技場の各システムが効率的に構築され、競技場ネットワークに適切に連携されることを、このシステムインテグレーション業務により実現しています。
アシスタント プロジェクトマネージャー
NTT東日本 山田 拓実
これまでの大規模なスタジアムでの数々の高密度Wi-Fiの構築・運用の経験やノウハウを活かし、新しい国立競技場の構造や形状に合わせた最適なアクセスポイントの配置により、快適で安定した通信環境を実現。客席には、観客1人当たりに必要な通信容量や同時接続率を試算・想定し、約70席に1カ所のアクセスポイントを設置しています。
新しい国立競技場の客席は3層構造となっており、各層ごとに、手すり・座席下・軒下や大屋根にアクセスポイントやアンテナを適切な取付方法で設置しています。特に、手すりや座席下への設置は、先行して配管や開口を建物の躯体に用意する必要があったため、事前に関係各社と協議を重ね、理想的な配置計画をもとに躯体の施工計画を進めることができ、新築のスタジアムとして相応しい仕上がりを実現できました。もちろん、コンコース、売店やチケット売り場周辺などの人が溜まるエリアにもWi-Fiが設置されており、アクセスポイントの数は約1,300になります。また、高密度を実現するには、電波干渉を回避した最適なチャンネル設定や構築の最終段階で実施するチューニングが重要となります。これらには、NTTの最先端の高効率Wi-Fiの研究成果も活かし、安定した高品質なWi-Fi環境とすることで、インターネットに快適につながり、誰もがSNS等により感動を共有できるスタジアムを実現しています。
今後、様々な大規模イベントで、リプレイ等の映像配信やフードデリバリー等の情報サービスをこのWi-Fi環境で提供することが可能です。
6万人収容の観客席では、
手摺側面、座席下や大庇等にWi-Fiアクセスポイントを設置
ワイヤレス技術部長
NTTブロードバンドプラットフォーム 吉田 英邦
観客席座席下アクセスポイント
Wi-Fiチューニングの様子
国立競技場のデジタルサイネージは約600面にもなる、かつてないスケールで構成されています。
取付箇所は315カ所にもおよび、柱に1台づつ、売店のカウンター上部には横並びで4台、千駄ヶ谷ゲート付近には18面の大型サイネージなど様々な設置パターンがあり、大型映像装置と連動した演出や低遅延リアルタイム配信システムにより、スタジアムのコンコースや売店周辺でも遅延なく競技観戦が可能となります。また、イベントに連動した案内情報、空間演出や広告活用ももちろん可能となりますし、火災時等災害時には誘導支援への活用も実現。視認性確保やダイバシティ対応等 ユニバーサルデザインにも配慮しており、これまで培った経験や実績に基づく設計思想を反映しています。
今回の実績は、今後のスマートスタジアムやスマートシティへの取り組みにもつながっていくものと確信しています。
観客、来場者へ様々な情報提供と空間演出に活用される
デジタルサイネージ
デジタルサイネージ構築 統括プロジェクトマネージャー
NTTコミュニケーションズ 一宮 昇平
イベント、競技、応援などと連動したコンテンツを
18面の大型デジタルサイネージで配信
コンコースの見やすい位置に設置された
売店周辺のデジタルサイネージ
競技場ネットワークは、スタジアム内のシステムや設備機器が数千台規模で接続されており、通信インフラとして重要な役割を担っています。競技場ネットワークは施設のシステムだけではなく、不特定多数の観客が使うWi-Fiにも活用されるため、大容量データ通信とセキュリティの品質は、最高のレベルが求められました。そのため、50を超えるアプリケーションにまたがるセキュリティガイドライン策定をNTTが中心となって行いました。
セキュリティガイドライン策定では、ネットワークやアプリケーションごとに必要なセキュリティレベルを明確化し、同時に、それらネットワークやシステムのリスクを、機密性・完全性・可⽤性といった観点で評価しました。セキュリティレベルが要求に満たないシステムがあれば、提供事業者に設計変更や運⽤の⼯夫を求め、具体策を練ることでスタジアム全体のセキュリティを担保していきました。
新しい国⽴競技場ではICT関連システムだけでなく、電⼒やエレベーターなどの建築領域のセキュリティも統⼀の基準で対策を施しました。セキュリティガイドライン策定の習慣があまりない事業者から協⼒を取り付ける難しさがありましたが、安心・安全な国立競技場にしたいという想いを共有しながら理解を得ることで、世界に誇れるセキュアな競技場ネットワークを実現することができました。
ネットワーク構築
NTTコミュニケーションズ 澤田 一哉
NTTは、世界に誇れるセキュアで安定した通信インフラとして、競技場ネットワーク、高密度Wi-Fiやデジタルサイネージを構築。新しく生まれ変わった国立競技場は様々なイベントを通じて人々に夢や感動をもたらす場所となります。
2020 そしてその先へ。
これからも、NTTの情報通信技術が世界に夢や感動を拡げていきます。