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2024年6月 7日

【レポート】NTT主催 つくばフォーラム2024
~持続可能な社会を支えるアクセスネットワークへの挑戦~

NTTが主催するつくばフォーラムは、NTTアクセスサービスシステム研究所に加え、共催団体、NTTグループなどが参加し、三位一体によるアクセスネットワークに関わる最新の研究開発や技術動向の紹介、展示を行うイベント。2024年度は40を越える展示やイベント、基調講演が行われました。

1) 「つくばフォーラム2024」概要

画像:1) 「つくばフォーラム2024」概要

2024年5月16日と17日の2日間にわたり筑波研究開発センタ(茨城県つくば市)にて開催された「つくばフォーラム2024」。今回のテーマは「新たな価値創造へ 持続可能な社会を支えるアクセスネットワークへの挑戦」です。新たな価値創造とサステナビリティのために、IOWNの「構想から実現へ」をより強く感じられる多岐にわたる最新の研究開発成果が展示され、多くの参加者を魅了しました。

2) 本年の見どころ

NTTの展示では「サービスの高度化・多様化を支える技術」「運用を抜本的にスマート化する技術」「新ビジネス領域を開拓する技術」のカテゴリからIOWN時代におけるアクセスネットワークの将来像を紹介しました。

3) 基調講演

画像:3) 基調講演

「人と地球にやさしい社会インフラで実現する"Social Well-being"」 NTT常務執行役員 研究開発マーケティング本部長 大西佐知子による基調講演内容をダイジェストでご紹介します。

世界情勢や社会課題はますます深刻化しており、食品や衣料品の廃棄問題や地球環境問題、日本国内においては少子高齢化や労働力不足が深刻化しています。そうしたなか、人々の価値観は多様化しています。モノからコトへのマインドセット、意味やストーリーなど感性に訴えかける商品に人は惹かれているような気がしています。そういった意味で、Well-beingという言葉も、今の事業運営のなかでは非常に重要なキーワードとなってきていると感じています。

こうした状況を踏まえ、NTTグループでも従来のプロダクトアウトの研究開発にマーケットインの視点を入れ、CXを重視したサービスの強化のために、お客様視点をあらゆる事業プロセスにおいて重視し、サービスを提供していくということを推進しています。情報通信インフラとしてのアクセスネットワークも、今後はマーケットインの視点で考えると、人々の生活を支える社会産業インフラとしての役割を担うようになると考え、NTTグループでは食や農業、ヘルスケアなどの分野において成果が表れ始めています。

今年に入り、生成AIを組み込んだサービスが多数発表されています。人間の行動を学習し、その人に最適な提案を行う生成AIですが、学習のために大規模なパラメータ数や消費電力などのリソースが必要となります。それに対しNTTグループが発表した「tsuzumi」は軽量なうえに世界トップクラスの日本語性能、使用する人や業界などに合わせてさまざまなカスタマイズができ、言語ばかりでなく図表読解など様々な形式に対応しています。

生成AIの普及によって、世界の電力消費は大幅に上昇すると予想されます。大規模言語モデルの1回あたりの学習に必要な電力は原発1基を1時間稼働させた発電量であり、それに伴ってデータセンタの電力消費も従来の13倍に加速していくと言われています。光の技術を伝送とデータ処理に利用したのが、「IOWN」になります。低消費電力、大容量・高品質、低遅延を実現した「IOWN」を、AIの時代を支えるインフラとして活用していきたいと考えています。

テクノロジーで消費電力を圧倒的に低減し、伝送やデータ処理、そしてAIモデルも含めて、電力効率と処理効率と学習効率を向上させることで、これからのAIデータドリブン社会の省エネな産業インフラを構築していきたいと考えています。それによって地球にも人にも優しい、さまざまな人が健やかに笑顔で暮らせるような、そんなSocial Well-beingな世界をめざしていきたいと思います。

4) 注目展示

1. 超大容量伝送を実現するマルチコア光ファイバケーブル技術
海も陸も、多くの光を、エコにお届け

画像:1. 超大容量伝送を実現するマルチコア光ファイバケーブル技術 海も陸も、多くの光を、エコにお届け

IOWNがめざす伝送容量125倍に向けた光ファイバケーブル技術の進展として、直近の実用展開が期待される4コア光ファイバケーブルおよび周辺技術と10ch超光ファイバおよび増幅技術。ひとつの光ファイバで従来の4本分のデータ伝送が可能となり、布設と材料のコスト削減にもつながります。
 海底や陸上のネットワークにおいて大容量化の需要が飛躍的に増大し、さらに既存設備スペースにおける伝送容量の持続的な拡張が求められることを背景に、光ケーブルなどの既存技術や光設備を有効に活用し、海底ネットワークやデータセンタ間ネットワークの大容量化と設備構築コストの削減を実現。また伝送路の省電力化で環境負荷を低減するなど、IOWNがめざす大容量低遅延を支える技術として期待されています。

2. 遠隔地へ電力と通信を提供する光ファイバ給電技術
地下や遠隔地に通信提供 電気がなくても光通信

画像:2. 遠隔地へ電力と通信を提供する光ファイバ給電技術 地下や遠隔地に通信提供 電気がなくても光通信

電力の供給が困難な屋外・非電化エリア(遠隔地、地下等)へ光ファイバを用いた電力供給および通信を実現可能とする技術。展示では、MCF(Multi-Core Fiber)を用いることによる1心あたりの供給電力を増加させる光ファイバ給電技術と、端末の超低消費電力化・スリープ機能の実装により光給電による通信を実現する光給電IoTアクセス技術を組み合わせた動態展示が行われました。
 この技術によって、山奥や地下など電力の供給が困難な場所へ給電することが可能となり、それらの場所で稼働する自然災害監視や害獣駆除用のセンサなど通信端末を低電力で運用することができるようになります。

