2022年2月22日
日本電信電話株式会社
日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:澤田 純、以下「NTT」)は、超高精細度テレビジョン(UHDTV:Ultra-high Definition Television)規格における最高の解像度とフレーム周波数を有する8K120p映像(※1)を、光パスを通してSMPTE ST 2110規格(※2)で送受信することが可能な非圧縮映像伝送技術を世界で初めて開発しました。本技術では、SDI信号(※3)を光伝送装置に直収し、大容量の光パスに非圧縮のSMPTE ST 2110ストリームとしてダイレクトに送出することにより、映像伝送の長距離化と低遅延化を実現しました。さらに、映像データを複数のストリームに分割して伝送する方式であるSMPTE RP 2110-23を利用して、8K120pの映像データをSDI信号からSMPTE ST 2110ストリームへダイレクトにマッピングすることによって、送信側での映像入力から受信側での映像出力までの遅延を1ms以内に抑えています。本技術が可能にする長距離かつ超低遅延の映像伝送によって、距離を意識させない最高品質の映像コミュニケーションを社会に提供することをめざします。
2022年2月22日にNTTコミュニケーションズ株式会社(以下「NTT Com」)が開設した共創ワークプレイスである「OPEN HUB Park」(*)において、IOWNオールフォトニクス・ネットワーク(APN)を用いた伝送実験を行います。
(*)「OPEN HUB Park」の詳細については、以下の報道発表をご覧ください。
(https://www.ntt.com/about-us/press-releases/news/article/2022/0222.html)
参考:Webサイト「OPEN HUB for Smart World」 (https://openhub.ntt.com/)
放送、医療、監視等の様々な用途で、4K・8Kといった大容量映像の伝送需要が拡大しています。放送業界では、新しいライブ中継番組制作フローとして、中継現場から放送局に番組素材をネットワーク伝送し、放送局で制作を行うリモートプロダクションが注目されています(図1)。映像伝送においては、非圧縮伝送が画質と遅延の面で理想的ですが、UHDTV規格における最高の解像度とフレーム周波数を有する8K120p映像信号のデータレートは80Gbps超であり、高信頼化のために映像ストリームを冗長伝送する場合には160Gbps超のデータレートが発生するため、既存のIP網サービスを利用した長距離の伝送は困難でした。
NTTでは、世界初となる非圧縮8K120pに対応したSMPTE ST 2110による超低遅延映像伝送技術を開発しました。SDI信号を光伝送装置に直収し、大容量の光パスに非圧縮のSMPTE ST 2110ストリームとしてダイレクトに送出することにより、映像伝送の長距離化と低遅延化を実現しました。また、本技術では、SMPTE RP 2110-23を利用したSDIからSMPTE ST 2110ストリームへのダイレクトな映像マッピングによって待ち合わせ遅延を回避しました。その結果、ファイバ伝搬遅延が無視できる程に小さい場合、送信側での映像入力から受信側での映像出力までの遅延を1ms以内に抑えています。
従来、長距離通信で使用される光伝送装置は、ハードウェア機能/ソフトウェア機能を含めたあらゆる機能が単独製造者によって一体型で提供されていたため、サービス事業者が映像伝送等の付加機能を柔軟に追加することは困難でした。これに対し、昨今、光伝送装置の各種機能を分離し、標準化されたインタフェースで制御することで、柔軟な構成変更、付加機能の実現、コストの低減等が可能になるディスアグリゲーション構成が注目されています。今回、ディスアグリゲーション構成の光伝送装置に対して、SDI信号をSMPTE ST 2110ストリームに変換するプラグインユニット(VideoPIU)をハードウェア実装し、さらにVideoPIUを制御する機能をソフトウェア実装しました(図2右)。VideoPIUは1枚当たり8K60p映像の処理が可能で、2枚を連携して動作させることで8K120p伝送を実現しました(図2左)。8K120p映像を、SMPTE RP 2110-23に従って時間方向に2分割、空間方向に4分割、合計8本のストリームに分割し、8並列の同期伝送処理によって、160Gbpsを超える非圧縮映像データを伝送します。今回の実装では、表1に示した通り、TIP(※4)でハードウェアデザインがオープン化された光伝送装置であるGalileo 1と、Network OSにOcNOS®(※5)を用い、VideoPIUの8K120p超低遅延伝送を確認しました。
