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2020年11月13日

日本電信電話株式会社
名古屋工業大学
横浜国立大学
至学館大学

温熱生理学に基づいた暑熱による体調不良リスクの推定・アラート手法を開発
~暑熱環境下で働く作業者の安全安心をめざして~

日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:澤田 純、以下「NTT」)は身体負荷推定ロジック※1と国立大学法人名古屋工業大学(所在地:愛知県名古屋市、学長:木下 隆利、以下「名工大」)との共同研究により新たに創出した体内温度変動推定ロジックを用いて体調不良リスクを推定し、国立大学法人横浜国立大学(所在地:神奈川県横浜市、学長:長谷部 勇一、以下「横国大」)、至学館大学(所在地:愛知県大府市、学長:谷岡 郁子、以下「至学館大」)、名工大との共同実験により新たに創出したアラート発出基準を用いて工事作業者自身や作業監督者へアラートを通知する独自手法を開発しました。

本手法の有効性を検証するため、今夏、東日本電信電話株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:井上 福造、以下「NTT東日本」)の協力を得て、ウェアラブル生体・環境センサ※2を着用した工事作業者の体調管理に関する実証実験※3を行いました。本実験で得られた知見をもとに、暑さ対策等が必要とされる暑熱環境下で作業する人々の体調管理や作業現場の安全安心に役立てていくことをめざしています。

1.背景と目的

近年、気温変動の影響等もあり熱中症による救急搬送人員数や死亡者数が増加しており、社会全体で大きな課題になっています。総務省消防庁の調査では、2020年6月1日から10月4日にかけ熱中症により救急搬送された人員数は64,770人、厚生労働省の公表では、2019年における職場での熱中症による死傷者(死亡・休業4日以上)は829人、うち死亡者は25人となっており、厚生労働省等により、職場における熱中症予防対策の指針やマニュアルが公開されています※4。このような社会課題の解決に向けて、NTTではウェアラブル生体・環境センサを利用した「個人別身体負荷の把握による適切な稼働マネジメント」と「暑熱ストレスの把握による体調不良リスクの回避」をめざして温熱生理学的手法の研究に取り組んできました。その取り組みの一環として、NTT東日本の協力を得て、暑熱環境下の工事作業において温熱生理学的手法の適用可能性について検証する実験を行いました。

2.体調不良リスクの推定・アラート手法

本取組みは、体温調節の統合的理解と温度の生命現象への影響を明らかにすることをめざす研究分野である温熱生理学の科学的理論に基づいています。

NTTと名工大との共同研究では、人の体温調節機能、服装、活動といった要素を考慮した電磁界解析技術と熱解析技術を融合した名工大独自のプログラムを応用し、ウェアラブル生体・環境センサで取得される心拍数、衣服内温度・湿度を用いて体内温度変動を推定するロジック※5を開発しました。NTTと横国大、至学館大、名工大との共同実験では、至学館大の人工気象室を用いた臨床実験※6により体内温度変動推定ロジックの適用性を確認するとともに、横国大の温熱・運動生理学的理論に基づいて体内温度変動等を用いたアラート発出基準を作成しました。体調不良リスクの推定・アラート手法は、これらのロジックおよびアラート発出基準から成り立っています。

図1.ウェアラブル生体・環境センサ

図1.ウェアラブル生体・環境センサ

図2.実証実験で用いたデモシステムの構成

図2.実証実験で用いたデモシステムの構成

3.実証実験

体調不良リスクの推定・アラート手法の有効性を検証するため、今夏(2020年8月~9月)に東京、神奈川、北海道エリアで、49名(延べ834人日)の工事作業者が参加した実証実験を実施しました。本実験では、体内温度変動推定ロジックと身体負荷推定ロジックをアプリケーションとして実装し、ウェアラブル生体・環境センサを着用した工事作業者の体調不良リスクをクラウド経由で遠隔モニタリングするとともに、アラート発出基準による作業者本人へ通知するデモシステムを構築しました。(※本デモシステムは医療機器ではありません。)

ウェアラブル生体・環境センサで取得した心拍数、衣服内温度・湿度に加えて、工事作業者から温冷感や主観的運動強度(RPE)等のアンケートを取得し、実験結果から、推定した体内温度変動と温冷感との関連、推定した身体負荷と主観的運動強度(RPE)との関連を確認しました。これらの確認結果は、推定ロジックが工事作業者の主観を可視化できる可能性を示しています。また、アラート発出基準に基づいて体調不良リスクを遠隔モニタリングするとともに工事作業者自身へ通知し、熱中症等の体調不良は発生しませんでした。

図3.工事作業者への適用イメージ

図3.工事作業者への適用イメージ

4.今後の展開

作業者が安心して働くことができる現場の実現をめざして、実証実験で得られた知見をもとに開発した体調不良リスクの推定・アラート手法の改善を進めていきます。また、本記載内容は、NTT R&Dフォーラム2020(2020年11月17日~11月20日)に出展いたします。

https://www.rd.ntt/forum/ 当該ページを別ウィンドウで開きます

用語解説

※12020年3月13日NTT持株会社ニュースリリース「科学的なトレーニング支援技術を開発し、ラグビー選手を対象に有効性を実証」
https://group.ntt/jp/newsrelease/2020/03/13/200313a.html

※2NTTデバイスイノベーションセンタで研究開発したウェアラブル生体・環境センサ技術
https://www.ntt.co.jp/news2019/1911/191108a.html 当該ページを別ウィンドウで開きます)をベースにしてNTTテクノクロス株式会社が商用化した小型センサTX02、東レ株式会社のhitoe®作業者みまもり用シャツ・hitoe®使用ベルト、もしくは株式会社ゴールドウインのC3fit IN-pulseから構成されており、心電位、衣服内の温度や湿度、上半身の加速度や角速度のデータを計測します。また、計測したデータを元に心拍数、RRI、歩数、上半身の傾き等のさまざまな特徴量を解析します。本センサは、医療機器ではありません。 hitoe®は東レ株式会社とNTTが開発した、体から発している微弱な電気信号である生体信号を、無意識に近い状態で収集するための機能素材です。機能素材hitoe®は両社の商標登録です。
https://www.ntt-tx.co.jp/whatsnew/2020/200730.html 当該ページを別ウィンドウで開きます

※3日本生活支援工学会倫理審査委員会:倫審第286号

※4厚生労働省ホームページ「職場における熱中症予防」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164083.html 当該ページを別ウィンドウで開きます

※5神谷 俊樹、平田 晃正、橋本 優生、樋口 雄一、都甲 浩芳、「心拍数と周辺環境情報を用いた深部体温推定モデルの検討」、第58回日本生気象学会、2019年10月26日(第58回日本生気象学会大会若手・学生コンテスト最優秀発表賞受賞)

※6至学館大学研究倫理審査委員会:受付番号124

本件に関する報道機関からのお問い合わせ先

■日本電信電話株式会社

広報室
ntt-cnr-ml@hco.ntt.co.jp

■名古屋工業大学

先端医用物理・情報工学研究センター
センター長 教授 平田 晃正
ahirata@nitech.ac.jp
TEL:052-735-7916

■横浜国立大学

教育学部
教授 田中 英登
TEL:045-339-3277

■至学館大学

健康科学部健康スポーツ科学科
教授 宮澤 太機
miyazawa@sgk.ac.jp
TEL:0562-46-1291

ニュースリリースに記載している情報は、発表日時点のものです。
現時点では、発表日時点での情報と異なる場合がありますので、あらかじめご了承いただくとともに、ご注意をお願いいたします。