バチカン図書館は、1448年にローマ教皇ニコラウス5世により設立された世界最古の図書館の一つで、人類の歴史的遺産ともいうべき図書が数多く残されています。
2014年3月20日、NTTデータはバチカン図書館とこれら所蔵図書のデジタルアーカイブ化に関する初期契約を締結し、人類の歴史的遺産を時の劣化から守り、後世に引き継ぐという重大な使命を担うプロジェクトをスタートさせました。初期契約では約3,000冊を対象としていますが、将来的には約8万冊すべてのデジタル化を目指しています。バチカン図書館には、2世紀から20世紀にかけて書き残された歴史的図書が数多く残されています。なかでも貴重なのは、マニュスクリプトと呼ばれる貴重な一点ものの手書き文献で、羊皮紙やパピルスに書かれたもの、金銀によって装飾が施されたものなどが厳重に保存管理されてきました。しかし、年月の経過とともに劣化が進み、このままではいずれ解読不可能になると危惧されていたことから、2012年秋、バチカン図書館からNTTデータに対してデジタルアーカイブ化への協力要請があったのです。
当時、NTTデータは、日本の国立国会図書館のコンテンツ約200万件を扱う大規模なデジタルアーカイブシステムの構築実績を持ち、その経験をもとに開発したデジタルアーカイブサービス「AMLAD(アムラッド)」の提供を行っていました。バチカン図書館は、その実績を高く評価し、歴史的遺産を後世に引き継ぐプロジェクトのパートナーとしてNTTデータに白羽の矢を立てたのでした。
プロジェクトムービー
しかし、文化・慣習の違いから交渉は難航します。バチカン市国は基本的に寄付によって成り立っているため、今回の事業に関しても、費用の支払いを伴う契約を締結するという概念がありませんでした。ボランティアベースでは継続的な取り組みが困難であることから、NTTデータは、デジタルアーカイブ化のための専用基金を設立して寄付を募り、そこから事業にかかる費用を充当するというビジネスモデルをバチカン図書館に提案。この内容が受け入れられ、2014年3月、正式な契約調印が行われ、プロジェクトはようやく開発へとステージを移すことになりました。
「貴重な文献やコレクションをデジタルアーカイブ化により長期保存するとともに、研究資材として広く世界に公開したい」
バチカン図書館の要請に応えるために、NTTデータは、現在、初期契約で締結した3,000冊についてアーカイブ化を開始。プロジェクトメンバーは、館内の貴重な資料に直接触れることができる唯一の日本人という特別な環境下で、「AMLAD」をベースに、国際標準に対応した信頼性の高い高品質なシステム構築に取り組んでいます。
日本語書物の活版印刷の起源は、安土桃山時代に九州からローマへ渡った天正遣欧使節団がグーテンベルクの印刷機を持ち帰ったことから始まったとされています。400年の時を経て、今度はNTTデータがデジタルアーカイブ技術を用いてバチカンに貢献することになりました。時空を超えた壮大な歴史物語が、いままた動き出しています。
バチカン図書館のデジタルアーカイブ化にNTTデータが取り組んでいるというニュースは世界を駆け巡り、北米、南米、ヨーロッパなど世界各地の図書館、公文書館、美術館などから新たな引き合いも生まれています。