
NTT株式会社(以下、NTT)は、2025年11月19日(水)~21日(金)、25日(火)、26日(水)の5日間にわたってNTT R&D FORUM 2025「IOWN∴Quantum Leap」を開催しました。
2025年は量子科学の誕生から100年の節目であり、量子コンピューターの実用時期が早まるのではとの期待もますます高まっています。IOWNやAIと量子コンピューターが出会った先に、どのような技術や未来が待っているのでしょうか。
注目展示の紹介を通して、量子コンピューターやIOWN、AIが生み出した最新技術と、NTTグループR&Dの最新成果をご紹介します。

NTT R&D FORUM 2025のキーメッセージである「Quantum Leap」には、量子力学的な飛躍に加え、ビジネス等における劇的な進歩という意味と覚悟が込められています。IOWNとAIが量子コンピューターと出会うことによる進歩を、さまざまな展示から読み解くことができます。
NTT R&D FORUM 2025の技術展示では「生成AI」「IOWN」「量子」「サステナビリティ」「モビリティ」など10のカテゴリから89の展示を行いました。
「生成AI」のカテゴリでは、NTT版LLMの最新版「tsuzumi2」をはじめ、さまざまなシーンへの展開が期待されるNTTグループの生成AI技術について紹介。「IOWN」のカテゴリでは、大阪・関西万博で消費電力1/8を実証したIOWN光コンピューティングなど、IOWNの最新の成果について紹介。また「量子」カテゴリでは、NTTが長年取組んできた光通信技術をベースにした世界トップレベルの「光量子コンピューティング」について、ハードウェアからソフトウェアまで幅広い研究成果を紹介しました。

光を使って計算する「光量子コンピューター」は、従来のコンピューターとは仕組みが根本的に異なります。量子の重ね合わせによって0と1を同時に扱うことができるため、膨大な組み合わせを一度に並列処理することが可能。現在のスーパーコンピューターでは太刀打ちできないほど圧倒的な計算能力を実現します。
(詳細内容はこちらへ)
https://www.rd.ntt/forum/2025/doc/D01-j.pdf
(プレスリリース)
NTTとOptQC、スケーラブルで信頼性の高い実用的な光量子コンピュータの実現に向けた連携協定を締結
~光技術が切り拓く量子の未来 ― 100万量子ビットの光量子コンピュータ実現に向けて~
https://group.ntt/jp/newsrelease/2025/11/18/251118a.html

IOWNとストレージ技術を組み合わせた新しいデータ同期システム。遠く離れた拠点間であっても、ほぼリアルタイムにデータをそのまま同期できる仕組みです。遅延はわずか20ミリ秒で、600km以上の距離でもほとんど時間差なくデータを共有できます。これにより金融機関や自治体、交通事業者など、停止やデータ損失が許されない業界で、災害時の復旧時間を数十秒まで短縮できる点が大きな特徴です。
さらに、ランサムウェア被害などの際には、数ヶ月〜最大2年前のデータへ安全に戻すことができ、システムの回復力も大幅に向上します。距離は最大1,600kmまで対応可能で、北海道〜東京、九州〜東京、台湾との接続も視野に入れた広域データ分散が実現します。
IOWNの低遅延ネットワークとリアルタイムコピー技術を組み合わせることで、既存クラウドでは難しかった完全同期に近い仕組みが構築され、ミッションクリティカルな業務の継続性を強力に支えるインフラとして期待されています。
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https://www.rd.ntt/forum/2025/doc/C07-j.pdf

IOWN技術を活用したスマートファクトリーは、工場から数百キロ離れたデータセンターに製品検査AIやPLC(ベルトコンベア制御装置)を集約し、そこから工場設備を高速・低遅延で操作できる仕組みです。カメラで撮影した製品画像をAIが解析し、不良を検知すると20ミリ秒周期でPLCへ信号を送り、不良品を即時に排出します。従来の数百ミリ秒処理と比べ大幅に高速化され、遠隔制御でも工場内に製品検査AIを設置したのと同じ精度で動かせる点が特徴です。
設備をデータセンター側にまとめることで、複数工場の検査や制御を1箇所で行うことができ、設定変更やメンテナンスも容易に。工場によって差異が起こりがちな検査基準を製品検査AIが設置されているデータセンターで統一できるため、品質のばらつきも解消できます。さらに機器を工場に置く必要がないため消費電力の削減にもつながります。
理論的には1,000km離れた工場も同様に操作可能で、全国規模での遠隔工場管理が視野に入っています。
(詳細内容はこちらへ)
https://www.rd.ntt/forum/2025/doc/C09-j.pdf