NTTでは、近未来のスマートな世界を支えるコミュニケーション基盤としてIOWN構想を発表し、その具現化をめざして研究開発を進めています。IOWNの3つの主要技術分野のひとつとしてAPNを掲げており、光ベースの技術を用いることで、従来とは別格の通信パフォーマンスを実現します。本技術とIOWN APNにより、エンド・ツー・エンドの光パスを通して大容量映像を超低遅延で送受信することが可能になり、距離を意識させない映像コミュニケーションが実現できます。これにより、リモートプロダクションや遠隔医療、遠隔監視といった幅広いユースケースへの適用が期待できます。
2022年2月22日にNTT Comが開設した「OPEN HUB Park」において、IOWN APNを用いた非圧縮8K120p映像の伝送実験を行います。さらに、様々な領域への適用をめざして、技術開発とフィールド実証を推進していきます。
図1:現状のワークフローとリモートプロダクションの比較
図2: ディスアグリゲーション構成による非圧縮映像伝送
表1: 非圧縮8K120p映像伝送の実装
入出力インタフェース | 12G-SDI×8 |
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画素数 | 7680(水平)×4320(垂直) |
フレーム周波数 | 119.88Hz |
カラーサンプリング | 4:2:2 | ビット深度 | 10bits |
光伝送装置 | Wistron社製Galileo 1 |
Network OS | IP Infusion社製OcNOS |
(※1)8K120p映像:
横方向7,680画素、縦方向4,320画素、フレーム周波数120Hzからなる映像です。現在の4K・8K映像の標準的なフレーム周波数は60Hzですが、UHDTVの規格で120Hzが規定されています。また映像を送るときに1枚のフレームを奇数偶数ラインに分けることなく全ての画素を送る方式をプログレッシブと呼びますが、8Kかつ120Hzでプログレッシブの映像フォーマットを「8K120p」と記述します。
(※2)SMPTE ST 2110規格:
SMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers)が定める放送番組素材伝送用の映像伝送規格です。映像、音声、補助データを別々のストリームで伝送するという特徴があります。
(※3)SDI(Serial Digital Interface)信号:
放送設備で一般的に使われている同軸ケーブルを利用した映像伝送方式です。SMPTEにより、4K映像を1本の同軸ケーブルで伝送する12G-SDIまでが標準化されていますが、伝送距離は100m程度が限界のため、SMPTE ST 2110への置き換えが始まっています。
(※4)TIP(Telecom Infra Project):
オープンでかつ機能ごとに分割された標準ベースのテクノロジー・ソリューションの開発と導入を促進するグローバル・コミュニティです。テレコム分野のイノベーションを加速することをめざし、2016年に発足した非営利組織です。
(※5)OcNOS:
OcNOSは、IP Infusionが開発・提供する、シングルソースで通信事業者からデータセンタまで幅広いユースケースに対応が可能なホワイトボックス向けのネットワークOSです。TIP の各仕様に準拠したディスアグリゲーションと オープン化を求める世界中のキャリアによる採用が進んでいます。なお、NTTとIP Infusionの親会社である株式会社Accessとは、2021年7月に提携関係を結んでいます。
https://www.ipinfusion.com/products/ocnos/
https://group.ntt/jp/newsrelease/2021/07/27/210727a.html
本件に関する報道機関からのお問い合わせ先
日本電信電話株式会社
先端技術総合研究所 広報担当
science_coretech-pr-ml@hco.ntt.co.jp
TEL 046-240-5157
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