2020年11月13日
日本電信電話株式会社
日本電信電話株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:澤田 純、以下NTT)は、IOWN構想(アイオン:Innovative Optical & Wireless Network)※1における「デジタルツインコンピューティング(以下、DTC)」※2について、新たな未来社会を切り拓くための4つの挑戦(以下、グランドチャレンジ)を研究開発目標として策定しました。具体的には、心や感情等の感性によるコミュニケーション技術、人と共に成長・共存する分身技術(Another Me)、未来社会の姿を探索する技術、地球と社会・経済システムの包摂的な平衡解を導出する技術の実現をめざします。
個人の多様性や機会・可能性の拡大、社会構造の複雑化、地球規模の不確実性が増す未来において、個人の生きがいや心の豊かさを増進しながら、地球・社会・個人の間で調和的な関係が築かれる社会(図1)を実現するために、4つのグランドチャレンジに取り組みます。
言語や文化の違いだけでなく、経験や感性などの個々人の特性の違いを超えて、心の中の捉え方や感じ方を直接的に理解し合える新たなコミュニケーションを実現します。
配偶者でも子供でも親友でもない、新たなかけがえのないパートナーとして、人生における機会を10倍に拡張し、自らと共存し共に成長する分身「Another Me」を実現します。
未来の社会の姿を探索し、そこから個人が望む行動を選択できる「未来社会探索エンジン」を実現します。
地球環境が備える自律性とその一部としての社会・経済システムの自律性を調和させた包摂的な平衡性と、そこへ導く社会システム変容の複数の選択肢を示します。
図1.4つのグランドチャレンジがめざす未来社会
概要
表出された言葉や表情などの伝送によるコミュニケーションから、言語・文化・経験・価値観・知覚・感性の違いを超えて、相手の心の中の物事の捉え方や感じ方をわが身においてリアルに、かつ直接的に理解し合える新たなコミュニケーションのステージを実現します。これにより、コミュニケーションの齟齬を軽減・解消して心理的安全性を高め、また、分断された世界の間の相互理解を促進して、多様な特性を持つ人々が共に活動し刺激・成長し合う包摂的な社会の実現を目指します。
チャレンジ
図2.感性コミュニケーション
概要
育児や介護と仕事の両立が困難となる状況や、関心や意欲があっても社会参加できないなど、人生における様々な機会の損失が社会課題となっています。そこで、2035年までに、自らと共存し共に成長する分身「Another Me」を実現します。これにより、仕事と家庭の両立や、多くのコミュニティに同時参加するなど、人生における様々な機会を捉えられることによる、心の豊かさや健康、生きがいを向上させると同時に、多くの成長機会で、Another Meの経験も自身のものとして成長し、自己実現を加速することを目指します。尚、現在、京都大学 出口康夫 教授、大西琢朗 特定准教授との共同研究テーマとして、Another Meが自分の分身として活躍できる存在となるための要素の明確化に取り組んでいます。
チャレンジ
図3.Another Me
概要
グローバル化等による社会構造の複雑化、自然災害等の不確実な事象の増加により、個人の行動・協力が社会や自然環境に与える影響、また、それによる個人への還元が見えにくくなっています。そこで、個人の行動、集団の活動、生活、経済活動、自然環境等、様々な要素を統合した未来の社会の姿を探索し、そこから個人が望む行動を選択できる「未来社会探索エンジン」を、IOWN/フォトニックディスアグリゲーテッドコンピューティング※3等の大規模計算機を活用しながら実現します。
例1)外出自粛による感染者の削減、経済の停滞、CO2削減、物流増加
例2)在宅勤務による郊外移住の増加、地方都市の経済活性化、中心都市構造の再構築、子育て環境変化
例3)電気自動車の利用によるCO2削減、ガソリンスタンドの減少、電気消費の増加
これにより、個人の行動・協力による社会や自然環境に与える影響が見える化されることに加え、個人が望む社会を実現するための行動・協力を主体的に考えながら探し出すことにより、多くの個人が望む社会の実現に向けた行動・協力を自発的に促すことが可能となります。
チャレンジ
図4.未来社会探索エンジン
概要
地球環境が備える自律性に対し、その一部としての社会・経済システムの自律性が適切に調和しないことにより、人類にとって不都合な環境変化が発生しています。例えば、地球における気象を含む水循環はそれ自体が自律性を保っていますが、社会・経済システムの活動の結果として異常気象や水不足、環境汚染などが生じています。地球環境と社会・経済システムの関係は包摂的な自律平衡性を保つことが必要です。そこで、その新たな包摂的な自律平衡性と、そこへ導く社会・経済システム変容の複数の選択肢を示します。これにより、例えば、気象を含む水循環と、社会・経済システムにおける水・一次エネルギーの生産・利用の連鎖関係を把握・予測し、社会・経済システムが包摂的な自律平衡性を保ちながらそれらを利用する仕組みへの変容について複数の選択肢を示すことで、水ストレスの増大、環境汚染等を防ぎながら利用し続けることが可能となります。
チャレンジ
図5.地球と社会の自律平衡解の導出
4つのグランドチャレンジの達成にむけた研究開発ロードマップを図6に示します。
図6.ロードマップ
今回策定した4つのグランドチャレンジの実現に向けて、3に示す研究開発ロードマップに従った研究開発をすすめます。これらのグランドチャレンジの実現に向けては、大規模な計算資源の実現と活用が必要不可欠となります。そこで、4つのグランドチャレンジで必要となる大規模計算機環境の実現のための技術開発を推進します。さらに、IOWN Global Forumにおけるパートナー企業との連携などを通して、グランドチャレンジの実現にむけた技術開発、及び社会実装をすすめる予定です。
尚、2020年11月17日~20日に開かれるNTT R&Dフォーラム2020 Connect(別紙)と、その中のライブ配信番組「デジタルツインの先へ ~Digital Twin Computing~」(2020年11月18日15時~16時予定)で取り組みの概要をご紹介する予定です。
※1https://www.rd.ntt/_assets/pdf/techreport/NTT_TRFSW_2020_JP_W.pdf
※2https://www.rd.ntt/dtc/DTC_Whitepaper_jp_2_0_0.pdf
※3https://group.ntt/jp/newsrelease/2020/04/16/200416a.html
※「Another Me」はNTTの商標です。
NTT R&Dフォーラム2020 Connect
2020年11月17日(火)~20日(金)の4日間、「Into the IOWN --Change the Future 」をコンセプトに、「NTT R&Dフォーラム 2020 Connect」を開催します。なお、今年のフォーラムは、新型コロナウイルス感染症に関する昨今の状況を鑑み、オンライン開催とさせていただきます。
本フォーラムでは、昨年5月に提唱した「IOWN (Innovative Optical and Wireless Network) 」構想を実現するための主要技術や、ポストコロナ時代の「リモートワールド」をはじめとするユースケース、さらに環境負荷ゼロの実現に向けて設立した「宇宙環境エネルギー研究所」のビジョンなど、最新の研究成果や取り組みについて分かりやすくご紹介してまいります。
本件に関する報道機関からのお問い合わせ先
■日本電信電話株式会社
研究企画部門
iown-pr@hco.ntt.co.jp
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