日本語性能の高い国産大規模言語モデル「tsuzumi」の最新版で、前バージョンの約7B(70億)パラメータから30B(300億)規模へ大幅に拡張された「tsuzumi 2」。モデルが大きくなったことで文章理解や要約、指示への正確な応答などの基本性能が大きく向上し、日本語領域ではGPTのような巨大モデルと同等レベルの実力を軽量構成で実現している点が特徴です。
(詳細内容はこちらへ)
https://www.rd.ntt/forum/2025/doc/A01-j.pdf
(プレスリリース)
更なる進化を遂げたNTT版LLM tsuzumi 2の提供開始
~日本の企業DXを支える高性能・高セキュア・低コストな純国産LLM~
https://group.ntt/jp/newsrelease/2025/10/20/251020a.html

車だけでは見えない死角を社会全体のセンサーで補い、交通事故ゼロをめざす新しい概念です。車両のカメラだけでは検知できない歩行者や自転車の動きを、道路沿いのカメラ・路側センサー・他車両のカメラ情報まで組み合わせて把握し、AIがリアルタイムで危険を予測します。急な飛び出しなど人の行動を先読みする技術が重要な役割を担います。
街中に設置されたセンサー群の構築には電柱を活用し、簡易にスマートポール化できる専用アタッチメントを用いることで、カメラやアンテナを素早く取り付けられる仕組みも整えられています。これにより、大規模なインフラ整備を伴わずに街全体を見える化することができます。

収集された膨大なデータはAIによって統合・分析され、デジタルツイン上で車両周囲の状態を再現し、数秒先の危険まで予測してドライバーへ通知。将来的にはIOWNで車・人・インフラが常時つながり、遠隔から車両を停止させるなど新しい交通安全システムの実現が期待されています。


デジタルツインとは、現実のロボットや工場設備をそのまま仮想空間に再現し、リアルタイムに同期させる技術です。ロボットのモーター動作をテキストデータとして約100ミリ秒ごとに送信し、3D空間で本物と同じ動きを完全に再現することができます。さらに仮想側で動かした操作を現実のロボットへ返す双方向制御も可能で、設計・検証をすべて仮想空間で完結させます。
これにより、ロボットを事前購入せずに設計段階での動作確認ができ、試作ライン構築や部署間調整にかかっていた時間とコストを大幅に削減できる点が大きなメリットです。今後は工場全体をデジタル化し、稼働前にすべてを検証するバーチャル工場が一般化すると期待されています。
特定メーカーだけでなく、複数のメーカーのロボットをつなげる共通レイヤーの開発も進んでおり、固定的なプログラミングに依存しないAI制御や、将来的には自然言語でロボットを動かす技術も視野に。マルチベンダー対応のオープンなロボット制御基盤の実現をめざしています。
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https://www.rd.ntt/forum/2025/doc/D12-j.pdf

道路陥没の前兆となる地中の変化を、NTTグループが保有する地下光ファイバーを使って常時監視する仕組みです。従来は専用車両によるレーダー調査が必要で、コストが高く点検頻度も限られていました。光ファイバーは微細な振動を高精度で検知できるため、そのデータを解析することで地中3〜30メートルの深さまで地盤の状態を推定できます。
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https://www.rd.ntt/forum/2025/doc/C21-j.pdf
(プレスリリース)
道路陥没リスクの早期発見に向けた光ファイバーによる地盤モニタリング手法を実証
~地中深部を常時モニタリングして安全な社会の実現に貢献~
https://group.ntt/jp/newsrelease/2025/10/21/251021a.html
NTT R&D FORUM 2025
https://www.rd.ntt/forum/2025/