2023年2月 9日
日本電信電話株式会社
リージョナルフィッシュ株式会社
日本電信電話株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:島田 明、以下「NTT」)とリージョナルフィッシュ株式会社(本社:京都府京都市、代表取締役社長:梅川 忠典、以下「リージョナルフィッシュ」)は、将来の食料不足、地球環境問題の解決をめざすグリーン&フード事業に関する合弁会社の設立に向けたMOU(基本合意書)を締結しました。
世界では、気候変動問題をはじめとした環境問題が年々深刻さを増しており、世界規模での自然災害の巨大化等、経済社会へ与える影響が大きくなっています。また、将来の人口爆発による水・食料・資源の争奪戦や地政学リスク、新型コロナウイルス感染拡大によるパンデミック等、様々な不確定要因から、食の安全保障(フードセキュリティ)確保の必要性が高まっています。例えば、2030年頃にはタンパク質の需要量が供給量を上回る、いわゆるタンパク質クライシス※1が起こるといわれています。
さらには、日本は農林水産業における就業人口の長期にわたる減少や高齢化が加速し、生産力や食料自給率の低下等様々な課題を抱えています。特に水産業はその傾向が顕著に表れており、約30年で就労者、水産生産量ともに60%程度減少しています。かつて生産量で世界1位であった日本の地位は現在8位まで落ち込んでいます※2。これまで我々の食卓に並んでいたような水産物を、これからも安定的に供給することができなくなりつつあります。
そのため、環境面に配慮し、自然と共生しながら、産業を維持・発展させるような、循環型で持続的な取り組みが、より一層求められます。
このような背景のもと、NTTとリージョナルフィッシュは、最先端の品種改良技術※3や養殖技術、IoTやAI等の情報通信技術、環境負荷低減技術等を活用したサステナブルな陸上養殖システムにより、高速に、かつ高機能な魚介類を生産することを通じて、地球環境負荷を低減しながら、日本の水産業の再興、世界の食糧不足等の社会的課題の解決をめざす二酸化炭素変換技術の実証実験を実施してきました※4。
NTTは藻類への優秀品種選抜技術、培養技術、品種改良技術やAI、IoT等の情報通信技術、リージョナルフィッシュは魚介類への品種改良技術、陸上養殖ノウハウを有しており、各社の強みをいかしたグリーン&フードの事業化をめざしています。NTTとリージョナルフィッシュは、事業化のうち、魚介類の生産・販売に関する合弁会社の設立に向けて、基本合意書を締結しました。
グリーン&フード事業は、「A.藻類の生産・販売」、「B.魚介類の生産・販売」、「C.サステナブル陸上養殖システムの開発・提供」をコア事業とする予定(図1)で、合弁会社にて行う事業領域は「B.魚介類の生産・販売」を行います。具体的には、各自治体等と連携し、本事業での魚介類の生産や加工、販売を地元企業と行います。地域の事業機会・新たな雇用創出、また、最先端の養殖技術や環境技術等に関する教育の場としての機能も構築し、地域社会への貢献もめざします。
図1.グリーン&フード事業構想
藻類は光合成によってCO2(二酸化炭素)を固定※5しながら成長します。NTTの藻類への品種改良技術、藻類の生産に最適な温湿度、栄養分および光量調整等による大量培養技術、優秀品種の藻類を選抜する品種改良技術等を活用することで、光合成を活性化させて成長速度を高めるとともに、通常よりも多くのCO2を体内に固定させることができます。
藻類はDHA/EPAを含むこともあり、魚介類の餌として利用されるとともに、高栄養価であることから、農業用の肥料としても利用します。まずは、昨今の原材料の高騰による、餌や肥料コスト高騰に課題を抱える、養殖事業者や農業関係者への提供を想定しています。
リージョナルフィッシュの魚介類への品種改良技術を活用することで成長速度を高めるとともに、Aで生産した多くのCO2を含む藻類を餌として提供することで、より多くのCO2を魚介類の体内に固定させることができます。加えて、NTTのIoTやAI等を駆使した陸上養殖のスマート化により、高速かつ効率的に魚介類を生産します。
また、品種改良技術の活用や陸上養殖施設で飼育することにより、自然災害の影響や、アニサキス等の寄生虫や感染症のリスクをおさえることができるため、安全安心で高付加価値の魚介類の生産につながります。
さらに、魚介類の排泄物を含む飼育水を藻類の栄養分として循環させることで、飼育水の再利用を行います(アクアポニクス※6)。
本事業で生産した魚介類は、昨今の気候変動や地政学リスク、パンデミック等によりフードセキュリティ確保の関心が高い流通事業者や卸売・加工事業者等への提供を想定しています。
A、Bを生産するための陸上養殖システムを開発します。システムは魚介類を生産するプラントと、その餌となる藻類の生産プラントや、魚介類の排泄物等を浄化する水質浄化プラントから構成されます。まずは本事業でのシステム開発、利用を図り、将来的には、本システムの外部への提供をめざします(NTTグループ会社等を通じて提供することを想定しています)。
NTTとリージョナルフィッシュによる合弁会社の設立は2023年中頃をめざします。その前段階として、NTTは事前の検討や調査等を実施するための企画会社を近日設立します。
今後は、グリーン&フード事業をより一層拡大・展開するため、関連パートナーとの戦略検討等を継続していきます。
※1人口の増加と新興国の経済発展による生活レベルの向上により、人類が必要とするタンパク質の需要と供給のバランスが崩れることです。
※2出所:水産庁「平成29年度 水産白書」
※3ゲノム編集技術をはじめとした育種技術。ゲノム編集技術とは、生物が持つ特定の塩基配列を意図的に切断し、切断されたDNAが修復される過程で生じる塩基配列の変化によって、本来担う機能を改変させる技術です。外来からの遺伝子導入によって機能改変を行う遺伝子組換え技術と異なり、自身が持つ塩基配列のみを変化させるため、従来の品種改良と同様とみなされています。
※42021年11月12日ニュースリリース「海洋の二酸化炭素減少をめざしNTTとリージョナルフィッシュが実証開始」
https://group.ntt/jp/newsrelease/2021/11/12/211112a.html
※5二酸化炭素等無機的な炭素を、糖等の有機的な炭素化合物に変換して体内に取り込む過程のことです。
※6水産養殖と水耕栽培を組み合わせた循環型生産システム。魚等の排泄物は微生物に分解されて植物の肥料となり、浄化された水は再び水槽に戻されます。
本件に関する報道機関からのお問い合わせ先
日本電信電話株式会社
研究企画部門
プロデュース担当
nttrd-pr@ml.ntt.com
リージョナルフィッシュ株式会社
経営企画部 広報担当
info@regional.fish
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