関連リリース
https://group.ntt/jp/newsrelease/2023/08/29/230829a.html

3. 電柱や管路に依存しない簡易布設光ファイバケーブル技術
道がつづけば、光もつづくよ、どこまでも

画像:3. 電柱や管路に依存しない簡易布設光ファイバケーブル技術 道がつづけば、光もつづくよ、どこまでも

条件不利地域への光ファイバ整備や5G・Beyond 5G(6G)基地局整備などにおける光ケーブル布設を、電柱や管路を用いることなく経済的かつ迅速に実現可能とする簡易布設光ケーブル技術。
 これまでの光ファイバは従来の電柱や管路を利用して住居やオフィスに接続されていましたが、これからのIoT化進展に向けて光ファイバ網のさらなる拡大が求められています。この技術は電柱や管路を通さずに、細径性と柔軟性に優れた光ケーブルを路面に掘った溝に埋め込むことができるため、道路の掘削や復旧工事を行う必要がなく、経済性と環境負荷低減を両立した光ファイバ整備を実現することができます。

4. マルチ無線プロアクティブ制御技術 Cradio®
多彩なフィールドで活躍する無線の実現

画像:4. マルチ無線プロアクティブ制御技術 Cradio® 多彩なフィールドで活躍する無線の実現

6G/IOWN時代の大容量・低遅延・高信頼な無線アクセスの実現のため、変動し続ける無線環境に追随する制御技術「Cradio®」。この技術の概要や、現場での導入・実証実験などビジネスでの価値創出の実例が紹介されました。
 例として、社会インフラとして重要な要素であり、今後もさらに需要が高まっていくと予想される無線通信ですが、高層ビルなどの大型建築物が新規に建築されることで周囲に電波遮蔽や干渉などが発生しやすくなるため、通信環境の確保や整備は必要不可欠となっています。マルチ無線プロアクティブ制御技術である「Cradio®」を活用することで、基地局をどこに配置すればもっとも快適な無線環境を作れるかを予測することが可能に。また基地局の最適配置によって消費電力の削減にも貢献することができます。

報道発表
効率的なIOWNオールフォトニクス・ネットワーク利用に向けた光と無線のリアルタイム連携制御を実証
https://group.ntt/jp/newsrelease/2024/05/15/240515a.html

5. 全方位カメラ搭載MMS

画像:5. 全方位カメラ搭載MMS

全国の社会インフラの老朽化が進み、台風や集中豪雨などの自然災害が多発していることに対し、NTTグループが持つICT技術を活用してこれらの社会課題の解決に取り組んでいます。
 全方位カメラを搭載したMMS(Mobile Mapping System)は、車両に搭載された全方位カメラによって地表面から天空までの撮影と、全方位の合成画像を作成することが可能に。走行しながら道路周辺の3次元位置情報を高精度で効率的に取得し電柱の傾斜やたわみを計測、保守が必要な電柱を特定することが可能となります。

6. 施工障害物近接検知のデモンストレーション

画像:6. 施工障害物近接検知のデモンストレーション

画像:6. 施工障害物近接検知のデモンストレーション

屋外の展示スペースでは、電柱の施工中、柱がケーブルや建物に近づき危険な状態になった際にアラーム発報によって作業員に危険を通知する施工障害物近接検知のデモンストレーションが行われました。
 レーザー反射の速度や強さから周囲の物体の形状や距離を計測できる装置を用い、所得した点群から既設柱とケーブルを障害物として抽出。抽出した対象物体の形状を3Dの立体モデルとして表示し、施工対象の柱が既設柱やケーブルが近づいた際にアラームが発報される様子が紹介されました。
 これにより一現場にひとりずつ配置されている専任の重機操作の合図者と、釣り上げた電柱の揺れを防ぐ電柱振止者の兼任が期待でき、施工の効率化と安全性向上をめざしています。

7. モデルネットワーク展示

画像:7. モデルネットワーク展示

筑波研究開発センタにて常設されている「NTTアクセスネットワークミュージアム」では アクセスネットワーク技術の全体像をNTTビル内からお客様宅までの実設備を用いたモデルでわかりやすく紹介。光ファイバの原理や製造方法なども併せて展示しています。

展示:NTT光ファイバ用端子函SFAOクロージャ(NTTアクセスネットワークミュージアム棟内) 展示:NTT光ファイバ用端子函SFAOクロージャ(NTTアクセスネットワークミュージアム棟内)

展示:光ファイバの原料 展示:光ファイバの原料

5) イベント風景

「つくばフォーラム2024」の展示会場となった筑波研究開発センタ、また基調講演の会場となったつくば国際会議場には、多くの参加者が集まりました。説明員による解説に熱心に聞き入る人も多く、最新の研究開発への強い期待をうかがい知ることができました。

展示:ロボット制御の仮想化で工場の自動化を促進 展示:ロボット制御の仮想化で工場の自動化を促進

展示:EVを活用した基地局電源救済システム 展示:EVを活用した基地局電源救済システム

展示:風車の無停止点検で発電量アップ 展示:風車の無停止点検で発電量アップ

展示:エリアに適した無線をシームレスに切り替えます 展示:エリアに適した無線をシームレスに切り替えます

屋外展示:通信電線線材協会 屋外展示:通信電線線材協会

6) バックナンバーご紹介

NTT主催 つくばフォーラム2023レポート
IOWN4.0の世界観と光電融合デバイス新会社NTTイノベーティブデバイス株式会社を発表他[更新] 5/24詳細版
https://group.ntt/jp/magazine/blog/tsukuba-forum/